『国宝』『あんぱん』話題作への出演続く瀧内公美。『シバのおきて』ではしっかり者の妻役。「柴犬から演技を学んで。社会派の作品が多かったのでファニーな作品に出たかった」

映画『国宝』や連続テレビ小説『あんぱん』など話題作への出演が続く俳優の瀧内公美さん。芯の強さを感じる独特の存在感と演技力の高さで、物語に説得力を持たせる俳優だ。現在は、NHKドラマ10『シバのおきて~われら犬バカ編集部~』(総合、毎週火曜午後10時~)に出演中。主役の大東駿介さん演じる相楽俊一の妻、亜衣を演じている。クールな役柄が多かった瀧内さんだが、『シバのおきて』では夫を叱咤激励するチャーミングな女性を好演。瀧内さんに亜衣役への思いや俳優生活について聞いた。

(取材・文・婦人公論.jp編集部:油原聡子)

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【写真】柴犬・福助の気持ちがわかるしっかり者の亜衣

柴犬が大好き

『シバのおきて』は犬を通して人がつながっていくヒューマンドラマ。相楽俊一はパチンコ雑誌の編集長。コミュニケーションが苦手で部下に嫌われた末にボイコットされてしまう。新雑誌を作るよう社長に命じられた相楽が飼い犬の柴犬・福助と過ごすうちに思いついたのが、柴犬の専門誌『シバONE』だった

『シバのおきて』というタイトルを聞いたときに、なんだろう、このほんわかする感じは!という印象を受けました。これまで社会派の作品や何かを背負っている役柄が多かったので、ファニーな作品をやりたかったんです。犬を家族にお迎えしたことはありませんが、動物が大好きだし、特に柴犬が好きだったので、亜衣役のお話は二つ返事でお受けしました。

柴犬を好きになったきっかけはYouTubeです。もともとYouTubeやSNSはあまり観なかったのですが、コロナ禍で柴犬の動画をたくさん観るようになりました。国内だったら「柴犬ロックちゃんねる。」が大好き。柴犬は、自由気ままで融通が利かないところがすごくいい。動物や子どもはどう反応するかわからない。それは予想外の出来事も起きるということでもあるので、そんな状況でお芝居をしてみたいとも思いました。

(『シバのおきて』/(c)NHK)

亜衣は自宅で料理教室を開いている。何かと愛犬の福助に無理をさせる夫をいさめることも多い、明るくさばさばとした女性だ。福助の心の声を演じるのが柄本時生。俊一は福助を溺愛しているものの、いまいち福助の気持ちがわかっていない。一方、亜衣は福助の言葉を理解しているように描かれている

亜衣は家族に対してすごく懐が深いイメージがあります。夫の俊一はすごく自由人。俊一が「こうする」と決めたときに「それでいいんじゃない?」と受け止め、背中を押すことができる、おおらかさのあるキャラクター。妻の亜衣と娘の咲がいるからこそ、俊一は自由でいられると思うんです。

亜衣は、福助が何を言っているのか言葉を具体的に理解しているというよりも、「嫌そうだな」とか「眠そうだな」とか、なんとなく感じていることがわかるのだと思っています。犬と暮らしている方は、亜衣が持つ感覚に共感できるのではないでしょうか。福助の言葉を亜衣が100%分かりすぎてしまうとファンタジーになるので、そうならないギリギリのところを狙って演じています。

動物と一緒の撮影は初めてでした。私自身が犬を家族に迎えたことがないので距離感がわからない。犬との距離感を確かめてみたかったから、撮影の合間はなるべく福ちゃんと時間を共にしていて、自分の楽屋にはほとんどいませんでした。人間と同じで、犬もそれぞれ性格が違うので、この子はどういう距離感でいるのが“心地が良いのか”を感じとりたいというのもありました。動物と一緒に過ごす時間はセラピー効果を感じるくらい、癒やされた時間でした。

柴犬の演技に学んだこと

(『シバのおきて』/(c)NHK)

俳優として役に入り込むというより役を客観視するタイプだという瀧内さん。撮影に参加した柴犬たちの演技が興味深かったという

『シバのおきて』の撮影は今年の初夏から夏にかけてありました。ちょうどお芝居について悩んでいた時期でした。最近出た作品では、ドラマチックなお芝居が求められるケースが多かったんです。非日常的でドラマチックな作品からの学びもありますが、何も起こらない日常こそがいちばんの幸せじゃないかとも感じていて。

