太田光代氏の「戦争反対」が波紋を呼ぶ理由 表現者たちの反応とそれぞれの正義

芸能事務所「タイタン」の太田光代社長
お笑いコンビ「爆笑問題」の太田光の妻であり、芸能事務所タイタンの代表取締役社長を務める太田光代氏が24日、X(旧ツイッター)に投じた一言が、静かな、しかし深い波紋を広げている。
太田氏は「私は戦争に反対です」という書き出しで、次のようにポストした。
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私は戦争に反対です。
エンタメ業界は、戦争に反対という認識をしています。
戦争に賛成したらクリエイター達はどうなるか。
意に沿わない作品を作成させられたり、戦争を煽るようなことを言わされるのは、先の戦争で理解していること。
エンタメ業界は平和の中で成り立っていると、私は思います。
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エンタメ業界を牽引する立場から発せられたその言葉は、平和を願う純粋な祈りであったはずだ。だが、高市早苗政権下で防衛議論が加速する今、この「当たり前」の表明は、思わぬ形の議論へと発展している。
劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ氏は即座に呼応。
「『戦争反対』と投稿するととつべこべ文句を言われるらしい。『戦争反対じゃない人なんかいない』とか、『戦争反対にも種類がある』とか。そんなこと逐一返してこなくてもいいよ。議論したくて投稿してる人ばかりではないんだから。嫌な時代だ。戦争反対。」と賛同。

ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏
エンタメ界が抱く「表現の自由」への危機感

倉田真由美氏
また、映画評論家の町山智浩氏も、太田氏への批判が相次ぐ状況を引用した上で、「この例のように『みんな戦争には反対だけど戦争反対という言葉は敵に利用されるからポストするんじゃない』と糾弾されてて、Majiで戦時下5秒前」と、強い言葉で危惧を表明している。
彼らにとって「戦争反対」を口にすることは、表現者としてのアイデンティティを守るための、至極真っ当な防衛本能と言えるだろう。
しかし、この投稿に対する一般ユーザーからの反応は冷ややかなものも少なくない。「誰も戦争反対を否定していない」という前提に立ちつつ、具体的な抑止力の議論を避ける姿勢を疑問視する声が目立つ。

沖縄・辺野古沖で転覆した2隻を運航する「ヘリ基地反対協議会」の事務所
ある一般ユーザーは、「領空や領海侵犯をどうやめてもらうかまでご教授いただければ皆納得する」と指摘。また、漫画家の倉田真由美氏は、「戦争にならないためにどうすべきかの方法論が異なるだけ」とし、意見の相違を「戦争賛成派」と決めつけて非難することの危うさを説いている。
突き付けられる「具体策」と「方法論」の壁
太田氏はその後、「どうして当たり前のことが言えなくなったのか」と困惑を隠さないポストも連投している。ここにも現代特有のネット上の「分断」が潜んでいる。
演出家の片岡K氏は、自身の投稿でこう分析する。
「誰もが戦争には反対で、平和を望んでいます。にも関わらず、『戦争反対と言わないあなたたちは戦争賛成なのね!』と勘違いしたまま叫んでるからでしょう。言うことが駄目になったのではなく、話が噛み合わないから突き放されてるだけだと思います。」
一部の過激な活動や、沖縄・辺野古での不幸な事故を背景に、「戦争反対」という言葉が他者を攻撃する「棍棒(こんぼう)」として利用され、言葉自体の価値が変質してしまった――と嘆く声も根強い。
辺野古の不幸な事故が落とす影
太田光代氏が発した言葉は、本来であれば議論の余地のない正論である。しかし、現実の国際情勢に直面する人々にとっては、その言葉が「理想論」という名の、一種の思考停止に映ってしまったのかもしれない。
「議論したくて投稿してる人ばかりではない」(ケラリーノ氏)という個人の自由と、現実的な平和維持の手段を問う「公」の視点。この両者が重なり合う地点を見出すのは、今の日本において極めて困難な作業となっているのだろうか。
(zakⅡ編集部 霞蓮刃)