夫は東大卒弁護士の佐藤ママ 父親から4人の子どもたちに「後を継いでね」と絶対言わせなかった理由とは

4人の子ども全員を東大理三に合格させた佐藤亮子さん。佐藤さんの夫で、弁護士として生き生き働く父の姿は、4人の子どもたちに確かな影響を与えたそうです。数多くの受験生を志望校合格へと導いてきた中学受験カウンセラーの安浪京子さんが、進路や職業観への向き合い方を佐藤さんに聞きました。(佐藤さん、安浪さんの共著『中学受験の意義 私たちはこう考えた』(朝日新聞出版)から一部を編集してお届けします)
安浪:佐藤家では教育方針は佐藤さんが決めてご主人は従うというか、下手に口を出さない。中学受験の時もそうだった、ということですよね。
佐藤:はい。うちは夫婦とも中学受験をしていなかったんですが、私が浜学園のテキストを見て、中学受験って12歳で理科とか社会とかこんなことをやるんだ、ってすごくワクワクしたというか、中学受験の世界に引き込まれた感じですね。
安浪:佐藤さん自身がテキストを見て知的好奇心が刺激されたという。
佐藤:そうそう。だから長男の時、最初の頃は理科や社会は結構2人で一緒にやりました。星座の名前を一緒に覚えたり。大人になった時、夜空を見ながら星座の名前がスッと言える人になったらかっこいいな、とか思って(笑)。
安浪:ご主人はそれについて特に反対はせずに?
佐藤:全然全然。賛成も反対もしない。塾の送り迎えをちょっと手伝う程度で、別に何にもしない。
安浪:それは最初から決めていた?
佐藤:結局主人は仕事が好きだから、自分が仕事をちゃんとやれるのだったらもう全部任せておいたほうがいいって思ったんでしょうね。下手に口を出して、じゃあお父さんやってよ、って言われたら困るんです。
安浪:喧嘩はなかったんですか?
佐藤:なかったですね。でも三男が塾に通っている時、塾のお迎えに今日はちょっと行ってくれる?みたいな日があったんです。
佐藤:そしたら塾はもう終わっているのにお父さん来ていない、って電話が来たんです。主人に電話しても全然出ない。仕方がないから私が急いで車で行って連れて帰ったんです。そしたら主人から電話が来て、ママ、子どもが下りてこないんだけど、とか言うから、何言ってんの、もうとっくに帰ってきているよ、と。結局、主人は車の中で寝ていたわけですよ。その時は喧嘩になりましたね。

安浪:それは腹立ちますね(笑)。
佐藤:俺がせっかく迎えに行ったのに、とか逆ギレしてるんですよ。だからもう責任持てないならとにかく頼まない、って思いました。主人は子育てにはあまり関わらなかったですが、その代わり、成績を見せろとかも一切言わなかったですけど。
安浪:佐藤さんは子育ても、もうちょっと手伝ってよ、とかは言わなかった?
佐藤:ほとんど言わなかったですね。主人も、私がやっていることに何ひとつ文句を言いませんでしたから。でも心の中ではこんな子育て忙しい時に、何そんな仕事してんのよ、老後覚えとけよって、思ってました(笑)。
安浪:家族旅行とかは?
佐藤:前もって言えば、子どもたちと旅行に行く時は、裁判などは入れないようにしていたようです。
安浪:ご主人は自分の後を継がせたい、とは思わなかったんでしょうか。
佐藤:うちの主人は、労働関係の事件が多くて、不当解雇とかで社長とやり合う、みたいな訴訟関係が多かったんですね。それでトラック関係とかタクシー関係の労働組合の集まりに顧問として時々呼ばれることがあったんです。私も長男がまだよちよち歩きの時に連れて行ってもらったことがあるんですが、来る人来る人、長男の頭をなでながら「君も東大行って弁護士にならなくちゃいけないから大変だね」って言うんですよ。だから私は、主人に絶対子どもたちには弁護士の「べ」の字も言わないで、って言ったんです。
安浪:ああ、逆にね。
佐藤:そう。こんなに周りからプレッシャーがかかっているのに、さらに親が言ったらならざるを得なかったりするし。だから後継いでねとか、一緒にやらない?とかは絶対言わないでって言っていたんです。
安浪:それは、お子さんたちが小さい頃から?
佐藤:そうです。主人は、そういうのは守る人で全然言わなかったですね。子どもたちにとっての父親のイメージって、なんか意外と生き生き仕事をしてるな、家に帰ってきて嬉しそうにビール飲んでるし、時々遊んでくれるな、みたいな感じだったようで。長男が私の本の中で、父親が資格職なのでいずれ僕も資格職には就きたいなと思ってます、って書いていました(『佐藤ママの子育てバイブル 学びの黄金ルール42』〈朝日新聞出版〉)。大学を出たら早く仕事をしたいと言っていましたし、そういう意味では、父親としていい背中を見せたのかな、とは思います。
安浪:ご主人は一人ぐらい弁護士になってほしかったとかは言っていませんか?
佐藤:子どもたちが大学生になってしまってからは気楽にそう言っていました。司法試験は昔よりやさしくなっているから、医学部行きながらでも取れるぞ、みたいな。
安浪:医師と弁護士の国家資格、両方持っていたら強いですもんね。意外と今からでもありかも?
佐藤:いやいや、子どもたちは、もうそんな勉強したくないって言ってました。そっちはもう、親父に任せるわ、みたいな。でも以前、次男の友達が交通事故に遭って、弁護士に相談したいことがあったようなんです。その時、「佐藤、ちょっと、お父さんに頼む」ということになって、主人が相談に乗ってあげたんですが、そしたら次男が、親父が弁護士だと便利やな、親父がボケる前に誰か弁護士になってくれ、って言いだして(笑)。きょうだいからお前がなったらいいじゃん、って言われて、俺はちょっと違う、とか言ってて。結局、誰もなる気はなさそうです。
(構成/教育エディター・江口祐子)

※「中学受験の意義」(佐藤亮子・安浪京子著)から一部編集
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