「おじさんはパーカーやハーフパンツを着るな」「おぢアタックはキモい」…令和に「おじさん差別」だけがまかり通っている「予想外の理由」

過熱した「おじさんハーフパンツ論争」。

なぜハラスメントなどに対する倫理観が格段にアップデートした令和の今の時代に、ジェンダーハラスメントやエイジハラスメントといった問題をはらんだ「おじさんいじり」が、公然と行われるのでしょうか?

いえ、もはや「おじさんいじり」を通り越して、「おじさんいじめ」や「おじさん差別」と言っても過言ではないでしょう。

今回は「おじさん差別」だけが横行している原因を、恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラーとして活動し、LINE公式のチャットサービスにて計1万件以上の恋愛・婚活相談を受けてきた筆者が分析させていただきます。

おじさんのパーカーやハーフパンツはダメなのか

まず近年起こった「おじさん差別」の事例を振り返っておきましょう。

「おじさんハーフパンツ論争」は東京都庁が今年4月から開始した「東京クールビズ」で、ポロシャツやTシャツなどに加えてハーフパンツでの勤務も解禁したことが発端。

この話題をネット報道番組『ABEMA的ニュースショー』が報じた際、街頭インタビューを受けた若い女性が中年男性のハーフパンツ着用に嫌悪感を示していました。「おじさんのハーフパンツは不快」、「おじさんのすね毛、べつに見たくない」、「ハーフパンツを穿かないでください。キモいからです」など、過激な発言が飛び出していたことで、是か非かという論争に発展したのです。

おじさんのパーカーやハーフパンツはダメなのか, 中年男性は“恋愛の自由”も奪われている?, ハラスメントの問題意識は高まっているのに, 「おじさん差別」がスルーされるワケ, 真の男女平等社会を目指すのであれば……?

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この論争に著名人たちも参戦しており、特にひろゆきこと実業家の西村博之氏が《「おばさんのミニスカートがキモイ」というのも放送出来るなら平等だよね。》と、SNS投稿したことが注目されていました。

また約1年半前に勃発した「おじさんパーカー論争」も記憶に新しいところでしょう。

2024年12月、コラムニスト・脚本家の妹尾ユウカ氏が、YouTubeチャンネル「新R25チャンネル」に出演。《【老害おじさん化回避】若者と絡むな、パーカー着るな。“いいおじさん”のすべて【イケオジへの道】》というタイトルの動画にて、妹尾氏が「40(歳)近くになってパーカーとか着てるおじさんってけっこうおかしいと思うんですよ」と発言したのです。

この発言に端を発し、中年男性がパーカーを着用することの是非が激しく議論されたのでした。ちなみにこのときもひろゆき氏やホリエモンこと実業家の堀江貴文氏が参戦。二人は普段からパーカーを着用しているため、妹尾氏の「パーカー着るな」発言に異を唱えていました。

中年男性は“恋愛の自由”も奪われている?

そして近年、恋愛界隈で頻繁に話題になるのが「おぢアタック」。

35歳以上の男性が8歳以上離れた年下女性に恋愛感情を抱き、口説き落とせるかもしれない、付き合えるかもしれないと考えてアプローチすることを指す造語で、迷惑行為という意味合いで使われることが多い言葉です。

職場で自分より年齢も立場も上の中年男性から口説かれて精神的に苦痛だったという女性や、客の中年男性から強引にアプローチされて対応に困ったという飲食店などの女性従業員が声をあげていたことから、「おぢアタック」という言葉が生まれたのでしょう。

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たしかに男性からセクハラのような行為をされたのであれば、女性たちの悲痛な訴えにしっかり耳を傾けなければいけません。ですが、中年男性の年下女性への恋愛的アプローチを十把一絡げにして、ただ食事に誘われただけだったり、ただ好意を言葉にされただけだったり、その程度で迷惑行為認定するのであれば、逆にハラスメントの可能性が浮上してきます。

常識の範囲内での恋愛的アプローチをしただけなのに、“中年男性”という属性だけで迷惑行為認定するとしたら、性別を理由とした嫌がらせや差別を意味するジェンダーハラスメント、年齢や世代を理由とした嫌がらせや差別を意味するエイジハラスメントになってしまうかもしれません。

――性別にもとづく差別・偏見をセクシズム、年齢にもとづく差別・偏見をエイジズムといいますが、「おじさんハーフパンツ論争」「おじさんパーカー論争」「おぢアタック」は、それらの差別問題の火種をはらんでいることはご理解いただけるでしょう。

