F1やってる場合じゃない? ホンダEV撤退に評論家たちが辛口評価! 計画中止で見えた課題とは

モビリティショーで方針転換を表明すべきだった(桃田健史), トップで戦えるBEVの技術力などに欠いていた(井元康一郎), 北米偏重の電動化戦略は経営陣の判断ミス(鈴木直也), また極端に振れたのか! というホンダらしさ(松田秀士), デザイン、商品力、開発スピードなどが問題(山本シンヤ), 幸い何をしでかそうとホンダは愛されている(西川 淳), BEV&FCV全フリを決断できたことが謎(小沢コージ)

F1やってる場合じゃない!? ホンダEV撤退に評論家たちが辛口評価! 計画中止で見えた課題とは

 2026年3月。衝撃のニュースが飛び込んできた。ホンダが四輪電動化戦略の見直しを表明し、発売を間近に控えていたゼロシリーズなど3台のBEVの発売&開発中止を発表。ホンダの苦渋の決断を、7人の自動車評論家が忖度なく評価する。

※本稿は2026年4月のものです

文:桃田健史、井元康一郎、鈴木直也、松田秀士、山本シンヤ、西川 淳、小沢コージ/写真:ホンダ ほか

初出:『ベストカー』2026年5月10日号

※星の数は多いほうがホンダの決断がよかったことを意味しています

【画像ギャラリー】カッコ良かったのにもったいない!! 開発中止になったホンダEV全部見せ!!(8枚)

モビリティショーで方針転換を表明すべきだった(桃田健史)

モビリティショーで方針転換を表明すべきだった(桃田健史), トップで戦えるBEVの技術力などに欠いていた(井元康一郎), 北米偏重の電動化戦略は経営陣の判断ミス(鈴木直也), また極端に振れたのか! というホンダらしさ(松田秀士), デザイン、商品力、開発スピードなどが問題(山本シンヤ), 幸い何をしでかそうとホンダは愛されている(西川 淳), BEV&FCV全フリを決断できたことが謎(小沢コージ)

次世代BEV「0シリーズ」の第1弾として、2026年前半に北米市場から投入する予定だったホンダ0 SUV

●ホンダの決断への評価:★★☆☆☆

 決断が遅い。原因は、世の中の流れに対して企業としての対応が半歩から一歩遅れていたからだ。

 時計の針を戻せば、BEVバブルが始まったのは2015年のCOP21(国連気候変動枠組条約締約国会議)で採択されたパリ協定が起点。

 アメリカ、中国、欧州で環境向けの投資バブルが起こり、そこにBEVが巻き込まれた形だ。BEVバブルのピークは2010年代末から2020年代初頭。ちょうどホンダが2040年BEV・FCEV100%宣言をした頃にあたる。

 2022年から2023年頃は、環境関連の投資バブルが下降するなか、ホンダとしては焦りが出てきた。

 BEVへの移行期間では次世代HEV開発も考慮してきたものの、移行期間がホンダの想定よりかなり長くなりそうだという雰囲気が社内に広がり始めていた。しかし報道陣向け対応を含め、次世代HEV強化の動きが遅れた。

 こうした遅れを取り戻す特効薬がないまま、第2次トランプ政権の環境政策転換の影響を見誤った。結果的に「0シリーズ」やソニー・ホンダモビリティの抜本的な事業計画見直しをせざるを得ない状況に追い込まれたといえる。

 最も遅くても、ジャパンモビリティショー2025の時点でBEV事業転換を打ち出すべきだった。

 現時点でホンダ社内外の人たちにとって、ホンダのBEV普及期に向けた勝ち筋が見えてこない。ホンダはいまこそ、次世代の「ホンダらしさ」の在り方を自問自答するべきだ。

トップで戦えるBEVの技術力などに欠いていた(井元康一郎)

モビリティショーで方針転換を表明すべきだった(桃田健史), トップで戦えるBEVの技術力などに欠いていた(井元康一郎), 北米偏重の電動化戦略は経営陣の判断ミス(鈴木直也), また極端に振れたのか! というホンダらしさ(松田秀士), デザイン、商品力、開発スピードなどが問題(山本シンヤ), 幸い何をしでかそうとホンダは愛されている(西川 淳), BEV&FCV全フリを決断できたことが謎(小沢コージ)

