専門家「高齢者研究で判明した《長生きの秘訣》。実は健康的な生活習慣などより…」男女ともに山梨県と静岡県の健康寿命が長いワケ【2026年編集部セレクション】
2025年上半期(1月~6月)に配信したものから、改めて読み返してほしい「ベスト記事」を選びました。(初公開日:2025年6月14日)
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つながり不足が、生活習慣病や心疾患、認知症などを引き起こす要因のひとつであることは、今や世界的な常識。その理由を専門家が解説します(構成:内山靖子)
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【グラフ】人はどんなときに「幸せ」と感じる?
人間は太古の昔から群れで生活してきた
私は公衆衛生学と老年学を専門とし、人々のつながりや地域の文化・風土が健康にどのように影響しているかを研究しています。その中でわかったのは、つながりは健康を左右する大きな要因になっているということ。
これは世界的に共通する事実で、たとえばオランダの研究者が「どのような生活スタイルが長寿に影響を及ぼしているか」という研究データをまとめたものが次ページの図1です。
ご覧のように、「社会とのつながりの種類や量が多い」ことは、「タバコを吸わない」「運動する」などの、一般的に《健康によい》とされている生活習慣よりも長生きに対する影響が大きいという結果が出ています。
人間が「社会的動物」と呼ばれるのは、太古の昔から群れを作り、他者とのかかわりを持ちながら生活をしてきたから。つまり、人はつながりの中で生きることが自然な状態なのです。

<図1>生活スタイル別に長寿への影響を比較すると……(
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その証拠に、ハーバード大学の成人発達研究で、家族や友人などつながりが多い人は、少ない人に比べて幸せを感じやすく、健康で長生きであるということがわかっています。
一方、つながりが不足し、孤立している人は、中年期からさまざまな健康問題を抱え、認知機能が低下したり、長生きできなかったりする傾向がありました。
なぜ、つながりが不足すると健康に影響が出てしまうのでしょうか。それは、孤立することで本能的に不安を感じ、ストレスが高まるため、体内で炎症反応が起きたり、ホルモンが過剰に分泌されたりしてバランスを崩してしまうから。
その結果、交感神経が優位になって血圧が上がり、心筋梗塞などの心疾患や脳卒中などの脳血管疾患を起こすきっかけになることが考えられるのです。また血糖値を上昇させるコルチゾールという物質が増え、糖尿病や脂質代謝異常といった生活習慣病のリスクを高めてしまうことにもつながります。
反対に、他者との心地よいかかわりは「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンの分泌を促し、ストレスを軽減するため、うつ病を予防する効果があるという結果が。

<図2>人が「幸せ」と感じる状況は?(
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図2にあるように、人がもっとも幸せを感じるのは、欲しいものが手に入ったり、おいしいものを食べたりなどの「基本的欲求」を満たした時よりも、「人的交流」、つまり人と接した時です。
ほかにも、コミュニケーションをとったり、会話をする中で記憶を遡ったりすることが脳への刺激となり、記憶力の低下を抑制する効果があります。
もちろん、人とのかかわりがすべて健康にプラスになるとは限りません。流行病の感染リスクも高まりますし、思春期や壮年期には学校や職場での人間関係がストレスの原因となることもあるでしょう。
ただ、他者からの助けや支えを必要とする傾向があるシニア世代は、人と接することで得られる安心感や喜びといったメリットのほうが大きいのです。
脳卒中の回復期においても、病後の生活やリハビリをサポートしてくれる人がいるかいないかで、予後が大きく変わることがわかっています。
健康寿命が長い山梨県と静岡県
ただ残念ながら、現代は人とつながりにくい社会になってしまいました。原因のひとつは、核家族化が進んだこと。二世帯、三世帯同居が減り、核家族が一般的になったことで、子どもが巣立ったら夫婦2人きりになり、どちらかが亡くなればひとり暮らしになるケースも多い。
たとえ子どもや孫と同居していても、生活リズムが違えば、食事を1人で食べたり、会話がほとんどなかったりというような家庭内孤立の状態に陥っているケースも少なくありません。
地域のつながりも年々薄くなっています。内閣府の調査によると、1970年代には半数以上の人が近所の人と親しいつきあいをしていましたが、現在は1割ほどに。プライバシーの重視や、「他人に干渉されたくない」と考える人が増えていることが要因です。
また、宅配サービスなど社会的なインフラが充実し、人の手を借りずになんでも1人で解決しやすくなったことで、近所づきあいの必要性を感じにくくなったということもあるでしょう。
確かに便利な世の中ではありますが、このような生活環境は人を孤立させてしまいます。隣近所が親密なつきあいをしていた昭和の暮らし方は、健康にとってプラスの側面が多かったと言えるでしょう。実は、男女ともに健康寿命が長い山梨県と静岡県は、昔ながらの地域のつながりが今でも根強く残っているのです。
山梨県では「無尽講(むじんこう)」と呼ばれる互助活動が盛んで、仲間同士の交流が活発。静岡県は、大きな地震が起こると昔から言われていることもあり、いざという時に地域の住民同士で助け合うという考えが根づいているようです。
さらに、高齢になってもボランティア活動に参加したり、働き続ける人の率が高いという特徴もあります。この2県の例を見ても、地域のつながりの強さが健康寿命に大きな影響を及ぼしていることがわかるでしょう。