故ヴァル・キルマー、“生成AI”でスクリーンに復帰。新たな試みにネット上では厳しい声も

故ヴァル・キルマー、“生成AI”でスクリーンに復帰。新たな試みにネット上では厳しい声も

映画『トップガン』シリーズや『バットマン フォーエヴァー』への出演で知られる、ヴァル・キルマー。2025年4月、肺炎のため65歳でこの世を去った彼だが、生成AIによってある新作映画に出演することが話題となっている。

故ヴァル・キルマーがAIによって映画出演

2015年に咽頭がんと診断され、その後回復していたものの、2025年4月1日(現地時間)に肺炎のためこの世を去った、俳優のヴァル・キルマー(享年65歳)。

実は亡くなる5年前、ヴァルは映画『As Deep as the Grave』で、カトリック司祭でありネイティブ・アメリカンの精神文化にも通じたファーザー・フィンタン役にキャスティングされていたものの、喉頭がんと闘っていた彼は体調が優れず、撮影現場に立つことは叶わなかったという。

しかし、脚本と監督を務めたコエルテ・ヴォーヒーズは最先端の生成AIを用いることで、ヴァルを作品に登場させるという当初の構想を実現。ヴォーヒーズ監督は、『Variety』にこのように語っている。

(以下引用)

「この役は、どうしても彼に演じてほしかったんです。作品自体も彼を中心に作り上げたものでした。本作は、彼のネイティブ・アメリカンとしてのルーツや、南西部とのつながり、その土地への深い愛情から着想を得ています。先日、コールシートを見返したのですが、彼はすでに撮影に入れる状態でした。ただ、当時は本当に厳しい健康状態で、現場に来ることができなかったのです」

(以上引用)

また、この新たな試みは、ヴァルの家族の協力のもとで行われており、娘のメルセデスに加え、息子ジャックも支持しているという。

(以下引用)

「ヴァルの家族は、この作品がどれほど重要か、そして彼自身も関わることを強く望んでいたと何度も話してくれました。彼にとってこの作品は本当に大切なもので、自分の名前を刻みたいと思っていたんです。そうした後押しがあったからこそ、『やろう』と決断することができました。議論を呼ぶかもしれませんが、これはヴァル本人が望んでいたことなのです」

(以上引用)

同作では、家族から提供された若い頃の写真や晩年の映像を組み合わせることで、キャラクターの人生のさまざまな段階を描き出しており、音声にもヴァル本人の声が使用されているとのこと。

ヴァルの娘であるメルセデスは声明で、自身の父について「非常にスピリチュアルな人物」であり、アメリカ南西部を舞台にした“発見と啓発の物語”と、その中での自身の特別な役割に強く共鳴していたと語っている。

娘のメルセデスとヴァル。 Michael Tullberg / Getty Images

さらに、「彼は常に新しい技術を、ストーリーテリングの可能性を広げるものとして前向きに捉えていました。その精神はこの作品の中でも大切にされており、彼はこの映画にとって欠かせない存在なのです」とコメントしており、生成AIによる出演という試みに対しても前向きな立場を示した。

物議を醸すAI。今後の可能性は?

2025年には、AI企業「パーティクル6プロダクションズ」によって生み出された、“AI俳優”ティリー・ノーウッドが物議を醸し、全米映画俳優組合・米国テレビ・ラジオ芸能人連盟(SAG-AFTRA)は、「盗用された演技データを使って俳優の仕事を奪って、彼らの生活を脅かし、人間の創造性を軽視している」として強く批判。

『NBC News』によれば、AIの使用をめぐる問題は依然として大きな争点となっており、俳優たちは自身の肖像をどのように管理・保護するかを巡って声を上げているという。

さらに2024年には、アメリカ・カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事が、AIから俳優を保護するための法案に署名。そのうちの一つであるAB 1836は、死後のパブリシティ権の一環としてデジタル上の肖像を保護するものであり、遺族または権利継承者の事前の許可なく商業利用されることを防ぐ法的権利を強化する内容となっている。

Rob Kim / Getty Images

俳優が死後に映画へ登場するケースはこれまでもあり、映画『グラディエーター』のオリヴァー・リード、『ワイルド・スピード SKY MISSION』のポール・ウォーカー、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のキャリー・フィッシャーなどがその代表例として知られている。

またこれまでは、主にスタントダブルの身体に俳優の顔をCGIで合成する手法が用いられてきたが、今回のようにAI技術を用いて俳優を再現する試みは初めてとみられると『NBC News』は報じている。

新たな試みにネット上では厳しい声も

AIをめぐっては依然として激しい議論が続いているが、制作者たちは自らの決断が批判を招く可能性を理解した上で、同作がAIの倫理的な活用方法を示す作品になることを望んでいるという。さらに同作は、SAGのガイドラインに基づいて制作されており、ヴァルの出演については遺産管理団体に対して、適切な報酬が支払われているとしている。

しかし、『Fox News』の報道によれば、今回の新たな試みには批判の声も寄せられているという。

「彼は生前、こういったことに同意していたのだろうか? もしそうでないなら、おそらくやるべきではない、かなり不快な行為だと思う」

「ハリウッドでは、人が亡くなってもAIで“復活”させられ、働き続けさせられることになる」

「どれだけ許可があったとしても関係ない。誰もこんなことをやるべきではない」

「生成AIで死者の姿を“復活”させることは、個人的には違法にすべきだと思う」

「どれだけ道徳的に取り繕っても、これがいかに異常で強欲なことかは変わらない。正直に言えば、家族は恥じるべきだ」

さらに、映画『ワイルド・スピード SKY MISSION』でポール・ウォーカーが見せたような“短いカメオ出演”であれば「問題ない」としつつも、「もしセリフのある本格的な役までAIで再現するのであれば、俳優が演じることの本当の意味とは何なのか」と疑問を呈したユーザーもいたとのこと。

激しい議論が繰り広げられているエンタメ業界で、今後AIがどのように活用されていくのか、あるいはこのまま規制や反発が強まっていくのか、今後の動向に注目したい。

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