『あんぱん』ヒロイン・今田美桜「やっと嵩と結ばれた。そばで見守ることができてうれしい。河合優実ちゃんと原菜乃華ちゃん以外に朝田三姉妹は考えられないです」

今田美桜さんがヒロインを務める連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合/毎週月曜~土曜8時ほか)。子どもたちの人気者・アンパンマンを生み出したやなせたかしさんと、妻・暢さんの夫婦をモデルとした物語です。<朝田のぶ>を今田さん、<柳井嵩>を北村匠海さんが演じています。物語も後半に入り、のぶは上京し、代議士・薪鉄子のもとで働くようになりました。西日本を襲った地震をきっかけに、ついにお互いの思いを確かめあったのぶと嵩。これから、アンパンマン誕生への道のりが本格的に描かれていきます。物語の後半に向け、今田さんにインタビューしました。(取材・文:婦人公論.jp編集部)

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【写真】のぶを大きな愛で包んでくれた次郎さん

「のぶらしさ」を思い出させてくれた次郎

昨年9月に高知でクランクインして、これまで撮影を重ねてきました。これほど役と一緒に悩んだり、涙したりする経験はありません。役としての感情なのか自分なのかわからないぐらい、のぶとして生きてきているんだという感覚になりました。自分の財産ですし、こんな経験はもう二度とできないと思っています。

<物語の前半では戦争に向かう社会の空気が丁寧に描かれた。のぶは女子師範学校で愛国教育を受け、家族同然だった石工の豪の戦死もあり、「愛国の鑑」と呼ばれるように。朝ドラヒロインが軍国少女となる異例の展開を見せた>

のぶは、教師として「愛国の鑑であるべき」とは思っていたけれど、婚約者の豪ちゃんを戦争で失った蘭子との関係にも悩んでいました。葛藤を家族にも言えずに1人で抱えていた時に出会ったのが次郎さんです。のぶの葛藤ごと優しく包み込んでくれて、弱い部分を認めてくれたからこそ、「この人に委ねてみたい」と次郎さんとの結婚を決めたと思いました。

でも、次郎さんは戦後すぐに病気で亡くなってしまいます。次郎さん役の中島歩さんとの撮影は1週間くらいですが、次郎さんとの結婚生活でのぶは愛情をたくさん受け取りました。だからこそ、次郎さんが亡くなった後に、次郎さんが撮影してくれた写真を現像するシーンはつらかったです。受けてきた愛情を思い出して苦しくなりましたし、忘れられないシーンになりました。

「自分の目で見極め 自分の足で立ち 全力で走れ 絶望に追いつかれない速さで」という次郎さんが残してくれたメッセージはのぶにとって大事な言葉です。のぶは、幼い頃から走るのが大好きだったので、「のぶらしさ」を思い出させてくれました。これから嵩とのぶ2人で歩んでいくなかでも大事な言葉になるんじゃないかと感じています。

北村匠海のあたたかさ

<嵩は幼いころからのぶを思ってきたが、戦争中2人はすれ違いを重ね、のぶは次郎と結婚してしまった。のぶと嵩の関係性が変化するきっかけとなったのが戦後、次郎を失ったのぶと弟・千尋を戦争で亡くした嵩が焼野原で2人が再会するシーンだ>

嵩とは、戦争が終わった後、4年ぶりに焼野原で再会しました。大好きだった子どもたちを傷つけてしまい、のぶがどん底に落ちていた時です。のぶは責任感が強いので「自分は生きていていいのだろうか」と思いつめていました。だからこそ、嵩の「死んでいい命なんてひとつもない」という言葉がぐっと響いたんです。嵩はのぶの恩人という感覚でした。

(『あんぱん』/(c)NHK) 

撮影では、北村さんが「戦争に行って達観した嵩でいたい」とおっしゃっていたのを覚えています。のぶはこれまでは「たっすいがはいかん(弱々しいのはだめ)」と嵩を勇気づけてきましたが、この時は、嵩に引っ張りあげてもらった。嵩とのぶは、お互いがお互いを引っ張り上げるような関係だと思っています。

北村さんご自身のあたたかさにもすごく救われました。いつも本当に寄り添ってくれる人です。2人のシーンで、「ここをどうしようか」と話すことはありませんが、いつも静かに見守ってくれるところは嵩と似ています。

