大河&CM降板も「永野芽郁の完全終了」はないワケ

ベッキーの「ゲス不倫」とは異なる点も, 不倫を“プライベートな問題”として片づけてよいのか?, 違約金が発生するのかは微妙, 過去の“不倫タレント”はどうなった?, 俳優として「終わってしまう」のか, 今後のキャリアを潰してしまうほどの行為か?

サントリー「トリス」のCMも取り下げになってしまった永野芽郁(画像:永野芽郁公式Instagramより)

俳優の田中圭さん、永野芽郁さんが『週刊文春』による不倫報道がきっかけとなり、2人が出演するCMが削除されるというドミノ現象が起こっている。

【画像】永野芽郁がアップしていた「2人のショット」と、削除されてしまった「田中圭の皮肉すぎるCM」

5月18日の時点で、永野さんを広告に起用している11社中の10社がサイトからCM動画を削除するに至っている。田中さんのほうは、3社中の2社でサイト上から情報が削除された。

 

大半の企業がCMを取り下げている一方で、永野さんの主演映画『かくかくしかじか』は予定通り公開されている。

依然として、当事者と所属事務所は不倫を認めていないが、どうしてこのようなドミノ現象が起きてしまったのだろうか。イメージが失墜した2人は、今後CMへの復帰は可能なのか。ドラマや映画などの俳優活動にはどのように影響していくのだろうか。

ベッキーの「ゲス不倫」とは異なる点も

今回の件とよく比較されるのが、2016年に発覚したタレントのベッキーさんと、音楽グループ「ゲスの極み乙女」のボーカルの川谷絵音さんの不倫騒動だ。この件をきっかけに、「ゲス不倫」という言葉が流行語となるに至った。

こちらのケースでも、『週刊文春』から報道された直後は、ベッキーさんも不倫を否定したが、当事者間のLINEのやり取りが続報で公開され、噓をついていたことが露呈。ベッキーさんが出演するCMの撤退ドミノが起こった。

報道の状況が似ているだけではない。ベッキーさんも永野さんも「清純派」として売ってきて多くのCMに起用されていた点、不倫報道でそのイメージが崩れたことでドミノ現象が起きたという点でも共通している。

ただし、異なっている点もある。1つは、今回のほうが取り下げまでに時間を要している点だ。

永野さん、田中さんの最初の不倫報道が出たのが、4月24日発売の『週刊文春』。第1報後、多くの企業はしばらく様子見を続けていたが、永野さんに関しては5月1日にコンタクトレンズ専門店アイシティのコンテンツや写真が、田中さんについてはキッコーマンの公式サイトからCM動画が削除された。

5月8日発売の『週刊文春』の第2弾では、当事者2人のLINEのやりとりが公開された。

これを受けてか、5月13日以降にサントリー(ハイボール)、モスフードサービス、三菱重工業、NTTコミュニケーションズ、クラシエ、SK-Ⅱ(P&G)が、各社のサイトから動画や画像を削除している。

第1報からここに至るまでに、1カ月程度を要している。

ベッキーの「ゲス不倫」とは異なる点も, 不倫を“プライベートな問題”として片づけてよいのか?, 違約金が発生するのかは微妙, 過去の“不倫タレント”はどうなった?, 俳優として「終わってしまう」のか, 今後のキャリアを潰してしまうほどの行為か?

2月に「トリス」の新アンバサダーに就任したばかりだった(画像:永野芽郁マネージャー公式アカウントより)

ベッキーの「ゲス不倫」とは異なる点も, 不倫を“プライベートな問題”として片づけてよいのか?, 違約金が発生するのかは微妙, 過去の“不倫タレント”はどうなった?, 俳優として「終わってしまう」のか, 今後のキャリアを潰してしまうほどの行為か?

2024年からキッコーマンのCMキャラクターに起用されていた田中圭。同社は起用理由を「商品コンセプトを表現するのに最適なCMキャラクターとして、明るく親しみやすい人柄で、おいしそうに食事をする姿が魅力的」と説明していた(画像:キッコーマン公式Xより)

不倫を“プライベートな問題”として片づけてよいのか?

