意味のある仕事をしたいのに、何かが満たされない──「やりがい」を問い直すための3冊

仕事の"意味"を見失いそうなあなたへ, やりがいを見つけるための3冊, 『ブルシット・ジョブ』(デヴィッド・グレーバー), 『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健), 『「生きがい」と出会うために』(若松英輔), 効率化の先に、「つながり」はあるか?, 働くことの新しい物語を描く, 意味のある仕事は、"問い続ける"営み

意味のある仕事をしたいのに、何かが満たされない──「やりがい」を問い直すための3冊

仕事の"意味"を見失いそうなあなたへ, やりがいを見つけるための3冊, 『ブルシット・ジョブ』(デヴィッド・グレーバー), 『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健), 『「生きがい」と出会うために』(若松英輔), 効率化の先に、「つながり」はあるか?, 働くことの新しい物語を描く, 意味のある仕事は、"問い続ける"営み

「お母さん、どうやって人を採用してたの?」

ある日、就活に悩む留学生の娘(注)にそう聞かれて、はっと立ち止まりました。

BCG時代もGE時代も、最終的に私が採用の決め手にしていたのは、いつも同じでした。

「この人と雪山で遭難しても、一緒に楽しく過ごせそうか?」

実はこう考えるようになったのは、私がBCGでもGEでも「秋山を採用したのは、雪山で遭難しても楽しく過ごせそうだと思ったから」と言われたことがきっかけです。

どれだけ優秀で、肩書きが立派でも、「この人と未来を一緒に作りたい」と思えなければ、組織は回らないし、仕事はうまくいかない。そしてそれは、働く意味や"やりがい"にも直結していると、私は思っています。

(注)留学生の日本のお母さんをするボランティア活動をしていて、現在3人の留学生の息子・娘がいます。

仕事の"意味"を見失いそうなあなたへ

「今の仕事に、意味を感じられない」「やりがいって、どこにあるんだろう?」そんな風に思ったことはありませんか?

目標に向かって頑張っているのに、数字を達成しても、なぜか空虚。周囲の期待には応えているつもりなのに、「これが私の人生?」と立ち止まってしまう。

私自身、そんな時期がありました。インテル時代、与えられたプロジェクトをこなしながらも、「この技術は本当に誰かの役に立つのだろうか?」と思い悩んでいた時期。

そんな時こそ必要なのは、「私は誰と働きたいのか?」「どんな未来を一緒に描きたいのか?」という問いです。

やりがいを見つけるための3冊

今回は、私が先週NewsPicks「今日の本屋さん」でリストした3冊、「目標や成果だけでは満たされない。「働く意味」に向き合いたい人へ贈る3冊。」、を自分の軸で問い直すため方法をご紹介します。

『ブルシット・ジョブ』(デヴィッド・グレーバー)

「この仕事、誰の役にも立ってないかもしれない」

そんな感覚に心当たりがある人には、ぜひ読んでほしい一冊。

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Amazon.co.jpより

グレーバーは、官僚的な手続き、無意味な会議、自己満足な資料作成など、"やっているフリ"が評価される現代の仕事の病理を、「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」と名付けて、容赦なく切り込みます。

でもこの本の本質は、批判ではなく問いかけです。「意味のある仕事は、与えられるものではなく、自分で問い続けるものだ」と。

BCG時代、私は「この戦略提案は、誰のためになっているのか?」と悩んだことが何度もありました。答えを出すことが目的化され、その答えがどう使われるかが見えなくなると、やりがいはどんどん遠のいていく。

「役に立っているように"見せる"仕事」から脱却するには、自分の仕事の"手触り"を、もう一度取り戻すことが必要なんです。

意味のない手続きや形式的な業務に埋もれそうになった時、私たちは自分に問いかける必要があります。「この仕事は、誰の明日を少しでも良くするだろうか?」「この作業の向こうに、笑顔になる人の顔が見えるだろうか?」

『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健)

「他人の期待を生きるのは、もうやめよう」

この一言が、どれだけ私を楽にしてくれたか。

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『嫌われる勇気』は、アドラー心理学をもとに、"自分の軸で生きる勇気"を与えてくれる本です。

GE時代、私は「こうあるべき」という期待の中でがんじがらめになっていた時期がありました。「管理職らしく」「男社会でも通用するように」「女性としても完璧に」──疲れ果てるのは当然ですよね。

そんなときに救いになったのが、アドラーの「課題の分離」。

他人の評価は他人の課題。自分が信じることに集中するのが、自分の課題。

私がアフリカで水処理施設の事業に関わったとき、どんなに大変でもやり抜けたのは、「これで女の子たちが片道1時間半かけて水を汲みに行かずにすむ、学校に通えて人生が変わる」と信じられたからでした。

上司の顔色を窺って提案を変える必要はない。同僚からの嫉妬を気にして自分を小さくする必要もない。大切なのは、「この仕事を通じて、自分は何を実現したいのか」という内なる声に耳を傾けることです。

やりがいとは、上司の言葉や会社の評価ではなく、"自分が信じる価値"との一致から生まれるのだと、教えてくれる一冊です。

『「生きがい」と出会うために』(若松英輔)

