サムスン「Galaxy S26」が示すAIスマホの次の段階

「使いこなせない」というAIの壁, プライバシーディスプレイという差別化, ハードウェアの進化点, 日本市場での販売戦略, AIフォンの先に何があるか

左からGalaxy S26、S26+、S26 Ultra。日本では初めて3機種同時に展開する(写真:筆者撮影)

スマートフォンにAI機能が載り始めて2年。サムスン電子の調査によると、85%のユーザーが「使いにくい」「活用できない」と感じているという。機能は増えたのに使われない。サムスンが2月26日に発表した「Galaxy S26」シリーズは、この壁を正面から崩しにかかるモデルだ。

【写真で見る】新機能Now Nudgeの動作画面。LINEで日程調整中にキーボード上部にカレンダー情報が自動表示される

日本ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4キャリアから3月12日に発売される。サムスンオンラインショップの価格(税込)はGalaxy S26が13万6400円から、Galaxy S26+が16万9920円から、Galaxy S26 Ultraが21万8900円からとなっている。

今回のモデルで目を引くのは、ハードウェアの性能向上よりも、AI機能の位置づけを根本から変えたコンセプトだ。サムスン電子ジャパンはGalaxy S26シリーズを「先回りするAIフォン」と定義している。AIを訴求するGalaxy Sシリーズとしては3世代目にあたるが、従来の「ユーザーがAI機能を使う」という前提から離れ、「AIがユーザーの行動を理解し、次のステップを提案する」方向へかじを切った。

サムスン電子ジャパンの小林謙一CMOは「ユーザーのニーズに合わせて簡単に感覚的にスマートフォンを使えるよう、AIが後ろ側からサポートするレベルに至った」と語った。

「使いこなせない」というAIの壁

サムスンがこの方向に進んだ背景には、AI機能の利用実態がある。同社のデータでは約81%のユーザーがAIに価値を見出しているにもかかわらず、大半が使いこなせていない。

AIの有用性は認知されているが、ユーザーが自分から呼び出さなければ機能しない構造に問題がある。Galaxy S26シリーズはこの課題に対し、ユーザーの操作を待たずにAIが情報を提示するアプローチで応えた。

その代表的な機能が「Now Nudge」だ。

LINEなどのメッセージアプリで「この日空いている?」とスケジュール調整のやり取りをしている際、キーボードを立ち上げた段階でカレンダーの予定を自動表示する。ユーザーがホーム画面に戻ってカレンダーアプリを開く必要がない。相手から「あの時の写真を送って」と頼まれた場合も、AIが会話の文脈を読み取り、ギャラリーから該当する写真を提示する。

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Now Nudgeの動作画面。LINEで日程調整中にキーボード上部にカレンダー情報が自動表示される(写真:筆者撮影)

Galaxy S25から搭載されている「Now Brief」も進化した。従来はカレンダーアプリに手動で登録した予定だけを表示していたが、Galaxy S26では通知の中からAIが重要度を判断する。予約確認メールのように、ユーザーがカレンダーに登録し忘れた情報も自動でリマインドに含める。

AIエージェントによるアプリ操作の自動化にも対応した。「○○駅までタクシーを呼んで」と音声で指示すると、AIが配車アプリを操作して手配を完了する。配車やフードデリバリーなど一部のサービスが対象だが、発売時点では英語と韓国語のみの対応で、日本語への対応時期は明らかにしていない。

先回り型とは別に、ユーザーが自分で操作するAI機能も強化された。ギャラリーアプリの「フォトアシスト」では、テキスト入力による画像編集が可能になった。昼間に撮った写真に対して「夜に変えて」と指示すると、街灯の光や水面の反射まで含めて背景を生成する。さらに別の画像を合成することもでき、編集を何度でも続行できる。

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フォトアシストの編集結果。テキスト指示で人物の服装を和服に差し替えた(写真:筆者撮影)

プライバシーディスプレイという差別化

AI機能と並んでサムスンが訴求するのが、Galaxy S26 Ultraに搭載された「プライバシーディスプレイ」だ。有機ELパネルの画素構造を工夫し、正面からは通常通り見えるが、横からの視認性を制限できる。

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Galaxy S26 Ultraのプライバシーディスプレイをオンにした状態。斜めからは画面内容が見えにくくなる(写真:筆者撮影)

