高市首相の独自話法、「高い説明能力に好感」の一方、論点ずらしや責任転嫁の危険も 専門家の分析は…「軌道修正や謝罪が苦手」

衆院予算委で答弁する高市首相=2月27日
「なんか意地悪やな。最初からできへんと決めつけんといてください」。衆院選投開票を受けた2月8日の民放番組。高市早苗首相は、お笑いコンビ「爆笑問題」の太田光氏に対し、関西弁で気色ばんでみせた。
自民党が公約に掲げた「2年限定の飲食料品消費税ゼロ」が実現できなかった場合の責任をただした太田氏に対し、SNS上では「首相に失礼だ」と批判的なコメントが目立った。
昨年10月の政権発足から半年以上が経過してもなお、高い内閣支持率を維持する高市首相。独特の言葉は時に「刺さる言葉」と称され、多くの有権者から支持されていることをうかがわせる。一方で、質問に正面から答えず、論点をずらして切り返す場面や責任を相手に転嫁するかのような姿勢も散見され、独自の話法には危うさも付きまとう。就任以降、高市首相が使ってきた言葉の特徴に着目した。(共同通信=伊藤綜一郎)

ホワイトハウスで会談する高市早苗首相(左)とトランプ米大統領=3月19日、ワシントン(共同)
▽徹夜して考えた
今年3月の日米首脳会談は、中東情勢が緊迫化する中、日本にとって難しいタイミングでの開催となった。
「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだ」
日本政府が自衛隊の中東派遣を求められるのではないかと警戒を強める中、高市首相は会談冒頭でトランプ大統領をこう評価し、会談を何とか乗り切った。だが、この発言は後に波紋を呼ぶ。
野党からは批判が噴出した。「(首相の言葉は)必ずしも日本国民の多くを代表していない」(中道改革連合の小川淳也代表)
首相は帰国後の国会で、国際社会の平和と繁栄に向けて米国のリーダーシップ発揮を支持する考えだったと理解を求めた。「渡米する飛行機の中で徹夜して懸命に考えた」
政府関係者はこう明かす。
「首相は言葉の一つ一つに、非常にこだわりを持っている」
トランプ氏を評価する発言も、その是非はともかく、首相なりに最善策を考え抜いた末のものだったと推察される。

1月31日、川崎市で演説する自民党総裁の高市早苗首相
▽専門用語も交え解説
高市首相の話法の特徴は、全国各地で実施した先の衆院選の応援演説にも表れた。演説では政権が掲げる「責任ある積極財政」や「危機管理投資」を訴え、潜在成長率、食料安全保障やエネルギー安全保障、サイバーセキュリティーといった専門用語もちりばめながら、個別の政策について解説するのが定番だった。

三重3区で落選が決まり、頭を下げる中道改革連合の岡田克也元外相=2月9日、三重県四日市市
▽「聞かれたので答えた」
一方で論点ずらしや、責任転嫁の姿勢が言葉に表れたのが国会での答弁だ。
首相就任後に初めて臨んだ2025年11月7日の衆院予算委員会では、中国が台湾に武力で侵攻する「台湾有事」に関し、日本が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」になり得ると明言した。事務方が事前に作成した応答要領には含まれていない内容だった。この発言に中国が猛反発し、日中関係は急速に悪化。政権発足後、最初のつまずきとなった。
野党は発言を批判したが、首相は11月26日の党首討論でこう説明した。
「具体的な事例を挙げて聞かれたので、その範囲で誠実に答えたつもりだ」
台湾有事の答弁の質問者で、立憲民主党(当時)の岡田克也元外相に責任を転嫁しているとも取れるような姿勢だった。
一連の経緯を巡り、SNS上では岡田氏を「中国のスパイ」などとやゆする中傷が相次いだ。今年2月の衆院選で落選した岡田氏は、そうした中傷が選挙結果に「一定の影響があったのではないか」と述べている。
冒頭に紹介した太田氏と首相のやりとりも、首相が飲食料品の消費税ゼロについて「検討を加速する」との説明にとどめていたため、その実現性について繰り返し質問した太田氏の側が批判される事態となった。高い内閣支持率も要因の一つだとみられるが、こうした事態が首相への質問の萎縮を招きかねないとの懸念は残る。