ハラスメントの問題意識は高まっているのに

ここ10年ほど、特に元号が令和に変わった頃から、世の中の倫理観のアップデートはすさまじいスピード感で進んできました。

例えばハラスメントの代表格とも言えるセクシュアルハラスメントは、年々“アウト”のジャッジが厳しくなっている印象がありますし、パワーハラスメントやモラルハラスメントなどが糾弾されるケースが格段に増え、問題意識は非常に高まっているでしょう。

他にもカスタマーハラスメント、アルコールハラスメント、マタニティハラスメント、スメルハラスメントなどの認知度も高まっており、巷で問題提起されることが多々あります。

さらには、環境・待遇がいいホワイト企業の上司や先輩によって成長の機会が奪われるというホワイトハラスメント、実際はハラスメントとは言えない正当な言動に対して過剰に「○○ハラされた」と主張するハラスメントハラスメントなど、場合によってはいきすぎた訴えのように思われることでも、すぐにハラスメント扱いされる世の中です。

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そんなあらゆるハラスメントに超過敏な“ハラスメント社会”となった現代でも、「おじさんハーフパンツ論争」「おじさんパーカー論争」「おぢアタック」といった「おじさんいじめ」が公然と行われているという矛盾。

ひろゆき氏のSNS投稿にあった「おばさんのミニスカートがキモイ」は、もしメディアが発信したり著名人が発言したりしていれば、あっという間にバッシングの嵐に見舞われ、謝罪に追い込まれる可能性が高いでしょう。それはエイジハラスメントやルッキズムと認識されるからに違いありません。

けれど「おじさんのハーフパンツがキモイ」は、ジェンダーハラスメントやエイジハラスメントの問題をはらんでいるのに、その発信者や発言者が謝罪に追い込まれるという事態にまで発展することはないのです。

「おじさん差別」がスルーされるワケ

なぜ倫理観がアップデートされ続け成熟した社会になったかのように見える現代でも、「おじさん差別」だけがまだスルーされて不問となっているでしょうか?

そこには、“まだ男女平等の社会が実現できていないこと”が根っこにある気がしてなりません。

要するに、もうずいぶん長い年月、男女平等社会を目指していこうと叫ばれているにもかかわらず、社会的にはまだ中年男性に権力が集中しているという現実があり、“中年男性=社会的強者”だから――という理由です。

「おじさんハーフパンツ論争」「おじさんパーカー論争」「おぢアタック」に限らず、世の中年男性はなにかと“情けない存在”、“ダサい存在”、“キモい存在”、“ウザい存在”のようなレッテルを貼られがち。外(社会)では煙たがられ、中(家庭)でも邪魔者扱いされるなんて話は、耳にたこができるほどありふれています。

そういった負のレッテルを貼られ続け、自己肯定感が下がってしまっている中年男性がいるとしたら、「あなたたちは社会的強者ですよ」と言われても腹落ちしないかもしれません。

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ですが、さまざまな分野の男女比率に、それを証明するデータが出揃っているのです。

「内閣府男女共同参画局」の2025年の資料によると、全上場企業の役員に占める女性の割合は14.0%にとどまっています。今年2月の衆議院選挙で女性候補が68人当選しましたが、それは全当選者に占める割合の14.6%にすぎず、国際的に見ても非常に低水準となっているのです。

また、オリコンが今年2月に発表した「好きな司会者ランキング」では、女性でトップ10にランクインしたのは、8位の日本テレビアナウンサー・水卜麻美さんのみ。1位は麒麟・川島明さん、2位はTBSアナウンサー・安住紳一郎さん、3位はサンドウィッチマンとなっており、テレビにおける権力も中年男性に集中していることがわかるでしょう。

真の男女平等社会を目指すのであれば……?

つまり、どうして「おじさん差別」だけがまかり通っているかというと、表面的には“情けない”といった印象があるかもしれませんが、内実は圧倒的強者であるため、無自覚・無意識のうちに“叩いてもいい存在”と認識している人々が多いのかもしれません。

現在の日本は内閣総理大臣も東京都知事も女性が就任していますが、それでも“なんだかんだでまだまだ男性のほうが強い”という意識が日本国民全体の根底にあるとしたら、「おじさん差別」だけが黙認される理由として腑に落ちないでしょうか。

逆に考えると、中年男性が本当に“情けない存在”(=弱い存在)になっているとしたら、「おじさん差別」のような発言をした瞬間に、弱い者いじめだとして世論が黙ってはいないでしょう。仮に中年男性に強い嫌悪感を抱く人々がいたとしても、その気持ちを口に出してはいけないという空気感が醸成されるはずです。

ですから、旧態依然とした「おじさん差別」を許さず、もっともっと「NO」という声をあげていくためには、中年男性に集中してしまっている権力構造を是正し、真の男女平等社会を目指していくことが必要なのかもしれません。

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