韓国ドラマ「素晴らしき新世界」爆発的ヒットの理由

韓国ドラマ「素晴らしき新世界」爆発的ヒットの理由
朝鮮時代の宮女が、現代の冷徹な御曹司とロマンスを繰り広げる韓国ドラマ「素晴らしき新世界」(Netflixで配信中)が、Netflixの非英語・テレビ番組部門でTop10に4週連続ランクインし、韓国国内での視聴率は右肩上がりと人気を博している。王道なラブコメでありながら、セオリーをいい意味で覆していく本作の魅力に迫る(※以下、8話までのネタバレを含みます)。
朝鮮時代と現代を行き来する予測不可能なストーリー
本作は、妖女と称される王の側室、カン・ダンシム(イム・ジヨン)が、毒殺の刑に処され非業の死を遂げるところから物語が始まる。死んだはずのダンシムだったが、目を覚ますと現代の無名女優シン・ソリの身体に転生。状況がつかめず混乱のなか、“資本主義が生んだ怪物”と恐れられる財閥の御曹司、チャ・セゲ(ホ・ナムジュン)と最悪な出会いを果たしたことをきっかけに、2人の運命が交差していく。
ダンシムは、セゲをはじめ、同じ安アパートの住人や事務所の社長、女優など周囲を大胆に巻き込みながら、現代でソリとして生きる決意を固め、新たな人生を切り拓いていく。そのなかでセゲとのロマンスも進展していくが、物語はそれだけに留まらない。徐々にダンシムの過去が明かされ、世子(王の後継者)の弟でセゲと瓜二つのチョンホン大君(ホ・ナムジュン)との時空を超えた深いつながりが示唆されていく展開が、まずユニークだ。
豪胆なヒロインとツンデレ御曹司のロマンス
本作の魅力はなんといっても、ソリ(中身はダンシム)とセゲというありそうでないキャラクター。ダンシムが宮中で培ったあらゆるスキルを武器に、ソリとして現代をたくましく生き抜く姿は痛快そのもの。意地悪な女優仲間や、セゲの婚約者に名乗り出る令嬢モ・テヒ(チェ・ソアン)にも怯まず、時にはセゲのピンチさえもソリ流の処世術で切り抜けていく。セゲのド肝を抜く芯の強さが魅力であり、ちゃっかりセゲや周囲の人たちを都合よく動かしてしまう、豪胆な人となりにグイグイひきつけられる。
一方、ソリに振り回され続けるセゲは、普段は黒スーツに身を包み、周囲を威圧する冷徹な佇まいの人物。ビジネスにおいては強引な手法もいとわず、それによって生じる自身の悪評さえも武器にして生きてきた。しかし、これまで出会ったことのないタイプのソリにだけは従来のやり方が一切通用しない。気づけばソリのことを目で追い、彼女をモデルにした広告の撮影では、セクシーな衣装をまとったソリの美貌に目を奪われ「あの女(ソリ)しか目に入らない!」と人前で叫ぶほど盲目に。本来であれば近寄りがたい男が、ソリの前で見せる激しい喜怒哀楽の振り幅のギャップがたまらない。
そんな朝鮮時代から来たソリと、規格外な彼女に振り回され続けるセゲによる序盤の掛け合いは、まるですれ違いコントのよう。互いに真剣だからこそ噛み合わず、その温度差が笑いを生み出していく。さらに、時代劇の撮影現場でソリが「無礼な口をきくな!」と叫ぶ姿を捉えた動画が拡散されミーム化する場面や、薬を盛られ飛行機で意識を失ったセゲと、彼を助けようとしたソリが電気ショックを受けて白目を見せるシーンなど、主演2人が身体を張った演技で作品のコメディパートを支える。
こうした濃い2人のキャラ立ちした笑いの絶えないドラマではありつつも、ここぞというタイミングでシリアスやロマンスへ切り替わる緩急も巧み。セゲの兄チェ・ムンド(チャン・スンジョ)が見せる笑顔の裏に隠された恐ろしい面が、物語に一気に緊張感をもたらす。ロマンス描写の破壊力もすさまじく、セゲがソリに胸の鼓動を聞かせるために抱き寄せる場面や、ソリが一度はセゲのキスを拒んだように見せかけて気持ちがあふれる海辺のひとときなどは悶絶するほどの胸キュンシーンとなっている。
イム・ジヨンとホ・ナムジュンの笑いあり、涙ありの好演
カン・ダンシム/シン・ソリを演じるイム・ジヨンは、復讐劇「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」(2022~2023)の悪役パク・ヨンジンが当たり役となり、一躍国内外で有名となった。時代劇「オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-」(2024~2025)では清廉な主人公クドク役で視聴者の心をわし掴みにし、韓国のケーブル局のヒット基準とされる10%を超えて最終回は13.6%を記録。日本ではU-NEXTで配信され2025年の上半期韓国ドラマ部門で2位となった。そんなヒット連発のイム・ジヨンが「素晴らしき新世界」では名コメディエンヌぶりを発揮している。
チョンホン大君/チャ・セゲ役のホ・ナムジュンは、利益のみで物事を考えていた男が、ソリとの出会いによって人生が一変するさまを生き生きと演じている。ポーカーフェイスだったセゲが、ソリと一緒にいると感情がまったくコントロールできない。わずかな頬のゆるみや視線の動きだけで「ソリが好き」という感情を覗かせる繊細な芝居は、細部まで見返したくなるほど卓越している。
今作で本格的なブレイクとなりそうなホ・ナムジュンは、1993年生まれ。「YOUR HONOR~許されざる判事~」(2024)では記憶に残るヴィランでインパクトを残し、「100番の思い出」(2025)ではキム・ダミ(「梨泰院クラス」)の相手役を務めた。次回作も予定されており、2027年のドラマ「クジラ星(原題)」では、ムン・ガヨンとチェ・ウシクと共演するという。
また、映画『ソウルメイト』(2023)などのカン・ヒョンジュによる脚本も秀逸。過去と現在の登場人物の言動がリンクし、何気ない会話や雨や花にも思いや意味が込められており、細部まで練られた構成となっている。また、セゲが恋を自覚する場面で「社内お見合い」「賢い医師生活」と人気韓ドラのOST(オリジナルサウンドトラック)が使われるなど、韓国ドラマファンにうれしい小ネタもちりばめられている。
ロマンスや時代劇に留まらず、ダンシムとチョンホン大君の過去に迫るミステリー要素でも視聴者を強く引き込み、とことんエンタメを盛り込んだ本作は、第8話は最高視聴率となる13.7%を記録したと報じられている。Netflixでも上位ということもあり、世界に本作と主演の2人の魅力が伝わっているようだ。(梅山富美子)
Netflixシリーズ「素晴らしき新世界」(全14話)は第8話まで独占配信中、第9話は6月5日配信開始