「不正車両ロック中」…自転車にカギをかけて高額な「罰金」請求は許されるのか?「不正駐輪取り締まりサービス」の実態

 自転車に勝手にカギをかけられ、高額な「罰金」を請求された――。いま、東京や大阪などでそんな被害が相次いでいる。

 東京都の女性は4月のある朝、ロック式の有料駐輪場に自転車を停めて子どもを保育園に送り、そのまま出勤した。夕方18時ごろに戻ってくると、もともと停めた場所に自転車がなく、驚いたという。自転車はすぐ近くのスペースに移動され、カギがかけられていた。そして、「不正車両ロック中」という見慣れぬタグが1枚。慌ててタグに印刷されたQRコードを読み込むと個人情報の入力を求められ、最後に6000円近い損害賠償金が請求された。

「朝、しっかりゲートにロックしたつもりで『ガチャン』という音も聞いていましたが、急いでいたので100%の自信はありません。もしかしたらちゃんとロックされていなかったのかもしれず、それならば私の落ち度です。でも、表示された金額があまりにも高額だったし、よくよく見ると管理会社の公式なものなのかもわからない。本当に驚きました」(女性)

■最終的に1万円近くの請求

 カギをかけたのは、愛知県名古屋市に本社を置く株式会社サイバーGが運営する「CYBER PATROL GOVERNMENT(以下CPG)」なる「不正駐輪取り締まりサービス」だ。同社の業務委託とみられるスタッフが契約先の駐輪場を回り、予約や登録なしに駐輪していたり、ロック式なのにロックがかかっていなかったりする自転車、バイク、キックボードなどに施錠し、反則金を請求している。アイキューソフィア株式会社が運営する駐輪場シェアリングサービス「みんちゅうSHARE-LIN」に多数導入されているほか、東京・大阪・名古屋などの駐輪場・駐車場で取り締まりを行っている。

 金額の高さに驚いた冒頭の女性が駐輪場の掲示板にあった管理会社の緊急連絡先に電話すると、「当社は関係ない。カギを壊していい」という返答で、女性は保育園で工具を借りてカギを壊し、そのまま自転車に乗って帰った。だが、話はそれで終わらなかった。女性が1度個人情報を入力していたことから、CPGから再び請求の連絡が来た。それも、当初の金額から「日別管理料」が上乗せされ、請求は最終的に1万円近くになった。女性はこれ以上のやり取りを避ける意味で、泣く泣く支払ったという。

 女性の問い合わせに「関係ない」と返答した管理会社だが、実際にはこの会社はサイバーG社に取り締まりを委託している。管理会社は「『無関係、カギを壊していい』と返答したとすれば、委託先のコールセンター担当者との伝達ミス」だと説明するが、このコールセンター業務を担当したことがある人物によると、「同様の問合せはちょくちょくあるが、管理会社に確認しても『(取り締まりを)委託していない』と説明がある」という。

■「ひとつのやり方としてあり」

 管理会社の担当者はサイバーG社に取り締まり業務を委託している理由をこう説明する。

「以前は自社で巡回して、正常にロックしていない自転車をゲートに押し込んだり、警告フダを巻いたりしていました。でも、その人件費だけでかなりのコストになるし、不正をした人も結局正規の駐輪場代を払うだけなので『あわよくば』という人が減らず、頭を悩ませていました。(CPGのやり方は)金額も含めて賛否あるのは理解していて、自社でできるかというと難しいですが、正しく利用するユーザーさんのためにも、ひとつのやり方としてありなのかなと思っています」

 サイバーG社はこの管理会社との関係について、「別会社である」と回答している。ただし、管理会社の代表取締役は2人いるサイバーG社の代表取締役を兼ねていて、グループ企業を紹介するホームページなどでは両社の社名が確認できる。また、「みんちゅうSHARE-LIN」のアイキューソフィアもこのグループに名を連ねている。

 サイバーG社は取り締まりについて、「不正駐車・駐輪は長年土地所有者や正規の利用者、住民を悩ませてきた社会問題」であり、「土地所有者ならびに管理会社より正式に委託を受けた敷地において、事前に設置された案内看板に基づき取締を行っている」と主張する。

 だが、横浜合同法律事務所の清水俊弁護士によると、この取り締まりは民事・刑事両面から違法の疑いが強いという。

「民法では『自力救済』、つまり法的な手続きを経ずに自らの力で権利を回復しようとすることを禁じています。不正駐輪の例で言うと、一部例外はありますが、そもそも勝手にどかしてはいけないのが大原則。金銭的な損害についても、請求できるのは賃料相当分です。1日停めて100円から数百円という駐輪場で6000円近い金額を請求するのは明らかにやりすぎでしょう。また、勝手に施錠する行為は事実上自転車を使えなくしていますので、刑法の器物損壊にあたる可能性がありますし、カギをかけて高額の請求をすることが恐喝にあたる余地すらあると思います」

■「警察は介入できない」

 さらに、こんな事例まであった。ある女性が言う。

「いつも通り店舗の来店者用駐輪スペースに自転車を停めて買い物していたんです。でも、戻ってきたらすぐ隣にある『みんちゅう』の契約駐輪スペースに自転車が移動され、カギをかけられていました」

 ここは同じ区画のなかに店舗の駐輪場とみんちゅうの契約駐輪場が隣り合っていた。

「頭のなかがハテナだらけでした。勝手に移動してお金を請求??って。文句を言おうとしても、自転車に付けられたタグには電話番号すら書いていなくて、ただQRコードから罰金を請求されるだけ。そんなふざけた話はありません。最寄りの警察署に相談すると、『警察は介入できないけれど、自転車自体は私有物なので好きにして大丈夫。個人的にはロックが外せそうなら外してそのまま帰っていいと思う』という返答でした」