参院予算委で当時の高市経済安保相(右端)に発言する末松委員長(左端)=2023年3月20日
▽もう質問しないで
首相が釈明に追い込まれることもある。11月26日の党首討論では、他にも首相らしい発言があった。立民の野田佳彦代表(当時)から自民が後ろ向きな企業・団体献金の規制強化を求められると「そんなことよりも、ぜひ定数削減をやろう」と論点をずらした。
12月3日の参院本会議で、この発言が政治資金問題を軽視していると追及されると釈明している。
「討論の残り時間がなくなる寸前の時、急いで話題を転換する際に申し上げた」
首相就任以前の国会答弁にも、今に通じるような姿勢が垣間見えるケースがある。岸田政権で経済安全保障担当相を務めていた2023年3月、放送法に関する総務省の行政文書を巡り、かつての安倍政権下で総務相だった高市氏は国会で追及を受けていた。
そこで質問に立った立民の杉尾秀哉参院議員に対し、高市氏は「私の答弁が信用できないなら、もう質問しないでほしい」と発言。高市氏と同じ自民党の末松信介参院予算委員長(当時)から後に厳しく注意される異例の事態となった。
「敬愛の精神を忘れている。閣僚が議員の質問権を否定するのは大きな間違いだ。表現として全く適切でない」
首相は発言を撤回したものの、謝罪要求には応じなかった。

衆院予算委で答弁する高市首相=2025年11月7日
▽Xにも多くの「支持」
高市首相が力を入れるX(旧ツイッター)での発信にも首相らしさがにじむ。連日の投稿には数万件の「リポスト(転載)」や「いいね」がつき、返信も数百から数千件に上る。その返信で首相の言葉への「支持」が可視化されているという側面もある。
衆院選期間中の1月31日、首相は川崎市での応援演説でこんな発言をした。
「外国為替資金特別会計(外為特会)の運用もホクホク状態だ」
この発言はその日のうちに報道され、円安が物価高を招くデメリットには触れていなかったことなどから批判を浴びた。
これに対し、首相は翌2月1日のXで釈明。「為替変動にも強い経済構造をつくりたいとの趣旨だ。円安メリットを強調したわけではない」
「一部報道機関で誤解があるようだ」とも言い添えた。この投稿への返信には、首相を擁護する言葉が並んだ。「メディアの悪意ある切り取りに怒りを感じる」「報道機関は首相をおとしめることばかりしている」
衆院選後の2月13日、首相は衆院選中に痛めた手の検査を東京都内の病院で受けた。翌14日のXにはこんな投稿。
「昨秋以降、日々の動向(訪問先)が報道されることから、病院に迷惑をかけたくなくて、定期的な検査を避けていた。これからは必要な時には堂々と受診する」
これには健康状態を気遣う内容の返信が相次いだ。
▽本質から目をそらせる危険も
衆院選後には、自民所属衆院議員315人に1人当たり約3万円のカタログギフトを配布したことが報じられ、問題視された。2月27日の衆院予算委員会で、中道の小川代表は追及した。
「合計1千万円は国民の金銭感覚からかけ離れた行為だ」
首相は食事会を開く代わりにねぎらいの気持ちを示す意図だったと説明したが、小川氏の質問への明確な回答は避け「昭和の中小企業のおやじ社長みたいなところが私にはある」「飯会、苦手な女だ」とけむに巻いた。
小川氏は後日の予算委で「うまく切り抜けられた」と述べた一方で指摘も。「問われたのは政治家の金銭感覚、古い自民党の体質だった。それなのに性別や属性で回収するのは説明責任を曖昧にし、問題の本質から目をそらせる危険がある」
▽軌道修正や謝罪は苦手
政治家の言葉を研究している米ユタ大の東照二教授(社会言語学)は、この高市首相の話法をこう分析している。
「非常に論理的で政策などの説明能力が高い。分かりやすく話すことで好感を持たれ、高い内閣支持率を維持することができている」
一方で、発言の中には開き直りと捉えられるものもあるとして「多くの国民の納得は必ずしも得られていない」との見方だ。「高市氏は人並み外れた努力家で、軌道修正や謝罪が苦手だ。悪く言えば独善的な要素を持っている」とも分析。 「話題をずらして別のところへ持っていき、自分のテリトリーの中で話をしようとする傾向がある」と指摘した上で、「中小企業のおやじ社長」の発言については苦言を呈した。
「結局、どれくらい反省しているのかが見えない」
私自身、高市首相の「総理番」として、首相の話しぶりに日々触れている。笑顔を交えながら時に率直で、時にユーモアや関西弁も織り交ぜながら発する言葉には、親しみやすさを感じる時もある。逆に言えば、それだけに言葉の裏に潜む意図に十分な注意が必要だとも思う。高い内閣支持率に臆せず、首相にとって都合が悪いことであっても質問を投げかけ続けることが大切だ。