共演回数も多いですが、一緒にお芝居をさせていただくと、キャッチの能力がすごい方だと感じました。『あんぱん』では、毎日一緒に撮影させていただいたことで信頼関係もできているかなと思います。

戦後の悲しみも

戦争が終わって物語のトーンは明るくなりましたが、戦後の悲しみもしっかり描かれていると思っています。食料がないのでご飯が質素ですし、戦災孤児や浮浪児が一つのキーになっている。闇市でのぶが買ったお芋が盗まれたり、盗んだ芋を子どもたちが分け合ったり。戦時中とはまた違った辛さが描かれていると感じました。

のぶは戦時中に教師だったこともあって、子どもたちに特別な思いがある。やなせさんは食べ物がない状態がもたらす苦しさや辛さをおっしゃっていました。『あんぱん』は飢えの辛さが描かれているからこそ、食事の幸せもすごく感じています。

(『あんぱん』/(c)NHK) 

<のぶは、高知新報で記者として働き始めた。史実では、やなせさんと妻の暢さんは高知新報で出会う。『あんぱん』でも嵩が高知新報に入社するが、のぶは高知出身の代議士・薪鉄子(戸田恵子)から引き抜かれ、上京。東京の鉄子の事務所で働くことになった>

鉄子先生は嵐のような人です。のぶ以上のハチキン(土佐言葉で快活な女性)で愛情深い女性だと感じています。高知新報からのぶを引き抜いて東京へ導いてくれました。そのパワフルさによって物語に新たな風が吹きます。

演じている戸田さんもパワフルな方です。鉄子はせりふ量が多くてしかも土佐弁。私は最初のころの撮影では、頭で方言を考えながら演じてしまい、芝居とせりふがずれてしまったことがありました。戸田さんはそんなこともなくて、どうやって演じているんだろうと思っています。

<幼い頃に出会った嵩とのぶは、物語も折り返し地点を過ぎた第85回でようやくお互いの思いを伝えあった>

のぶと嵩は戦争中、環境の違いもあって、すれちがってきました。でも、戦争を乗り越えた後に2人は「逆転しない正義を探したい」と考えるようになりましたし、通じるものがたくさんある。

小さい時に出会ってから、喧嘩やのぶの結婚などいろいろありましたから、2人の思いが通じた時には、「やっと嵩と結ばれた」と思いました。かつて、嵩の伯父の寛先生が「いつか2人の道が交わる」とのぶに伝えてくれていましたが、嵩とのぶがお互いにやりたい道をしっかり進んだ先に結ばれたと思っています。

嵩が東京に行ったり、戦争に行ったりと、なんだかんだこれまで2人の距離は遠かった。のぶは小さい時から嵩の絵が好きですし、やっと嵩のそばで見守ることができるのがうれしいです。

朝田三姉妹の絆

<嵩とのぶが結ばれたことを祝うために、朝田家の家族が東京にやってきた。2人が結ばれる過程では、のぶの妹・蘭子(河合優実)やメイコ(原菜乃華)をはじめとした朝田家の後押しが大きかった>

(『あんぱん』/(c)NHK) 

朝田家での撮影シーンは、嵩のシーンと同じくらいリラックスして撮影できる現場です。朝田家の家族みんなでいる空気感と蘭子やメイコと一緒にいる三姉妹の空気感はまたちょっと違うところはある。家族によって見せる顔が違うということは私も覚えがあります。

蘭子はあまり多くを話すわけではないけれど、自分の意思がしっかりしている。のぶも蘭子も頑固なので戦争中はぶつかりあいましたが、唯一のぶに「違う」と言ってくれる人です。優実ちゃんは蘭子よりはしゃべるんですが、じっと何かを考えているような瞬間やはかない感じが蘭子のようです。

メイコは天真爛漫ですが、周りをよく見ているバランサーで、3姉妹のなかでいちばん気を使っています。戦争中は三姉妹それぞれに苦しみがありましたが、メイコがいちばん家族のことを考えている。メイコを演じる原菜乃華ちゃんは、甘え上手で明るくて、本当にメイコそっくり。

優実ちゃんと菜乃華ちゃん以外に朝田姉妹は考えられないです。