「ギャラが破格」は大きな勘違い…業界人がぶっちゃけるNetflixドラマの《現実》
動画配信サービス『Netflix』で、4月末から配信がスタートした日本発のオリジナルドラマシリーズ『地獄に堕ちるわよ』がすさまじい勢いで再生数を伸ばしている。

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同作は、「大殺界」「地獄に堕ちるわよ」といった強烈なパワーワードや決めゼリフで一世を風靡した占術家・細木数子の波瀾万丈な半生を、人気と実力を兼ね備える国民的女優・戸田恵梨香が体を張って演じ切ったセンセーショナルな作品だ。
戦後の闇市から身を起こし、銀座のクラブ経営を経て、裏社会の有力者たちと交わりながら“テレビの視聴率女王”へと駆け上がった、平成を代表する女傑の軌跡が赤裸々に描かれており、日本国内でまたたく間にランキング1位を獲得した。
『地獄に堕ちるわよ』だけではない。『火花』『全裸監督』『今際の国のアリス』『サンクチュアリ -聖域-』『極悪女王』『地面師たち』――。これらのNetflixオリジナル作品は、ここ数年間のドラマ界を代表するタイトルであることは間違いない。
さらに、Netflixは多額の資本を使って有名監督や人気脚本家、優秀なクリエイターたちを次々に囲い込むことに成功。日本のエンターテインメントの頂点に君臨しようとしており、もはや民放ドラマが太刀打ちできない状況になりつつあることは、素人の目にも明らかだろう。
しかし、圧倒的な勢いと熱狂の裏で、最近になってNetflixに対して現場からは不満の声が噴出してきている。
前編「『地獄に堕ちるわよ』が大ヒットの裏で……「企画が通らない」業界人が漏らすNetflixへの不満」では、Netflixに対する業界関係者の不満と嘆きを紹介した。
後編では、Netflixが日本のドラマ界にもたらしている功罪とは何なのか? 引き続き関係者の声をお届けする。
大ヒットしても潤わない脚本家
Netflixの功罪を語るうえでもう一つ避けて通れないのが、クリエイターの待遇と権利の問題だ。脚本家のマネジメントを行なう事務所の代表取締役・D氏は語る。
「Netflixのギャラは破格というイメージが世間に浸透していますが、大きな勘違いです。確かに、主演クラスの俳優やごく一部のトップクリエイターには地上波とはケタ違いの報酬が支払われている。
しかし、脚本家に関しては地上波プライム帯ドラマの2倍のギャラがあれば相当マシなほうです。Netflix側からの指示も多く、何度も書き直しをさせられるので労働時間で考えると決して割のいい仕事とは言えませんよ」
さらに、大きな課題はNetflixが採用している契約にあるとD氏は嘆く。

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「日本のドラマの場合、放送後のDVD化や配信、海外への番組販売などが行われれば、脚本家には二次利用料が支払われる。しかし、Netflixのオリジナル作品は一部の収益を除いてプラットフォーム側が買い取る契約になるケースが多い。
だから作品が大ヒットしたところで、脚本家に夢のような報酬が入るわけじゃないんです。
こうした背景からハリウッドでは脚本家によるストライキが実施されていますが、日本ではまだ“Netflixの神話”を信じているクリエイターが多いので、そういった動きにはなっていない。
だけどこのまま言いなりになっていけば、クリエイターの体力もメンタルもすり減ってしまう。権利については真摯に向き合って解決しなければいけない問題です」
人気脚本家・坂元裕二が……
Netflixのビジネスに特化したスタンスは、大物クリエイターにも影響を及ぼしている。深夜ドラマやアニメを手掛け、スクールで講師も務める女性脚本家・E氏は言う。
「『最高の離婚』『カルテット』『大豆田とわ子と三人の元夫』をはじめ、独特な会話劇で日本のドラマファンを魅了している脚本家・坂元裕二さんは、Netflixと5年間のパートナーシップ契約を結び、2023年に『クレイジークルーズ』を発表しましたが、豪華客船を舞台にしたドタバタ劇がメインで、坂元作品ならではのシニカルかつ繊細な会話劇がほとんど味わえない脚本になっていてガッカリしました。
Netflix側からどのような要求があったかは分かりませんが、かなり制約があったのでは? と勘繰ってしまいます。ヒットするシーンの入れ込みや“切り抜き映え”といったデータでは、クリエイターの良さは出せないということを理解してほしい」
また、シナリオ講師も務めるE氏は、若手ライターが書く作品の変化についても悲しんでいる。
「いかにもNetflixっぽい企画を書く生徒が増えている。彼らは韓国映画っぽいノワールもの、闇社会もの、派手なアクションシーンのある課題を提出して、口々に「いつかNetflixで一発当てたい」と言っている。
これは必ずしも悪いわけではないですが、プラットフォームが若いクリエイターたちの感性そのものを変えつつあることに驚いています」
Netflix一強時代が終わる可能性
地上波がコンプライアンスの波に飲まれて無難で小粒な作品ばかりを量産するなか、人間のドロドロとした憎しみや過激な裏社会を真正面から描き切るNetflixドラマは、今後もしばらくはヒットを飛ばしていくだろう。

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しかしながら、今回論じてきたようにNetflixのビジネス面を過剰に優先させるスタンスが透けて見え始めていることも事実だ――。
プラットフォームの言いなりになって疲弊するクリエイターたちが作品へのプライドを持ち、著作権を守るルールが厳格化されたとき、コンテンツ界の黒船・Netflix一強時代に変化が訪れるかもしれない。
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