“シュシュ女”イベントの「はがし」物議...ファンと推しの適切な距離は?柏木由紀「あいさつは最低3秒は必要」

“シュシュ女”イベントの「はがし」物議...ファンと推しの適切な距離は?柏木由紀「あいさつは最低3秒は必要」
千葉・幕張メッセで行われたK-POPイベントが、物議を醸している。Xでは「はがし」と呼ばれるスタッフが、ファンの女性たちを少し強引とも思える方法で誘導する様子が拡散された。
アーティストの目の前で、あいさつや応援ができる「お見送り会」だったため、「進行が速すぎ。ファンをなめている」「客の体に不用意に触れるのは違う」などの不満が出た。
参加者によると、10分程度を予定していた「お見送り会」だったが、約500人が参加し、あいさつの時間は限られていたという。ネット上では“はがし”の女性スタッフの一人が特定され、誹謗中傷も起きている。
そもそも“はがし”は、アイドルやタレントの握手会などで、指定の時間以上、その場に居座るファンを引き剥がし、次の順番に回すことを言う。しかし方法や対応をめぐっては、トラブルになることも。
今回の騒動を受けて、運営側は「スタッフ教育や運営プロセスの強化に努める」と謝罪した。『ABEMA Prime』では、アーティストとファンどちらも納得できる“はがし”について、当事者とともに考えた。
■はがされ経験者「普通だな。炎上したことが逆にびっくり」

はがしのメリットには、公平なサービス、スムーズな進行、演者の負担軽減などがある。反対にデメリットとして、強引に進行されるとファンの不満がたまる、トラブルが起きると演者のイメージまで悪くなるなどが挙げられる。
今回話題になっている「お見送り会」の参加者に取材したところ、実質的にフェス1日券(約3万円)と「お見送り会」の券(約9000円)の購入が必要だったという。HPの説明では「最も近い距離で1:1で直接挨拶」となっていたが、実際には約500人の参加者に対し、10分弱程度(=1人当たり1.2秒程度)だった。また、アーティスト登場と同時にはがし始められ、身体を触られ続けるなど、過去イベントと比べても激しい対応で「スケジュール設定にかなり無理があると感じた」そうだ。
かつて男性YouTuberの接触型イベントに多数参加し、はがしの対応に怒りを覚えたことがあるミユさんは、「私が行っていた現場は、結構はがしがスゴかった。だから今回の映像を見たときは、『こういう現場なんだな』と普通に感じ、炎上したことに逆に驚いた」と語る。

自身が通っていた男性YouTuberの「お見送り会」では、「はがしのスタッフが大声で残り秒数を唱えていて、演者の言葉が聞こえなかった。はがしに押されて転んだファンもいて、助けに行くのかなと思いきや、『そこ通路なんで、どいてもらえますか』と言っていた。はがしの早さや、スタッフの大声で、何も話せなかったファンが会場の外で泣いていた」と振り返る。
元AKB48の柏木由紀は「はがしの声で聞こえないのは、“あるある”だ。私は『もう少し小さい声で』と言えたが、思っていても言えないアイドルもいる。でも仕事として、はがしを一生懸命やっている気持ちもわかるから難しい」と、アイドル側の視点からコメントする。
■はがしスタッフの実態

では、はがす側の考え方はどうだろう。かつて多くのアイドルイベントで、はがしスタッフを務めた井川るいさんが、実情を語る。「大手レコード会社に勤務していたときに、はがしやセキュリティーを担当した。当時のアイドルファンには、本当に離れようとしない人もいた。腕がパンパンになるぐらい全力で押さないと、回っていかないような状況だった」。
せかさないといけない事情として、「会場を借りるにあたって、撤収時間が決まっている。何時までに握手会を終えないといけないとなると、客と演者の人数から、1人あたまの時間はおおよそ決まる」ことがあるとして、今回話題のイベントは「スケジュール設定に無理があった」と推測する。
柏木は、イベントの性質に着目する。「“握手会”は握手だけで数秒使う。でも、今回のような“お見送り会”は、明確に秒数が示されていない。現場によって、10秒だったり、1秒だったりと基準がないため、『あのグループは時間あったのに』となってしまう」。
■柏木由紀「あいさつは最低3秒は必要」

NO YOUTH NO JAPAN代表理事の能條桃子氏は、「ビジネスの中で競争させられている部分もある。9000円のお見送り会に500人参加して、10分間で450万円を生み出した。会場費も人件費もあると思うが、かなりの金額だ。気持ちを搾取するのはどうかと思うが、ファンの倫理観ばかりが話題になる」と話す。
文筆家で情報キュレーターの佐々木俊尚氏は「『搾取だ』と言うこともできるが、お金を積むことは悪いことではない。運営側の問題は、お金を払っている側を『自分はファンコミュニティーに参加している』という気持ちにできるかだ。アーティストも運営側もファンも入ったコミュニティーで、みんなで支えている感覚が生み出せないと文句が出るのではないか」。
芸人のケンドーコバヤシは「演者側は共通して『ファンは演者の鏡』と言われる。ファンにもその言葉が伝われば、ずいぶんと変わる可能性がある。我々がルール違反すれば、ファンもそういう人だと思われる」と述べた。
名古屋短期大学の助教で、男性アイドル研究家の小埜功貴氏は、「“遠さの価値”追求を」と考える。現代のアイドルは以前と比べると距離が近づいたが、本来は「手が届かない」存在がスターだったとして、「遠いなりの楽しみ方」の価値も高めるべきだと説いた。
柏木はアイドル側の葛藤として、「『会いに行ける』を始めたら、もうやめられない。やめた時点でマイナスになる。接触なしでも、とんでもなく売れるアイドルが出てくれば、変わってくると思う」と明かす。
その上で、経験則から「直接あいさつするには、最低3秒は必要だ」と話す。「コンサートは遠くから見るだけで幸せだが、お見送り会は目と目が直接合って、好きな人に自分のことを認識してもらうのが目標だ。1秒では目が合わず、『意味なかった』と思ってしまう」。
(『ABEMA Prime』より)
【映像】「ほんとリアル」握手会の“はがし”を完全再現する柏木由紀
【画像】男性YouTuber「お見送り会」の様子
【映像】“アイドルとファン”の距離感について語る柏木由紀