この本は、言葉のトーンがとても静か。だけど、じわっと心に染みてきます。

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神谷美恵子の生涯と哲学を通して語られる「生きがい」は、成果や効率ではなく、"他者との関係の中で必要とされること"にあると教えてくれます。

神谷美恵子は、「誰かのために、何かのために必要とされることこそが生きがい」だと考えました。彼女自身、一度は生きがいを見失いながらも、他者との関係の中でそれを再発見していった人物です。

現代社会では、個人のパフォーマンスや成果が過度に重視されがちです。「今期の売上目標」「昇進のための評価」「競合他社との比較」──そういった数字や指標に追われる毎日の中で、私たちは働くことの本質を見失いがちになります。

しかし神谷美恵子の思想は、働くことの意味をもっと根源的なところ──人と人とのつながり、相互扶助、共感──に見出すことの重要性を教えてくれます。

「やりがい」とは、何かを成し遂げることじゃなく、"誰かと分かち合う"ことの中に宿るものなんですよね。

プロジェクトの成功よりも、チームメンバーと一緒に困難を乗り越える過程にこそ、深い満足感があります。売上目標の達成よりも、お客様の「ありがとう」の一言により大きな喜びを感じることがあります。

効率化の先に、「つながり」はあるか?

私たちは今、「いかに早く成果を出すか」「いかに効率的にこなすか」にとらわれがちです。でも、その先にあるはずの"人とのつながり"が、どんどん薄れている気がします。

リモートワークが普及し、メールやチャットでのやり取りが中心になり、顔を合わせて話す機会が減る中で、働くことの「手触り」を失いつつあるのかもしれません。

でも、働くことの意味は、目の前の人だけでなく、社会の誰かの未来を変える手触りを感じられるかどうかにあります。それは必ずしも大きな社会変革である必要はありません。

同僚の負担を少し軽くする、お客様に安心を提供する、チームの士気を高める、新入社員に安心できる環境を作る──そういった小さな変化の積み重ねの中に、働くことの本質的な価値があるのです。

最近、私が効率化ばかりを追求していた自分を見直すきっかけになったのは、娘との夕食の時間でした。「家に着いたら5分で夕食を作らなきゃ」と思っていたけれど、本当に大切なのは、一緒に料理を作り、会話を楽しむ時間だったのです。

仕事も同じだと思うのです。大きな社会貢献じゃなくても、同僚の気持ちが少し軽くなる、チームがちょっと笑顔になる、そんな手触りのある行動の積み重ねこそが、やりがいの源泉なのではないでしょうか。

私がBCGで「頭貸してください」と先輩方に壁打ちをお願いしていた時間──そういう人と人とのやり取りの中にこそ、働くことの本当の喜びがありました。

働くことの新しい物語を描く

現代の職場では、「効率性」「生産性」「競争力」といった言葉が飛び交います。もちろん、これらも大切な要素です。しかし、それだけでは私たちの働く意味は満たされません。

私たちに必要なのは、働くことの新しい物語です。その物語の主人公は、ノルマを達成するヒーローでも、競合に勝利する戦士でもありません。

誰かと一緒に、小さくても確実な変化を生み出し続ける人です。

その変化は、時には失敗に終わるかもしれません。思うような成果が出ないかもしれません。でも、その過程で築かれる信頼関係、共に悩み考える時間、支え合う経験──そういったものこそが、私たちの人生を豊かにしてくれるのです。

例えば、私が新卒で採用した若手に言った言葉があります。「PMIでどろどろになっても、あなたと3週間缶詰で仕事したら楽しそうだと思った」と。これは、その人と一緒に困難を乗り越えたい、未来を創りたいと思えたからこその言葉でした。

困難な状況でも、一緒にいて楽しい人、お互いを支え合える人、未来を一緒に描ける人──そういう人と働くことができれば、どんな仕事でも意味あるものになります。

意味のある仕事は、"問い続ける"営み

この3冊は、異なる角度から同じことを語っています。

・『ブルシット・ジョブ』で社会構造に気づき、

・『嫌われる勇気』で自分の軸を持ち、

・『「生きがい」と出会うために』で他者とのつながりに意味を見出す。

やりがいとは、肩書きや報酬ではなく、「誰と、どんな未来を描きたいか」を問い続けることから生まれる。

この問いに答えはありません。むしろ、問い続けることそのものに価値があります。状況が変われば答えも変わるし、成長すれば見える景色も変わる。だからこそ、この問いを持ち続けることが大切なのです。

新卒で入った会社で、転職を考えた時に、独立を決意した時に、新しいプロジェクトを始める時に──人生の節目節目で、私はいつもこの問いに戻ってきました。

そして気づいたのは、この問いを真剣に考えるほど、目の前の仕事がより鮮やかに見えてくるということでした。同じ業務でも、同じ会議でも、その先にある人の顔が見えると、取り組む姿勢が変わります。

迷ったとき、不安になったとき、焦ったとき。立ち返るべきは、いつもこの問いなのだと思います。

そしてこの問いを持ち続ける限り、私たちの仕事には、いつだって"意味"があります。

あなたは今、誰と働きたいですか?どんな未来を、誰と一緒に描きたいですか?