『シバのおきて』は柴犬と一緒の撮影がほとんどでした。ドラマのなかで犬が何かのために一生懸命に走っている場面を見ると心が動かされますよね。でも、撮影の現場ではおやつを使って走らせている。「見て」と指示した後にトレーナーさんが視線を下げると、犬も一緒に視線を下げる。それが見ている人には「うん」と言っているように見えます。犬の演技を見ることで、感情を載せることも大切ですが、それ以上にどう見えているのか、その説得力が大切だ、ということを改めて実感できました。

<第5回で亜衣は『シバONE』の『突撃!隣の犬ごはん』コーナーに協力。ドッグフードの肉団子載せや野菜と豚肉の炒め物など犬用のメニューを考案した

私も亜衣と同じく料理が好きです。でも、亜衣が福ちゃんのために作ったようなカラフルで可愛いメニューではありませんが(笑)。普段は酢の物やピクルス、おつまみを作ります。夏にはまっていたのは「山形だし」。ナスやオクラ、ミョウガ…。好きな野菜や薬味を刻んで混ぜて作ります。お豆腐にそのまま載せてもいいし、ごはんに納豆と一緒に載せてもいい。すごく体にいいので「こればっかり食べたい」と思うくらいおいしいです。調理は私にとってストレス解消。たとえば、お鍋を出してお湯を沸かしている間に別のことをやったり、素材を刻んだり。特に包丁で素材を刻んでいる間は何も考えない。お料理をしている時間は、私の中では休みの時間ですね。

「表現」見つめる時間がほしい

(『シバのおきて』/(c)NHK)

昨年は大河ドラマ『光る君へ』に源明子役で出演。クールな美貌と迫力のあるせりふがインパクトを残した。今年は大ヒット中の映画『国宝』で終盤の重要な役を担い、朝ドラ『あんぱん』では厳格な女教師役を演じて話題になった

私がこれまで出演した作品の多くは、スタッフの数が10人や15人と少なくて、「自分たちがやりたいからやっている」「これを撮りたい」という思いで走っているような、インディーズ作品。だから現場で意思疎通もとりやすいですし、自分の記録を撮られているような感覚だったんです。

でも、この数年で出演した、朝ドラや大河のような大作では自分の「表現」が見られている。「寄り添ってずっとカメラを回している」のではなく、「決められたカメラワークの中でインパクトのある表現を提示できるか」を見られている感覚です。朝ドラや大河は、作品のテーマを大勢の人にどう伝えるのかを意識することで表現も変わってくる。現場での先輩の居方(いかた)も含めて勉強になりました。

すべての作品で学びと人との出会いがあります。『光る君へ』のスタッフの方が『シバのおきて』の現場にいらっしゃって、この再会というのがすごくうれしい。ちょっとでも成長した姿を見てもらいたいんです。

この数年は、自分がやりたい作品がたくさんあって複数の作品を並行して忙しく走ってきました。原点に戻って、インディーズとまではいかなくても比較的小規模な作品で、何カ月かかけて映画の時間に浸りたいという思いはあります。もう1度「表現」を見つめる時間を作ることが自分にとって豊かな時間になるんじゃないのかなと思っています。

俳優の仕事は、別の人の人生を生きることができるのが面白いんです。私は実生活で犬と暮らすことは難しいですが、ドラマなら犬と生活する母親として生きることができる。「こんな事件があったんだ」とか「歴史上は描かれていないけれど、少し違った視点で見ることもできるかもしれない」とか、作品を通して学ぶこともたくさんあります。一生勉強だし、一生修行していける仕事です。

これからもっと挑戦してみたいのは時代劇です。伝統芸能が好きですし、私自身が日本舞踊を習っていることが大きいかもしれません。着物を着てその時代の言葉で昔の日本人を演じることは、いまのわたしにとって、表現がふくよかになっていく気がします。今までの歴史があるから今の自分たちがいる。歴史は繰り返すものだから、歴史を知らないというのは未来も読めないということ。そういった意味でも時代劇を通して、「気が付かなかった新たな発見」を感じていきたいです。