ソニー・ホンダモビリティで進めていた「アフィーラ」も開発・発売の中止を発表している

●ホンダの決断への評価:★☆☆☆☆

 次世代BEV商品群「0シリーズ」のうち、対米戦略車2モデル、およびソニーとのコラボレーションブランド「アフィーラ」からの撤退というホンダの決断。

 2兆5000億円という損失額は大きな痛手であるものの、北米市場を四輪のお得意様としているホンダとしてはやむなしの措置だったといえる。

 が、この失敗を市場環境の激変という視点でのみ捉えると、ホンダの実情を見誤る。ホンダにとって最も深刻な問題は、トップ水準で戦えるBEVを作るだけの技術力や部品調達力を欠いていたことだ。

 0シリーズのうち今回お蔵入りになった「サルーン」「SUV」は度外れてアバンギャルドなスタイリングを持っていた。もしこれで電気的性能や自動運転などの機能が月並みだったら見掛け倒しと嘲笑されるのは必定というレベルだ。

 次世代商品をあえてそういうものにしたのは不退転の決意の表れといえたが、2025年秋のジャパンモビリティショーの段階でも性能目標ひとつ出せなかった時点で暗雲が垂れ込めていた。

 アフィーラも10万ドル(1600万円)カーなら自動運転レベル4くらい実現させられなければ、これまた張りぼての謗りを免れない。

 ホンダはこれまでリテール向けの純電動車で成功した試しがない。今回の撤退は一見賢明だが、何もやらないうちに撤退したというのでは顧客から信頼を得ることも失敗から学ぶこともできない。できるだけ早く次なる手を打つべきだ。

北米偏重の電動化戦略は経営陣の判断ミス(鈴木直也)

モビリティショーで方針転換を表明すべきだった(桃田健史), トップで戦えるBEVの技術力などに欠いていた(井元康一郎), 北米偏重の電動化戦略は経営陣の判断ミス(鈴木直也), また極端に振れたのか! というホンダらしさ(松田秀士), デザイン、商品力、開発スピードなどが問題(山本シンヤ), 幸い何をしでかそうとホンダは愛されている(西川 淳), BEV&FCV全フリを決断できたことが謎(小沢コージ)

ホンダ0シリーズのなかのインド生産エントリーモデル「0アルファ」は開発が継続される

●ホンダの決断への評価:★★★☆☆

 唯一評価できる点は、現在進行中の電動化戦略の誤りを認めて軌道修正を図ったこと。経営陣に正常な判断力が残っていたのは幸いだった。いただけないのは、危機に至った原因としてトランプ政権の環境政策の迷走を挙げていること。

 もちろん、IRA打ち切りや環境規制の大幅緩和などで目算が狂ったのは事実。GMやフォードも巨額の減損処理を強いられている。

 しかし、GMやフォードが北米最優先なのはわかるが、ホンダには中国やアジアもあるうえ、2輪からの移行を考えると途上国も将来有望な市場のはず。それなのに、チップをすべて北米市場に賭ける極端な電動化戦略を採ったのは、経営陣の判断ミスと言わざるを得ない。

 ではどうするか? ホンダにとって死活的に重要な北米は、HEVの強化などしかるべき手を打っているのでそれほど心配はない。

 「軽しか売れない」と言われて久しい日本も、ホンダファンはしびれを切らしているが業績は横ばい。

 ただ、最もヤバイのは中国およびアジア市場。

 中国ではまさにボコボコで、ピークの2020年から100万台以上減らして64.6万台。タイ、マレーシア、インドネシアでも中国勢に相当食われている。

 先日の電動化戦略見直し会見で、三部社長は「インドを日本・米国と並ぶ重点市場に指定する」と述べたが、2年や3年で攻略できる国ではない。ホンダ復活に近道はない。スズキを見習って泥臭い長期戦を耐え抜く覚悟が必要だね。

また極端に振れたのか! というホンダらしさ(松田秀士)

