坂本美雨、著名人が「『子どもを殺すな』って言っちゃいけないことではない」 川上泰徳と語るパレスチナ問題

イスラム組織ハマスとイスラエル軍の対立が激化してから、まもなく2年を迎える。ドキュメンタリー映画「壁の外側と内側 パレスチナ・イスラエル取材記」を手がけた中東ジャーナリストの川上泰徳さんと、ガザの支援を続けるミュージシャンの坂本美雨さんが語り合った。AERA 2025年9月15日号より。
* * *
川上泰徳:「壁の外側と内側」の映像は、すべてiPhoneで撮影したものです。もともと全部自分の記録として撮影していましたが、それを報告する機会があって、映像をまとめてみたところ大きく映してもきれいなんです。じゃあ映画化してみようかという流れでした。大きなカメラ機材ではなくiPhoneだったから、相手も緊張せずに話してくれるという部分もありますし、iPhoneを使用することによって、自分がプレーヤーで、そのプレーヤーの視点を追体験できるような映像が撮れた。
私は中東を30年ぐらい取材していますが、過去の「イラク戦争」「アラブの春」などの映像は撮っていません。それは、自分が文章を書く人間だったから。その時は映像って、遠かったんです。ところが今はそんな垣根はもうなくなった。自分の取材を記録する感覚で撮影して映画にもできるという、そんな時代です。これはジャーナリストだけでなく、一般の人だってできるでしょう。
坂本美雨:ずっと文章を書いてこられた川上さんが、iPhoneで撮影して、編集までして、ナレーションまでして。もう音楽も作り出すんじゃないでしょうか(笑)。私も映画「忘れない、パレスチナの子どもたちを」や、NHKスペシャル「If I must die ガザ 絶望から生まれた詩」のナレーションを担当しましたが、映像って力強いですよね。でも、音楽となると難しいところがあって、自分がどんな作品を作ればいいんだろうと2年間すごく悩みました。そしてやっと、(前出の)NHKスペシャルで紹介されたパレスチナの詩人リフアト・アライールさんの詩「If I must die(もし、私が死ななければならないなら)」に、映画「国宝」の音楽を担当された原 摩利彦さんが曲を作り、私が歌うという形で11月に楽曲をリリースすることになりました。ただ寄付をし続けるっていうだけではなく、ガザから何か才能とか、こう表現したいことっていうのを日本に送ってもらうっていう試みも今やっています。パレスチナの歌は本当に美しいし、とってもきれいな声の子とかいるんですよ。その人たちが生きている証しをコラボレーションっていう形にできたらいいなと思っています。

■何かを排除してないか
川上:大切なことですよね。海外でも声を上げるアーティストが増えましたね。
坂本:日本でももっと声の大きいというか、ファンの多い方とか立場のある方がどんどんやっていいことだと思うんです。「子どもを殺すな」って言っちゃいけないことではない。どう突っ込まれようと絶対正しいことを言っているんです。一人ひとりの声が大切っていうのは、もっともっと伝えなくちゃいけない。それはつまり、自分たちの身に返ってくるっていうことだと思うし、そういう社会を許すっていうことは自分の子どもが大きくなったときに、その社会で生きていかなくちゃいけないっていうことですから。
川上:自分の生活で何かを「壁の外」に置いて排除してないかと考えることも大切ですよね。例えば、日本で外国人の人が働いている。この人たちは、私たちと一緒に生活しているわけだから、排除してはいけないわけです。そこに壁を作ってしまうから。そういうふうに、なるべく壁を作らないで一緒に生きていくってことが、パレスチナとイスラエルが共存するための条件だと思います。同時に日本でもそういうことを考えなきゃいけないと思います。
(構成/編集部・三島恵美子)

※AERA 2025年9月15日号より抜粋