なぜ女性アイドルだけが「卒業」し、男性アイドルは解散するのか?Perfume「コールドスリープ」が画期的だったワケ

乃木坂46・久保史緒里の卒業発表をきっかけに、女性アイドルにおける「卒業」というシステムの歴史と意味を振り返る。

卒業が初めて大きく注目されたのは1986年のおニャン子クラブで、中島美春・河合その子の卒業は明るく前向きな「別れ」のイメージを作り、70年代キャンディーズの悲壮感ある解散劇とは対照的だった。

その流れを受け継ぎ、制度として定着させたのがモーニング娘。だった。そして、秋元康が番組ありきのアイドルという弱点を克服するため「劇場」を基盤に据えて発足させたのがAKB48である。

前編記事『おニャン子クラブから乃木坂46まで…女性アイドル文化を変えた「卒業システム」はどこから始まったのか?』より続く。

2011年のAKB48/Photo by Gettyimages

AKB48が「卒業」を国民的イベントにした

AKBは2005年の結成から五年ほどで、全盛期のモー娘。にも匹敵する国民的グループに成長。12年には、エースとして牽引してきた前田敦子が人気を保ったまま、卒業するに至る。これは誰がいつ卒業するかわからない、ということを改めて感じさせるものだった。

そういう意味で、卒業は常にサプライズなのだ。現実の学校と違って、三年間とか四年間とか、期間が決まっているわけではないから、一年で卒業する人もいれば十年たっても卒業しない人もいる。

また、ファンにとっての卒業がサプライズなら、アイドル本人にとっては人生の区切りだ。もっぱら十代から二十代にかけての多感な時期をアイドルグループで過ごし、卒業を機にソロ活動へと転じたり、一般人に戻ったり。いずれにせよ、それは学校もしくは家族や故郷を離れ、別の場所へと旅立つことでもある。

女性アイドルにおいては、少女から大人へという転機にもなりやすく、若さに永遠はないのだということを思い知らされる。峯岸みなみや柏木由紀については、卒業というより、スポーツ選手の引退みたいなものすら感じてしまった。

女性アイドルと男性アイドルの「卒業文化」の違い

やがて、AKBきっかけで生まれたグループたちも、この卒業システムを活用。さまざまな卒業が数多く展開されていったが、なかでも印象的だったのが、乃木坂46の橋本奈々未のそれだ。

11年に結成されたグループの1期生というだけでなく、才女キャラ、そしてかなりの苦労人でもあった彼女は、6年後、24歳の誕生日に卒業。家の経済状況が好転したことから、引退して一般人に戻った。

彼女にとってのラストシングル『サヨナラの意味』で初のセンターを務め、16年の『NHK紅白歌合戦』では歌唱前にキャプテンの桜井玲香からメッセージが送られた。

「これからは別々の交わることのない世界で生きていくけど、私たちの絆は一生変わることはありません」

橋本は「リハーサルでこんなのなかったので、びっくりしました」と感激。国民的番組で祝福され、見送られるという、これ以上ない華やかなはなむけとなったわけだ。

こういうところから見て取れるのは、卒業の儀式性である。それゆえ、メンバーは人生をスパッと切り替えられる。これはもっぱら、女性アイドルの特権でもあるだろう。

一番左が橋本奈々未/Photo by Gettyimages

男性アイドルの場合、卒業というパターンはそれほど一般的ではない。メンバーの入れ替えではなく、同じ顔ぶれが歳を重ねながらも継続していくというかたちが主流だ。

とはいえ、アイドルにも私生活はあるから、結婚する人も出てくる。女性アイドルなら、その前に卒業するが、男性アイドルはそうではないので、ファンはモヤっとしてしまうことも珍しくない。それこそ、もっと夢を見せてからにしてほしかったとか、妻の私生活語りをやめさせてほしいとか、不満の声も飛び交ったりする。

そんななか、嵐の活動終了は、五人中三人が結婚した状態でアイドルをやっていくことのビミョーさを解消する意味もあるのではないか。いわば、グループとしてのアイドル卒業だ。

異色の戦略を取ったPerfume

一方「コールドスリープ」という名目で活動を休止したのが、Perfume。グループのコンセプトにも合った表現ながら、そろそろ誰か結婚するのかなと思っていたら、あ〜ちゃんこと西脇綾香がその発表をした。グループとしての時間は止めつつも、中の人の実人生は進行させるという高度な戦略にも思える。

Perfume/Photo by Gettyimages

ただ、アイドルの卒業に話を戻すと、弊害もなくはない。メンバーの入れ替えによるグループの長寿化が進んだことで、そのグループそのものの新鮮さがうすれ、ともすれば伝統依存、あるいは伝統に縛られがちな状況に陥っているのではという弊害だ。

令和に入ってから生まれたカワラボ(KAWAII LAB.)系のアイドルグループが躍進してきたのも、AKB系や坂道系に対するカウンター的なユニークさがウケているというところが大なのだろう。

それでもやはり、伝統には伝統の美しさがある。

たとえば、前編で触れた久保史緒里の卒業コンサートは、11月26、27日に行われる予定で、26日には乃木坂の40作目のシングル『ビリヤニ』も発売される。そのMVのラストに、初めてセンターを務める6期生ふたり(瀬戸口心月・矢田萌華)をいちばん左端から優しく見つめる久保、という象徴的な場面があり、心に沁みた。

こういうものが見られる限り、アイドルの卒業という伝統も続いていってほしいと改めて思う。卒業はもはや、アイドルになくてはならない文化のひとつなのだから。

・・・・・・

【もっと読む】『永野芽郁と芳根京子の明暗はここから…?「朝ドラ」は「ヒロイン以外」でデビューするに限るワケ』