「私はブルべだからと決めつける人が多すぎる」野際陽子を20年担当したヘアメイクが指摘「大人こそかわいいピンクを選びなさい」

女性の加齢の悩みを解消するメイクテクを解説するYouTubeが人気で、6月に最新著書『化け子のオキテ。』を上梓予定のヘアメイク職人・化け子さん。大女優のヘアメイクを長年担当して培ったシミ消し技術を発信したところ予想以上の大反響を呼び、本人がいちばん驚いたそうです。(全3回中の2回)

メイク講座を始めるも「本当に受講生のためになってるの?」

── 専属でヘアメイクを担当していた野際陽子さんが病を患い、仕事が減った時期があったそうですね。副業でさまざまなアルバイトを経験したことで、かえってヘアメイクが自分の天職だと再認識されたとか。

化け子さん:そうなんです。でも、ありがたいことに、それまでは仕事の依頼が絶えず入ってきていたので、営業活動をしたことがなくて。需要がなければ成り立たない不安定な仕事だと実感して、自分から仕事を生み出せるようになりたいと思いました。

化け子

自分で仕事を生み出したいと、メイク講座を始めたころ

女優のヘアメイクを長く担当していたことを生かして、「一流の女性のためのヘアメイク講座」というコンセプトで講座を開くことに。受講してくれたのは30〜50代の女性でしたが、みんな一流かどうかなんてまったく気にしてなくて(笑)。とにかくシミ、シワ、たるみなど加齢の悩みをどうにかしたいって言うんです。カバーするメイクを披露したら、「こんなにキレイになれるんだ!」って喜んでもらえました。

私に伝えられることがあるとわかったのは大きな収穫でした。でも、「その場では満足してもらえても、初心者にすぐに真似できるとは思えない。これ本当に受講生のためになっているのかな」と感じてしまって。モチベーションが上がらず結局、続きませんでした。

野際さんはもう亡くなっていたのですが、やっぱり今ある芸能界の仕事に集中しよう。そう思い直しました。でも、それだけじゃダメだ、せっかくなら人の役に立ちたいという思いで、メイクテクをネタにブログを書いて発信していたんです。そんなとき、起業塾に参加して、今のビジネスパートナーの貴子さんとさおりさんに出会いました。

コロナで全仕事がキャンセルに…再起をかけたインスタライブ

── 今やアラフィフ世代に大人気のYouTubeは54歳から始めたそうですね。きっかけは何でしたか?

化け子さん:ちょうどコロナ禍に入って外出できなくなり、芸能界の仕事も全部ストップしてしまったんです。貴子さんが「時間がある今こそインスタライブだよ」というので、とにかく毎日やってみることに。そこで、自分の顔を見本にシミ消しのテクニックを披露したら「すごい!」って予想以上の反響があり、フォロワーが増えていったんです。私からしたらなんてことないことでも、観ている人の役に立っていると実感がわいたし、視聴者の方と交流するのも楽しくて。講座よりもインスタライブのほうが自分に合っているなと感じました。

ばけ子さん

貴子さん(左)、さおりさん(右)と会社を立ち上げた

── インスタライブをきっかけに、自分の得意分野がわかってきたんですね。

化け子さん:そうですね。絶対みんな喜んでくれるという確信をもってました。そんなとき、ふとしたきっかけから、貴子さんと一緒にYouTubeチャンネルを立ち上げることになりました。コンセプトは「40代以上に共通する加齢悩みにフォーカスしたメイク」。大人の乙女心に立ちはだかる加齢悩みを払拭できることを知ってもらいたかったんです。その後すぐにさおりさんが合流して一緒に会社を立ち上げ、本格的なスタ-トをきりました。

── ご自分をモデルにメイク技術を伝えていますが、すっぴんを披露することに躊躇はしなかったのですか?

化け子さん:シミだらけだけど、すっぴんを出すことにはまったく抵抗なかったです。加齢の悩みを発信するんだから、そのまま自分の顔を見せたほうがいい。それに女優さんって普段はすっぴんの人がほとんどで、メイクをしてスイッチが入るんです。そういう姿をそばで見ていたのもあると思います。

化け子

動画ではすっぴんを披露し、加齢の悩みを解消する方法を具体的に伝授

実は最初は、もっとカッコよく、「ヘアメイクアーティスト・岸順子」みたいな感じでブランディングする話もあったのですが、私はキラキラした世界では勝負できない気がしていて。知り合いの経営者の方に相談したら、「化け子」ってどうですかと提案され、即「それいただきます!」って(笑)。「ヘアメイク職人_化け子」というチャンネル名にしました。

「自分専属のヘアメイクになれ」

── 化け子さん流メイクのポイントは何でしょうか。

化け子さん:必要以上にキレイに見せるために、自分のよさを捨てて理想の姿を追い求めるのは違うと思っていて。その人らしさを活かすメイクを心がけています。女優さんだって、その人ができないような役はオファーされません。基本的に、本人のキャラクターありきなんです。YouTubeで一般の方にメイクするときも、普段着ている服や、好きな女優さんのタイプなどを聞いて、その人の好みや価値観を汲み取りながらメイクをしています。

YouTubeでは40代以上のさまざまな悩みに細かく応えている

── 自分は何が好きなのか、考えながら取り入れていくことが大切なんですね。

化け子さん:私の動画を観て「真似してやってみよう」って思ってもらえるなら、それがいちばんだと思います。自分で考えて試してみないと似合うかどうかもわからないし、似合わなかったとしても別のやり方をすればいいだけ。メイクをするときは自分の価値観や好みを大事にしてもらいたいなと思うんです。人がいいっていうものに惑わされていると、自分がかわいいって永遠に思えないですから。

メイクを正解か不正解かでジャッジしてしまう人が多くて、「私はブルーベースだから、この色しか似合いません」って決めつけちゃう。それはわかりやすい基準ではあるけれど、自分が喜んでいるかどうかを度外視するのはもったいないなって。情報に左右されないで、もっと「自分の心」にフォーカスしてもらいたいなと思います。

化け子

58歳には見えない、若々しい印象の化け子さん

── たしかに自分の好きな色でメイクすると、心がときめきます。

化け子さん:「自分専属のヘアメイクになれ」と私はよく言っているんです。私が女優さんの100%味方でいたように、自分の心に寄り添って、満たしてあげるメイクができることが大事。たとえばスキンケアなら、「肌は絹豆腐だ」と思って触れるとか。自分を優しく扱うことで、肌のコンディションも変わってきますから。40代~50代になると、肌がくすんでいるし若くないからとベージュのチークを選びがちですが、余計肌をくすませる原因に。大人こそ自分に似合う「かわいいピンク」を選んでみてください。疲れた顔も明るくイキイキします。

そうやって自分でメイクしてみて、「今日の私、かわいい」って思える感覚を育てることが最重要ポイントです。そうすると、心から自信を取り戻せるし、笑顔が出てくる。やっぱり笑顔に勝るメイクアップはないですから。

PROFILE 化け子さん

ばけこ。本名・岸順子。1966年、岡山県岡山市生まれ。現役のヘアメイク職人として芸能界で35年以上にわたり活躍を続け、トップクラスのベテラン女優から数多くの指名を受けている。そのキャリアを活かして54歳でYouTubeチャンネル「ヘアメイク職人_化け子」を開設。加齢の悩みを解消するプロのテクニックをわかりやすく解説し、登録者数は40万人を超える。今年6月に5冊目の書籍『化け子のオキテ。』(主婦と生活社)を上梓。

取材・文/小新井知子 写真提供/化け子