「落ちそう!」わざわざ屋根の端っこを得意げに歩く南仏プロヴァンスの猫

「落ちそう!」わざわざ屋根の端っこを得意げに歩く南仏プロヴァンスの猫

 こんにちは、世界を旅する犬猫写真家、新美敬子です。今回はフランス南東部プロヴァンスで出会った猫たちをご紹介します。

<プロヴァンスで出会った猫たちの写真(17枚)はこちら>

 ♫アヴィニョンの橋で、踊ろうよ踊ろうよ♫ と、町を歩きながら、この歌が繰り返し脳内で再生されていました。ここはフランス・アヴィニョン。雨があがった土曜日の朝、みるみるうちに晴れ渡り、空が抜けるように遠くなったのと同時に、通りに面した家の窓が一斉に開け放たれました。干したタオルケットの上に乗った猫は、気持ちよさそうでした。

 雨上がりの「この空気が好き」というように、あちらこちらの窓から猫が顔を出していました。

「ステキな猫だから、写真を撮りたいのですが、いいですか?」と声をかけると、「お好きにどうぞ。これから猫もいっしょにピクニックに出かけるから、窓を閉めるまでなら」と、答えてくれました。猫もいっしょに、ピクニック!? 詳しく聞きたかったけれど、忙しそうだったので、すぐにおいとましました。

 アヴィニョン中央駅から旧市街へと向かう途中で出会ったゴールデン・リトリーバー。たぶん、オスだと思います。だら〜っとした座り方がかわいかったので、その姿を撮りたかったのですが、カメラを向けた途端、キリッと座り直してしまいました。

 プロヴァンスはフランス南東部にある地域の呼称で、アヴィニョン、マルセイユ、ニースなどの都市があります。今回は、アヴィニョン、ヴィルヌーヴ・レザヴィニョン、エクサン・プロヴァンス、ボニュー、メネルブ、リュベロン、オランジュなどで出会った猫たちをご紹介します。

 ヴィルヌーヴ・レザヴィニョンは、アヴィニョンの新しい村という意味らしいのですが、アヴィニョンよりものどかで、古い村のような雰囲気です。

 川岸から“アヴィニョンの橋”として知られるサン・ベネゼ橋を眺めていると、大きな犬が颯爽と現れ、川に飛び込もうとした寸前で、飼い主から呼び止められました。「水鳥を捕まえられたのに、どうして?」と恨めしそうな顔でふり向きました。

 お城のような屋敷の重厚な木製の扉が開いて、そこから出てきた猫は、塀の上に飛び乗りました。扉を開けていた奥さんに話を聞きました。「家の中の庭もかなり広いのだけれど、猫は、高低差のあるところが好きだから、家の庭では満足しなくて、この塀の上に乗るのが好きなのよ」。

 猫の名前はジョゼフィーヌ。この家では、先祖代々猫を飼っていて、オスはナポレオン、メスはジョゼフィーヌ(ナポレオンの妻の名)と決められているのだそうです。「だって、猫は家の皇帝だもの。先祖が決めたルールに異存はないわ」。

 なだらかな三角錐のような地形の古くからある小さな村を訪ねました。村の入り口(麓)に駐車場があり、そこからは道が狭く車は進めません。気が向いたときだけお客さんの相手をするというカフェの猫が現れて、ラッキーでした。

 小高い丘の上の教会を囲むように螺旋状に家々が広がっている村です。教会から四方を見渡すと、ぐるりと赤い屋根が幾重にも見えます。猫が「お邪魔しますよ」といった足取りで、目の前を横切っていきました。

 もう少しで落ちそうなくらい、屋根の端っこを得意げに歩いている猫がいました。

 フランス国旗と同じ色に塗られた壁の窓から、猫が外を見ていました。この3色は「自由・平等・友愛」の意味があります。フランスに限らず猫の理念そのもの、という気がしました。

 教会の駐車場で暮らしている地域猫が、夕方のごはんを待っています。金属製の立派な猫の家が設置されていました。猫の世話をするボランティアさんによると、「理解ある教会でありがたい。里親探しの譲渡会も開催させてもらえるから感謝している」とのことです。

 遊歩道に面して住宅の玄関が向かい合わせに並んでいる住宅街です。遊歩道の真ん中をゆうゆうと歩いてやってくる猫がいました。街並みとともにその姿を撮ろうとしたら、猫はいきなり走り出し、ジャンプ。鳩のいる窓に飛び乗っていました。

 エクサン・プロヴァンスに滞在中、路線バスに乗って適当なところで降車ボタンを押した、名前も覚えていない町です。雰囲気がとてもよい町でした。「もうすぐツール・ド・フランスだから、町の人はみんなソワソワしはじめたわね。それが猫にも伝わっているのかしら? ふだんこの玄関の塀に乗っていることはないのに、お客さんを迎える予行練習をしているようで面白い。頼もしいわ」と、飼い主のマダムが話してくれました。

 公共の交通機関がないことと、居住者の高齢化で過疎化が進んでいた村も、20年ほど前から移住する人が増え、再び活気を取り戻しました。引っ越してきたばかりの猫が、村の様子をうかがっていました。

 宿泊先では、隣の家の猫と毎日、窓越しに挨拶を交わしました。「あなたの顔が見られてどんなに励まされたことか。ありがとうね」と、この地を去る朝に伝えました。

※南仏プロヴァンスへの行き方

 羽田空港、関西国際空港からパリ、シャルルドゴール空港まで直行便が出ています。ニース・コートダジュール空港へ乗り継いで、ニースから西へと路線バスや電車の在来線などで向かう方法が1つ。パリから高速列車でアヴィニョンへ行き、そこから小さな町や村を訪ねることもできます。