ヒヨコ、完璧主義…若手社員"3タイプ"の攻略法

(イラスト:髙栁浩太郎)

40~50代のビジネスパーソンにとって、部下との「会話力」は組織内で生き残るための必須条件。『週刊東洋経済』5月31日号の第1特集は「最強上司の会話力」だ。

チームで仕事を進めていくうえで欠かせない「報告・連絡・相談」のホウ・レン・ソウ。40〜50代なら、「ホウ・レン・ソウは仕事の基本だ」と教えられ、面倒だと思いながらも、言われたとおりにやってきた。

【図表】3タイプの若手社員攻略法

しかし今の若手の多くはホウ・レン・ソウを嫌がる。必要性のわからないことに時間を取られている、という意識が強いのだ。口に出して、「なぜ必要なのか」と聞いてくる若手もいる。これに明確に答えられないと、ダメ上司の烙印を押されてしまう。

「ホウ・レン・ソウをしておけば、何かあったときに証拠が残る。会社や上司でなく、あなたを守るための手段だ」

今風に言えば、これがホウ・レン・ソウが必要な理由である。若手は「自分軸」で物事を考える。自分にメリットがあると知れば、腹落ちするはずだ。

若手のタイプ別対策

ただ、それでもホウ・レン・ソウをしてこない若手もいる。これは本人の性格に理由がある。そこで、若手のタイプ別対策について説明していきたい。

タイプ1は「ヒヨコ社員」だ。ビジネススキルの基本が身に付いておらず、やり方がわかっていない。「失敗するのでは……」と怖くて、物事を進められないのだ。

このタイプは上司が一から丁寧に教えていく必要がある。「20%ぐらいできたら見せてね」と伝えておき、その都度、少しでもできていたら褒めて、間違っている部分は方向修正していく。

ヒヨコでも、ばかにはできない。まったく違う価値観を持っていて、ある分野では不死鳥のように無敵で、基本を身に付ければ大いに成長するかもしれない。

タイプ2は「完璧主義」だ。プライドが高く、できていない部分を見せるのを嫌う。

ゆとり世代で否定された経験がない若手に多い。IT(情報技術)リテラシーに関しては上司より高く、世の中のビジネスリーダーにまつわる知識も豊富である。自分はビジネススキルが高いと考えている。

だが、それでも実際のスキル、経験値に関してはヒヨコ社員とほとんど変わらない。

こういうタイプには、まず最初の段階で「仕事が終わるまでに経過を3回報告してね」「6割ぐらいでいいから、今週中に見せてね」などと伝え、報告が必須な状況をつくっておく。

また、根拠もなく自信だけ高い相手を指導するときには、できていない部分を指摘するのではなく、「あなたの理想を達成するには、この部分が足りていない」などと不足している部分を伝えるとよい。そうすると、不足を埋めようと必死になる。

仕事を「自分事化」させる

タイプ3は「返事だけいい社員」。返事だけはすばらしいが、実際には行動に移さない若手には、「いつまでにできる?」と聞いて、自分で期限を決めさせる。自分の口から出た言葉には責任感を持ち、達成できなかったときは罪悪感が生まれる。

「アポロ計画が成功できたのは、ケネディが1960年代の月面着陸を宣言し、ビジョンとしたから。期限がなければドリームで終わった」という有名なスピーチもある。

「返事だけいい社員」に限らず、どんな若手であっても、仕事を「自分事化」させて自ら気づき、考えるよう指導するとよい。例えばプロサッカーのコーチの指導方法では、「これはどうか?」とさまざまな場面でつねに選手に質問を投げかけ、叱ることはいっさいない。そのうち、選手が自分から気づくようになる。これが今の指導の主流になっている。

会社においても同じことで、若手が自分で気づく体質をつくっていく必要がある。

若手は生成AI(人工知能)のような自問自答のツールも使いこなせるから、上司が与えた質問をちゃんと考える。優秀な若手ほどAIで調べてきて、上司に質問をしてくるもの。そのときにきちんと答えられない上司では、がっかりさせてしまう。会社での経験値だけではもう乗り切れない。自分もAIで調べるなど、努力と工夫が必要だ。

傷つくと立ち直れない

一方、若手はインターネットには慣れているが、生身の人間とのコミュニケーションにおいては極めて「ヒヨコ」である。知識は持っているが、傷つくのは非常に苦手で、いったん傷つくと立ち直れない。

ただ、言葉に対しての感性が鋭い若者は多い。上司は「名言」のストックをしておくといいだろう。自分が小説や漫画で読んだり、人生において誰かから言われ「いいな」と思ったりした一言だ。「自分も迷っていたとき、この言葉に励まされた」などと伝えると、説教くさくならない。

多くの上司が、若手とのコミュニケーションに戸惑っている。しかし素直に見つめてみると、今の若者は、とても「いい子」が多いと思う。

私が講義を持っている大学でも、遅刻はめったになく、寝ている学生もここ5、6年の間に激減している。そして、おそらく中高年よりも、「人を傷つけたくない」という気持ちがとても強い。コロナ禍を経験し、学校の大切さ、友達と会える幸せをしみじみ感じているのである。

若手社員の問題は、見ているパソコンやスマホの画面の隅につねに転職情報が掲載されていて、嫌になるとすぐに転職してしまうこと。副業も当たり前で、キャリアの選択肢も多様だ。否定するのではなく、「若者はこういう性質を持っている」と理解することが必要だろう。

世の中の上司はみんな悩んでいるが、どんなことがあっても自分のせいにする必要はない。自覚を促したいのは、自分たちがさらに上の世代と若手世代とをつなぐ存在だということである。

アナログからデジタルへの切り替わりも経験しており、どちらにも対応できる世代であるといえる。若手から見れば何とか理解できる範囲にいて、話をしやすい人も少なくないだろう。自信を持って、若手との関係をつくっていってほしい。

(構成:ライター 圓岡志麻)