もう1点、今回特徴的なのは、大手企業の対応が後手に回っている点だ。

香川照之さんの性加害問題の際は、トヨタ自動車が最初に撤退を決定し、他社がそれに続いてドミノ現象が起きた。

故ジャニー喜多川さんの性加害問題においても、ジャニーズ事務所が記者会見で性加害の事実を認めた直後に、東京海上日動とJALが契約終了の声明を出し、それが呼び水となって契約終了ラッシュが起きた。

中居正広さんとフジテレビの問題の際も、最初にCM放映を見合わせたのは、トヨタ自動車や日本生命などのコンプライアンスに厳しい超大手の企業だ。

しかし、今回については、大手企業の意思決定に時間がかかり、結果としてCM削除の流れも遅くなってしまったというのが特徴だ。

今回の不倫疑惑によるCM継続有無の判断が難しかったのは、下記の2点による。

1.不倫という行為の問題の深刻度

2.当事者も、当事者の所属事務所も不倫行為を否定している

刑法に触れるような犯罪行為や、被害者がいるような事案であれば、契約解除となるのが既定路線だ。しかし、不倫の場合は判断が難しい。配偶者が被害者とも言えるが、あくまでもプライベートな事案であり、第三者が介入するのは適切なのか――という意見もある。

お笑いタレントのおぎやはぎや粗品さん、ミュージシャン・俳優のGACKTさん、編集者の箕輪厚介さんなどは、永野さんと田中さんを擁護したり、行きすぎた報道を批判したりしている。

さらに、今回の事案は依然として疑惑レベルにとどまっている。週刊誌で報道された永野さんと田中さんの間のLINEのやり取りもスクリーンショットなどはなく、テキストの起こしのみだ。ベッキーさんと川谷さんのときにはスクショが掲載されたが、それに比べると決定的な証拠に欠けている。

だからこそ、CMを削除した企業も、削除理由の説明を避けたり、曖昧な説明にとどめたりしているのだろう。

違約金が発生するのかは微妙

ベッキーさんのケースでは、流出したLINEのやり取りが公開されて一気にCM撤退ドミノが起きた。それは、教育事業を行うナガセや、NKSJひまわり生命(現SOMPOひまわり生命)のような不祥事に厳しい企業がベッキーさんを起用していたことも大きい。

一方で、世の中の不倫に対する風当たりは強い。スポンサー企業も、イメージアップのためにタレントを起用している。たとえ私生活のトラブルであったとしても、イメージダウンにつながる行為を行ったタレントの広告を取り下げることはやむをえないことだ。

永野さんには多額の違約金が発生するのではないか――という報道もあるが、現時点では契約が打ち切られたという報道はないので、違約金が発生するかどうかは定かではない。

芸能事務所とスポンサー企業は持ちつ持たれつの関係でもあるので、スポンサー企業が契約を打ち切っても、額面通りの違約金を請求するとも限らない。

ただ、スポンサー企業も広告会社も、イメージが悪くなったタレントを積極的には使いたくはない。CMの取り下げや撮り直しには、多大な人的、金銭的な負担がかかる。当分の間、永野さんも田中さんも、CMへの起用はないことは間違いないだろう。

過去の“不倫タレント”はどうなった?

これから永野さん、田中さんの行く末はどうなるのだろうか? 過去の事例を見ていこう。

2013年5月に不倫が報じられたタレントの矢口真里さんは、レギュラー番組と出演CMすべてが打ち切られ、1年5カ月にわたる活動休止に追い込まれる結果となった。

その後、日清食品は2016年3月、「OBAKA ‘s UNIVERSITY」というカップヌードルのCMシリーズに矢口真里さんを「危機管理の権威」として出演させた。しかしながら、「不倫を擁護するのか」、「不倫を軽く扱っている」といった激しい批判を受け、炎上状態になった。最終的に、矢口真里さんは本CMから降板となってしまった。

この例からも、一度付いてしまった不倫のイメージはなかなか払拭できないことがわかる。

その後、矢口さんは結婚、出産と経て、「ママタレント」として活動は継続したが、全盛期のような活躍だとは言いがたい。

先述のベッキーさんに関しては、不倫報道から1年弱後にはCM復帰を果たしたものの、当時のような人気が戻ることもなく、CMだけでなく、芸能活動においても、「完全復活」とはならなかった。

ベッキーさんは、「ミックス女優」「清純派」という点が売りだったが、活動休止中にそのポジションをほかのタレントに取られてしまったことも大きかった。だからと言って、新たなポジションを築くまでには至らなかったようだ。

ベッキーの「ゲス不倫」とは異なる点も, 不倫を“プライベートな問題”として片づけてよいのか?, 違約金が発生するのかは微妙, 過去の“不倫タレント”はどうなった?, 俳優として「終わってしまう」のか, 今後のキャリアを潰してしまうほどの行為か?