モビリティショーで方針転換を表明すべきだった(桃田健史), トップで戦えるBEVの技術力などに欠いていた(井元康一郎), 北米偏重の電動化戦略は経営陣の判断ミス(鈴木直也), また極端に振れたのか! というホンダらしさ(松田秀士), デザイン、商品力、開発スピードなどが問題(山本シンヤ), 幸い何をしでかそうとホンダは愛されている(西川 淳), BEV&FCV全フリを決断できたことが謎(小沢コージ)

北米生産の0シリーズとともに開発・販売が中止となったBEVのアキュラ RSX

●ホンダの決断への評価:★★☆☆☆

 2021年の脱エンジン宣言は株価対策が込められているなと感じていた。ホンダは新発明/新開発技術を公表し、しかしいつまでたっても実用化されないままお蔵入り、というパターンをいくつも見てきたからだ。

 もともとエンジンのホンダでしょ! 対サプライヤーを含めて、脱エンジン宣言でいいのかよ!? ともね。

 いま、やっと目が覚めたか! というよりも、それにしてもまた思い切った改革だよね。せっかく開発したBEV3車種はお蔵入り。さらにソニーとのアフィーラの開発も中止。

 この思い切りのよさ、というか、右か左か? ONかOFFか? という社風。

 今回も逆に、それでいいの? ともね。もう少し優柔不断でもよいのでは、と。

 いずれBEVは必要になるわけで、もちろん完全にやめてしまうわけではないのだが、巨額損失を大々的に発表して「あれもこれもBEVのせい」のように振る舞うのは伝統ある日本の企業としてあまりにも懐が浅い。

 本田宗一郎さんは極楽浄土でどう思っているだろう? 生きてたらメガトン級の雷を落とすだろうね。

 S2000、S660、ホンダe。魅力あるクルマが年を追うごとに姿を消し、そして今回も。F1をやってる場合じゃないよ。

デザイン、商品力、開発スピードなどが問題(山本シンヤ)

モビリティショーで方針転換を表明すべきだった(桃田健史), トップで戦えるBEVの技術力などに欠いていた(井元康一郎), 北米偏重の電動化戦略は経営陣の判断ミス(鈴木直也), また極端に振れたのか! というホンダらしさ(松田秀士), デザイン、商品力、開発スピードなどが問題(山本シンヤ), 幸い何をしでかそうとホンダは愛されている(西川 淳), BEV&FCV全フリを決断できたことが謎(小沢コージ)

シリーズのフラッグシップとして計画されていたホンダ 0 サルーンも開発中止

●ホンダの決断への評価:★★★★☆

 新聞・経済紙は0サルーン/SUVの発売中止を「BEVの問題」にしていますが、筆者はデザインや商品力、そして開発スピードなどに問題があったと分析しています。

 電動化はどの自動車メーカーもやっていく必要があることですが、現在(=過渡期)は儲けられる“術”もないと事業は続けられません。

 多くのメーカーはBEVとHEVで共用できるマルチプラットフォームを使用していますが、ホンダは技術オリエンテッドかつ独自性にこだわり過ぎたのでしょう。

 さらにホンダの将来戦略を正確に伝えられなかったのも原因のひとつです。

 2021年に「BEV/FCEVの販売比率を2040年に100%」と発表しましたが、質疑応答では「特定技術(=電動化)に対して決め打ちでシナリオを描かない」、「いろいろな技術に対して可能性を残しておくべきだと思う」と。筆者は今でもこれこそがホンダの“本心”だと思っています。

 確かに“軌道修正”に若干時間を要し、資金的にも猛烈な痛みを伴っていますが、中長期的に考えれば一旦リセットで仕切り直しでしょう。今は「高い勉強代」と割り切るべき。そして、今後のホンダは何を目標にするのか? 気になる所です。

 個人的には0サルーン/SUVで培った技術・ノウハウが無駄になることだけは避けてほしいです。願わくばこれらに搭載可能な超小型・超高効率な新エンジンを開発、PHEVもしくはレンジエクステンダーEVとして復活させてほしい。

幸い何をしでかそうとホンダは愛されている(西川 淳)