スマートフォンの覗き見防止機能には先例がある。シャープはAQUOSシリーズで「ベールビュー」と呼ばれる機能を長年提供してきた。液晶パネル内にスイッチパネルを設け、電気的に視野角を狭める仕組みで、フィーチャーフォン時代から搭載していた。ただし、この技術は液晶ディスプレイに依存しており、AQUOSが有機ELに移行したAQUOS R6(2021年)以降は搭載されていない。

サムスンのプライバシーディスプレイは、有機ELパネルに光を真っすぐ飛ばすピクセルと広く飛ばすピクセルを均等に配置し、プライバシーモード時には真っすぐなピクセルだけを発光させる仕組みで実現した。有機ELで覗き見防止をハードウェアレベルで実装した点に技術的な新しさがある。

さらに、特定のアプリだけを見えなくしたり、通知のポップアップ部分だけを隠したりと、保護の範囲をユーザーが細かく設定できる。

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通知のポップアップだけをプライバシーディスプレイで保護している状態。画面全体ではなく通知部分のみ隠せる(写真:筆者撮影)

シャープのベールビューが画面全体のオン・オフだったのに対し、アプリ単位や通知単位で制御できる点がGalaxy S26の差別化ポイントだ。

ハードウェアの進化点

プロセッサにはSnapdragon 8 Elite Gen 5 for Galaxyを搭載した。OSはAndroid 16を採用している。

Galaxy S26 Ultraは60Wの超急速充電に対応し、30分で0%から75%まで充電できる。Galaxy史上もっともスリムなUltraモデルでもあり、ベイパーチャンバーを大型化して放熱性能を21%向上させた。

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背面から見た左からGalaxy S26、S26+、S26 Ultra。Ultraは4眼カメラを搭載している(写真:筆者撮影)

カメラはS26 Ultraが2億画素の広角と5000万画素の望遠(光学5倍)を搭載した。絞りの改良でSシリーズ史上もっとも明るいカメラとなり、暗所撮影の「ナイトグラフィービデオ」の画質が向上した。動画撮影では新たに水平ロック機能を実装し、端末を最大360度回転させても水平を維持する。

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水平ロック機能のデモ。端末を回転させても映像の水平が維持される様子をモニターに出力していた(写真:筆者撮影)

また、プロ向け動画コーデック「APV(Advanced Professional Video)」にGalaxyとして初めて対応した。

日本市場での販売戦略

Galaxy S26シリーズで、サムスンは日本を初めて「一次販売国」に位置づけた。韓国やアメリカと同じタイミングで予約・発売を開始する。これまで日本は主要国より発売が遅れることが多かった。

また、日本ではこれまでGalaxy SシリーズはベースモデルとUltraの2機種で展開してきたが、今回初めてS26+を導入し、3機種体制とした。

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左からGalaxy S26とS26+の背面。S26+は日本初投入で、ベースモデルとの画面サイズの差がわかる(写真:筆者撮影)

販路も拡大した。楽天モバイルが数年ぶりにGalaxy Sシリーズの取り扱いを再開し、4キャリア同時発売が実現した。SIMフリー版も家電量販店やECサイトで購入できる。サムスンオンラインショップでは限定カラーのシルバーシャドウとピンクゴールドも販売する。各キャリアや販路によって取り扱うカラーや容量は異なる。

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展示されたGalaxy S26シリーズのカラーバリエーション。各モデルとも限定色を含め全6色で展開する(写真:筆者撮影)

小林CMOは「ハード面、ソフト面、そして発売の環境整備」の3点を強調した。製品だけでなく、日本市場での販売体制そのものをテコ入れする姿勢がうかがえる。

AIフォンの先に何があるか

スマートフォン市場は成熟期にあり、ハードウェアの性能差だけでは購買動機を生みにくくなっている。サムスンがGalaxy S24でAI機能を前面に打ち出してから2年、AIフォンという言葉は業界の共通語になった。

Galaxy S26の先回り設計は、端末がユーザーの行動文脈を深く読むことで成り立っている。メッセージの内容からスケジュールを推測し、写真の被写体を判別して共有候補を選ぶ。便利さの裏側には、端末がどこまで個人の情報を扱うのかという問いがつきまとう。Galaxy S26 Ultraにプライバシーディスプレイを載せたのは、その緊張関係に対するサムスンなりの回答でもある。

AIが前に出るのではなく日常に溶け込む方向へ進んだGalaxy S26を、ユーザーがどう受け止めるか。3月12日の発売に先立ち、2月26日から各キャリアおよびサムスンオンラインショップで予約を受け付ける。