現在、2児の母となり、「ママタレ」としても活動するベッキー(画像:本人の公式Instagramより)

一方の川谷絵音さんは、その後も配偶者と離婚、新恋人の発覚、未成年の恋人との飲酒行為などのスキャンダルが続いた。2016年12月に活動を休止したが、翌2017年5月には早々に再開している。イメージダウンは免れず、勢いにブレーキがかかった感はあるが、現在でも音楽活動は続けている。

川谷さんの場合は、タレントではなくミュージシャンだったこと、音楽性が高く評価されていたこと、男性であったことで、ダメージが最小限に抑えられていたこともある。残念ながら不倫騒動の場合、現代であっても女性のほうが風当たりが強い。

しかし女優だからと言って、必ずしも不倫で干されてしまうわけではない。斉藤由貴さんは、何度も不倫報道がなされており、NHKの大河ドラマが降板になったこともあるが、芸能活動は現在も続いている。

俳優として「終わってしまう」のか

永野さん、田中さんはCMを降ろされてしまったが、俳優としての活動はどうなるだろう?

5月16日、永野さんが主演する映画『かくかくしかじか』が公開されたが、同日に東京「丸の内ピカデリー」で舞台挨拶が行われた。この舞台挨拶は、報道陣を入れず、一般客のみが参加するという異例の対応が取られた。

この点の是非についても、物議をかもし、締め出されたメディアは批判的な論陣を張った。

報道陣を入れたら入れたで、不倫問題が蒸し返されることになり、「映画のプロモーション」という目的が崩れてしまいかねなかっただろう。

不倫を公式的には否定している状況で、ボロが出てしまうと、永野さんはさらなる窮地に陥りかねない。

報道陣を入れたうえで、不倫に関する質問はうまくかわして、映画のプロモーションになるような発言をすれば、ピンチをチャンスに変えることができたかもしれない。

舞台挨拶で、永野さんは涙ながらに謝罪したというが、感情のコントロールが難しい状況にありそうだ。報道陣を入れないというやり方は、最善策ではないが、次善の策であったと言えるかもしれない。

プロモーションに悪影響は出てしまったものの、レビューサイトやSNSの口コミを見ても、『かくかくしかじか』の評価は上々のようだし、永野さんの演技自体は評価されているようだ。

映画は見たい人がお金を払って見に行くものだ。

性加害行為を行った映画監督や俳優が活動できなくなったり、犯罪を起こした俳優が出演する作品がお蔵入りになってしまったりという事態は起きているが、不倫で映画やドラマに出演できないようになってしまうのは、少し行きすぎのように思える。

俳優の東出昌大さん、唐田えりかさんは、不倫によってイメージが大きくダウンし、芸能活動が大きく制限される結果となった。しかし、それぞれ新しい役柄を獲得して、映画や配信ドラマで復帰して、高い評価を得るに至っている。

タレントに対してのコンプライアンスが厳しくなっている一方で、いまはYouTubeなどの動画配信サイトもあれば、有料の映像配信サービスなどもある。タレントの活動の場は広がっている。

映画やドラマは虚構の世界を描くものであり、俳優に期待するものは演技だ。私生活は、主従でいえば従であるべきだ。

ベッキーの「ゲス不倫」とは異なる点も, 不倫を“プライベートな問題”として片づけてよいのか?, 違約金が発生するのかは微妙, 過去の“不倫タレント”はどうなった?, 俳優として「終わってしまう」のか, 今後のキャリアを潰してしまうほどの行為か?

田中圭と永野芽郁は2021年公開の映画『そして、バトンは渡された』で共演していた(画像:永野芽郁公式Instagramより)

今後のキャリアを潰してしまうほどの行為か?

5月19日、永野さんが2026年放送のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』の出演辞退を申し出たとの発表があった。視聴者数の多い公共放送のドラマであるから、やむをえないことだ。ただ、すべて降板するのが適切かどうかというと、疑問が残る。

不倫は決して褒められた行為ではないが、今後のキャリアを潰してしまうほど深刻な行為なのか――と言えば、疑問が残る。

最終的な起用の是非は、観客や視聴者が受け入れるか? ということに尽きる。CMは企業や商品のイメージが重視されるし、視聴者は、見たくなくても見てしまう機会もあるので、降板はやむをえない。

一方、見ていない人、見るつもりもない人たちの声によって映画やドラマに出演できなくなってしまうことは、公正とは言いがたいように思える。

一定の寛容さを備えておくほうが、むしろこの社会は健全であると筆者は考えている。