モビリティショーで方針転換を表明すべきだった(桃田健史), トップで戦えるBEVの技術力などに欠いていた(井元康一郎), 北米偏重の電動化戦略は経営陣の判断ミス(鈴木直也), また極端に振れたのか! というホンダらしさ(松田秀士), デザイン、商品力、開発スピードなどが問題(山本シンヤ), 幸い何をしでかそうとホンダは愛されている(西川 淳), BEV&FCV全フリを決断できたことが謎(小沢コージ)

2025年5月にホンダは2030年度のBEV販売台数の比率を引き下げるなどの軌道修正を公表していた

●ホンダの決断への評価:★★☆☆☆

 結果論としては問題ない。ただ最初からボタンの掛け違いがあったし、臨機応変さも必要だった。一方で、脱エンジン宣言に代表される威勢のよさもまた“ホンダ”らしさ。そういう個性がなければホンダの存在意義が薄まることもまた事実。

 ホンダという会社は世間の抱くイメージと微妙に違うんじゃないか、と思っている。以前、とあるサプライヤーの社長が「ホンダさんって石橋を叩いても渡らないんだよね」と言っていたことを思い出した。

 内実もイメージとは異なる。投資家からは四輪事業を廃せばホンダの未来は明るいとさえ言われるほどだ。生き残るためにはよくある話。

 でも、そうなればもはや本田宗一郎の興したホンダではなくなる。儲けまくる企業になるのか、社会的に存在意義のある会社として生き残るのか。今回の決断は、まずは後者だろう。

 そんなわけで、歴史的にみても時にファンを落胆させる一方で、時に大逆転劇でファンを喜ばせてきた。それがホンダだ。

 折しも鈴鹿ではアストンマーティンホンダが予想外の初完走を果たしている。アロンソの忍ドラに感動しつつ、これでまたドン尻から頂点を目指してくれるという期待をホンダファンは抱いたに違いない。

 幸い何をしでかそうとホンダはまだ愛されている。引き続きBEV(とSDV)の開発もしっかり続けてほしい。ゼロもアフィーラも最大の敗因は“遅すぎたこと”。石橋を叩く人に拙速を求めることは難しいだろうけど。

BEV&FCV全フリを決断できたことが謎(小沢コージ)

モビリティショーで方針転換を表明すべきだった(桃田健史), トップで戦えるBEVの技術力などに欠いていた(井元康一郎), 北米偏重の電動化戦略は経営陣の判断ミス(鈴木直也), また極端に振れたのか! というホンダらしさ(松田秀士), デザイン、商品力、開発スピードなどが問題(山本シンヤ), 幸い何をしでかそうとホンダは愛されている(西川 淳), BEV&FCV全フリを決断できたことが謎(小沢コージ)

2024年に北米に投入したBEVのプロローグも生産終了の可能性ありか?

●ホンダの決断への評価:★★☆☆☆

 「そもそも2021年、ホンダはなぜ2040年のBEV&FCV全フリ」を決断できたのか? が最大の謎。

 テスラバカ売れだったがEV材料のレアアースは高騰、コロナ禍の半導体不足も出始め、そうでなくとも中国有利なEVシフト。ホンダが中国産レアアース半分でほかと同等の電池を作れない限り、EVシフトバカ勝ち&高利益率はないだろう。

 少なくとも5年先も読めないこの時代に(トランプ就任にしろ完璧に読めない)19年先の予言なんて無謀すぎ。表向きEVシフト! と言っといては主要エンジンサプライヤーは売らないぐらいの二枚舌は当然。その後もやめ時はあった。

 少なくともトランプ就任直後の2025年1月「2030年までに北米新車販売の50%をEVに」の即時撤廃や7月の最大7500ドルのEV購入税額控除廃止で、ああ北米でBEV売れなくなる! 儲からない! は予想できたはず。

 だから2025年末にフォードは最大3兆円の損失を見込んでBEV版F150トラック生産終了ほかを決断した。そこから約3カ月、ホンダはなぜ粘ったのと。

 もちろん損切りは難しく、誰も塩漬け株は持っている。しかし「遅い」と言われて反論できないのでは。ソニーアフィーラも北米スタジオ公開の4日後に「発売停止」だなんてねぇ……。