高市内閣支持率71%は石破前政権の20ポイント高 “バランス取れた組閣”でロケットスタート “タカ派”は高市首相の生き残り戦略?

 10月21日、国会で自民党の高市早苗総裁が第104代首相に指名され、日本維新の会が「閣外協力」する高市連立内閣が発足した。読売新聞社の世論調査(21、22日)によると、内閣支持率は71%で、発足時では石破内閣の51%を上回った。一方でこれまでの言動などから右傾化が懸念されている高市政権。新内閣の顔ぶれをどう評価すればいいのか。

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■安全運転、そろり出航内閣

 高市氏が自民党新総裁に就き、高市政権の誕生が現実味を帯びてきたころ、「極端な右傾化」を危惧する声が盛んに聞こえていた。高市氏といえば、選択的夫婦別姓に慎重な姿勢を示したり、強硬な外国人政策を訴えたりするタカ派として知られ、保守強硬層の支持を得てきた。

 新政権では高市カラーが前面に出るに違いない――。

 ふたを開けると、総裁選を戦った小泉進次郎氏、林芳正氏、茂木敏充氏をそれぞれ防衛相、総務相、外相と重要閣僚に起用した。経済産業相に就任した赤沢亮正氏を含め、4人が石破茂前政権からの横滑りとなり、初入閣の閣僚10人はほとんどが副大臣経験者だった。

 高市新内閣を「安全運転そろり出航内閣」と指摘するのは元自民党事務局長で選挙・政治アドバイザーの久米晃さんだ。

「組閣から見えてくるのは、自身のカラーを出すことよりも、国会を安全に乗り切りたいという気持ちが色濃いということです。つまずいたら短命に終わってしまいますからね。党役員人事では総裁選で高市さん勝利の流れを作った麻生太郎副総裁のカラー全開でしたが、閣僚人事は旧派閥など各方面に目を配りながら、バランスを取った。とにかく現実的で手堅い。派手さはないが堅実な印象を世間に植え付けたかったのでしょう」

 元大蔵官僚の片山さつき氏を財務相に、長く公明党が担ってきた国土交通相には建設畑の金子恭之氏を起用するなど、“適材適所”の印象もある。さらに自民党の裏金問題に関与した議員は入閣させなかった。

「高市さんは裏金問題について、『人事に影響はない』という考えを示していた一方で、裏では『政治とカネ』問題に関して世間の声をかなり気にしていたと漏れ伝わっています。裏金議員を閣僚に起用すれば野党の猛反発は必至。国会がその話題に集中すれば、通したい法案も通せなくなる。粗を突かれまいと、表立って批判の的にならないような人事を意識したのでしょう。なるべく目立たず、たたかれない、弱みを見せない。そんな布陣です」

 ただ、組閣翌日の22日には、裏金問題に関与した旧安倍派所属の議員7人が副大臣・政務官に起用された。野党側が批判を強めることも予想されているが、高市氏は対応できるのか。

■踏み絵を迫られる小泉進次郎防衛相

 今回の組閣について「ポジティブな驚きだった」と評価するのは、コラムニストで立教大学兼任講師の河崎環さんだ。これまで高市氏には否定的な立場だった。

「急進的なタカ派、安倍晋三元首相の潮流を引き継ぐ超保守的な政治家で、『ガラスの天井を破った』『女性初』というフレーズを冠することで女性を代表しているなんて思われたくない。そう考えていましたが、首相という権力を手にしてからの人事を見ていると、ものすごくバランスが取れていて、頑なな保守ではなく柔軟性があるという印象です。首相の座をつかむまでの高市さんは、保守的な組織の中で上昇していくために、『極右政治家』とも称されたイデオロギー色をあえて強めにまとっていたのではないでしょうか」

 タカ派のイメージをまとってきたのは頂点に上り詰めるための手段。それを脱いだ高市氏は「本質的には“経済の人”」と見る。「責任ある積極財政に取り組む」という高市氏。閣僚の配置からもそれが見て取れる。先に触れた片山財務相や城内実経済財政相は積極財政派で、赤沢経済産業相は米国との関税交渉を引き続き担うと見られる。「明確に『経済優先である』ということが、大見出しに太文字で書かれているような内閣だとも思いました」。

 保守層が期待する安全保障については、“門外漢”の小泉氏を防衛相に就けた。経済対策が最優先で、急進的な安全保障政策は取らないのではないか。河崎さんはこう続ける。

「小泉さんの起用は真正面から踏み絵を踏ませるつもりなのでしょう。小泉さんは思想的に右なのか左なのかよくわからないまま、何を言っているのかよくつかめない『進次郎構文』と言われる口上でどんな状況も上手に逃げてこられた。まさにイメージで売っている政治家ですが、そういった逃げ道を許さず、『さあ勝負してごらんなさい』と。一方で、高市さんが仮に極右に振り切ると言っても、小泉さんは簡単に首を縦に振ることはないでしょう。小泉防衛相は、あくまで現実に即した政策を取っていこうという方針の反映なのでしょう」

 大量起用もささやかれた女性閣僚が2人にとどまった点については、「大臣職に見合うだけの実力を伴う女性議員を育ててこられなかった、日本の女性の現在地が反映された内閣」と苦言も呈す河崎さん。注目しているのは、保守的なスタンスが高市氏に近いとされる小野田紀美経済安全保障担当相だという。排外主義的な言動が過去に物議を醸した小野田氏は外国人共生担当相も兼務。昨今、「日本人ファースト」が声高に叫ばれるなど、議論が激しさを増す外国人政策に取り組む。

■タカ派色は嘘か真か

「“移民問題”にはメスを入れるという意思を感じます。海外にもルーツがある小野田さんが移民について話すということは、“日本人ファースト”の“日本人”とは何かという問いに答えを出すことにもなる。島国の中に逃げ込んで『外国人を排斥するぞ』というようなネガティブな響きとは全然違う意味を持つのです」

 久米、河崎両氏ともに「新首相のバランスをとる賢明さ」を見たという高市内閣。とはいえ、高市氏は安倍元首相の継承者を自任してきただけに、右傾化の疑念は今なお根強く残る。さらに自民党と日本維新の会が結んだ連立政権合意書には、日本国国章損壊罪やスパイ防止法の制定といったタカ派色の強い政策が並ぶ。イデオロギー論争は避けられないのではないか。河崎さんは最後にこう言った。

「高市さんが掲げてきたイデオロギーは本当に組織内で生き残るための手段だったのか。彼女が目指している政治家の姿は、私たちが持っていた高市さん像と同じなのか、違うのか――。それを確認するためにも今は批判ありきではなく、長期的に見ていきたい」

 少数与党での厳しい船出となった高市氏、尊敬する英国のサッチャー元首相のように長期政権を築くことができるのだろうか。

(AERA編集部・秦正理)