 かけられていたのは4桁のナンバー錠。女性は1時間ほどかけてカギを開けたという。

「カギが開いたのはほとんど偶然だと思います。周りには同じようにカギをかけられた人がいたけれど、開けることができていませんでした」

 同様に、「公道に駐輪したはずが、隣接する『みんちゅう』のスペースに移動された」との証言もあった。

 サイバーG社はこれらの証言について、「みんちゅう等の駐輪場だけでなく、物件全体の敷地の取締りを委託されているケースもある」「委託された敷地外や公道に停められている車両を取り締まることは一切ない」と説明する。また、先述のケースもCPGの取締員が自転車を移動した証拠はなく、実態は不明だ。だが、かつてCPGの取り締まり業務委託に応募した男性はこんな感想を口にする。

「取り締まりをするスタッフの報酬は、カギをかけられた人が罰金を払った時点で発生する仕組みでした。それも、自転車1台あたり600円程度でとても割がいいとは思えなかった。見回りをするだけでは1円にもならないから、多少スペースから外れていても片っ端からカギをかけるようなやつもいるだろうな、というのが率直な感想です」

 CPGのホームページには、「不正駐輪・不正駐車根絶へ」「迷惑行為禁止」「不正者の情報をご提供ください」などの言葉が赤や黄色で大きく書かれ、なぜか警視庁、国土交通省、日本弁護士連合会、裁判所などのホームページへのリンクがデカデカと張られている。

 駐輪料金を支払わない不正駐輪や駐輪場ではない場所に停められた放置自転車が、管理者や正規の利用者の利益を害していることは言うまでもない。それを排除したいと考える管理者の思いも理解はできる。それでも、この取り締まりの仕組みには、慎重な検証が求められる。

(AERA編集部・川口穣)

 AERA編集部に対するサイバーG社の主な回答は次の通り。

Q:この取り締まりシステムの意義や貴社が担う狙いをお教えください。

A:不正駐車、不正駐輪は長年土地所有者や正規の利用者、住民の方々を悩ませてきた社会問題です。土地所有者におかれましては、不正駐輪があることにより地域の方からクレームを受け、対策を強いられてきました。また、正規のお客様が駐輪場を利用できないという問題も発生しておりました。

 さらには、高齢者やハンディキャップのある方々が、不正車両につまずかれ寝たきりになってしまうといった事故も発生したり、災害時の緊急車両の妨げになるなど人命に関わりかねない問題を引き起こします。

 こうした社会問題を解決するため、CPGは誕生し、委託を受けた土地の管理を行っております。不正に駐輪・駐車される方にとっては、小事に感じられるかもしれませんが、不正に自転車を停めることは深刻な問題につながることを考えるきっかけにもして頂ければと考えております。

Q:貴社に取り締まり業務を委託している管理者からは、不正駐輪に対する負担やCPGへの期待など、どのような声がありますか。

A:従来の不正駐輪対策といえば、警告札の貼付、カラーコーンやチェーンなどによる抑止といった対策に留まり、なかなか改善が見られない状態が続いておりましたが、CPGの取り組みは即時性と確実性があり、不正の再発を防ぐこともできる仕組みとの声を、多くの土地所有者様、管理会社様より頂いております。

 不正駐輪にお困りの方の声が取り上げられることは少ないですが、不正対策のために人を雇う人件費などもかさみ、それでもなお改善されないことも多く散見されておりました。ひどいところでは、土地オーナーが地域の方、テナントの方、行政からもクレームがきて対策をしても、状況が悪化する一方ということもあります。

こういった問題を抜本的に解決する仕組みとのご評価をいただいております。

Q:実際の導入先からはどのような成果が聞かれますか。

A:ある土地では、導入以前は毎日50台以上の不正駐輪に悩まれていたところ、CPGを導入いただいた結果不正駐輪が激減し、最終的には0台になったとのご報告をいただいております。

 それにより、これまで救急車や消防車などの緊急車両が通れなくなっていた場所も、通れるようになったとのお声もございました。

Q:自転車などにロックすること、駐輪料金に比べて著しく高額を請求することには批判の声も多くあります。民法の自力救済禁止の原則に反するとの指摘、刑法の器物損壊に当たるのではないかとの指摘もありますが、貴社の法的見解をお教えください。

A:当局(編註:CPG)は、土地所有者ならびに管理会社より正式に委託を受けた敷地において、事前に設置された案内看板に基づき取締を行っております。詳しくはHP内のFAQをご確認ください。

Q:「みんちゅうSHARE-LIN」等の貴社提携駐輪場エリアではなく、少し離れた別の場所(例えば同一区画内にある店舗駐輪場や隣接する公道)に停めていたのに、CPGに移動・ロックされたとの声を複数確認しています。それらに対する貴社の見解をお教えください。

A:みんちゅう様等の駐輪場内だけでなく、物件全体の敷地の取締りを委託されている場合もございます。委託された敷地外や、公道に停められている車両を取り締まることは、不法行為となりかねませんので、一切行っておりません。敷地内で不正駐輪があった場合、正規利用者の妨げとならないよう、敷地内の別の場所へ移動させていただく場合はございます。

Q:貴社の代表取締役には【本文中の管理会社代表】のお名前もあります。CPGの事業は【本文中の管理会社】及び同グループであるアイキューソフィアと一体で行っているのでしょうか。

A:すべて別企業となっております。