「夜パフェ」第2次ブームが第1次とひと味違う理由

今も根強い人気を誇る夜パフェ専門店「Parfaiteria beL」の商品たち(写真:GAKU提供)
ここ数年、夜間にパフェを提供する「夜パフェ」の店がにわかに増えており、第2次ブームとも呼べる状況となってきている。
【写真】思わずゴクリ… 息をのむ第2次ブーム「夜パフェ」の圧巻ビジュアル
「夜パフェ」の第1次ブームが起きたのは2018年頃だ。当時は、お酒や食事を楽しんだ後にパフェを食べる「シメパフェ」というスタイルを通して、夜パフェのお店が注目された。
そもそも「シメパフェ」は2015年に北海道で生まれた文化だ。その発信源となった店舗が「Parfaiteria beL」である。
同店は2015年7月に札幌市のススキノでオープンし、同地で「シメパフェ」というスタイルを確立した。その後、2017年10月に東京へ進出し、多くのメディアに取り上げられると、首都圏でも「シメパフェ」を提供する店が増加。その流れが全国に波及しつつあった。
だが、そこにコロナ禍が襲いかかる。その結果、飲みに行くこと自体が難しくなってしまい、「シメパフェ」のブームも自然と消滅していった。
しかし、ここ1、2年で「夜パフェ」のお店が盛り上がりを見せている。ブームの背景には、コロナ禍以降の市場環境の変化が関係しており、それが以前のブームとの大きな違いも生んでいる。
4年余りで20店舗を突破したテイクアウト専門店
以前のブームのときはイートインの店舗しかなかった。ところが、ここ最近の「夜パフェ」のお店には、テイクアウト専門店とイートイン店舗という2つのパターンがある。
テイクアウト専門店で店舗数を伸ばしているのが、UNIの展開する「アイスは別腹」だ。兵庫県姫路市で双子の兄弟がつくったブランドで、岡本直也社長は1999年生まれの、いわゆる「Z世代」だ。
1号店をオープンさせた2021年当時、岡本社長は大学4年生だった。そこから4年余りで20店舗を超えるまでに成長している。

Z世代ならではの発想が詰まった「アイスは別腹」の店舗(写真:筆者撮影)
一方、イートインの店舗で勢いがあるのが、CARTONの展開する「パフェバー &VIGO」だ。同社は千葉県柏市の柏の葉キャンパスに本社を置き、つくばエクスプレス沿線を中心とした千葉県内で飲食店を展開している。
「VIGO」が生まれたのは2022年。コロナ禍で密にならない業態の必要性を感じ、「夜パフェ」に着目。もともとビストロ&バーだった「VIGO」でパフェの提供を始めたところ人気となり、夜パフェ専門店として展開していくことにした。
2大コストを抑制し出店余地が拡大
それぞれ営業形態こそ異なるが、強みとして共通する点は多い。なかでも特筆すべきなのが、飲食店の3大コストである「食材費(Food)」「人件費(Labor)」「家賃(Rent)」のうち、人件費と家賃を抑えたことで、これまではお店が成り立たなかった場所でも営業できる点だ。
第1次ブームのときは「シメパフェ」というスタイルが主流だったため、店舗は飲み屋の多い場所にある傾向が強かった。Parfaiteria beLの渋谷店は渋谷駅西口の複合施設「渋谷フクラス」のすぐ裏手のビルにあり、渋谷駅まで3分ほどの場所だ。
一方、「アイスは別腹」のフランチャイズ店舗である横浜関内店があるのは、横浜の中でもディープなスポットとして知られている福富町だ。イセザキ・モールから道路を1本入った場所で、横浜スタジアムのある関内駅にも近いが、キャバクラやホストクラブも多い。
実際、横浜関内店もキャバクラやホストクラブなどが入るビルの1階にある。それでも営業が成り立つのは、商品力があり、目的来店で集客できるからだ。
横浜関内店は30種類ほどをラインナップしており、アイスと店名についているが、まるでパフェのような商品を提案している。なかでも「濃厚生チョコ」や「クリームブリュレ」などの人気が高い。
また、期間限定の「いちご生チョコ」や「盛りすぎマンゴー」など、フルーツを使った提案にも力を注ぐほか、少しアルコールを入れた「大人の深酔いパフェ」や、「こどもあいす」も提供しており、ラインナップの幅は広い。
商品の価格帯は700円前後がボリュームゾーンで、商品のサイズやクオリティーを鑑みるとかなりリーズナブルだ。Parfaiteria beLの商品は2000円前後がボリュームゾーンであることを考えると、その安さがわかるのではないだろうか。

「アイスは別腹」で人気が高い「濃厚生チョコ」(左)と、期間限定の「いちご生チョコ」(写真:筆者撮影)
ここ数年、スーパーやコンビニで売っているアイスの高価格化が進む。そうした背景もあり、「アイスは別腹」のコストパフォーマンスの良さが際立ち、わざわざ来店して買って帰る人が多い。なかには家族連れの姿もあるというから驚きだ。
以前は「夜パフェ」といえば、お酒や食事を楽しんだ後にパフェを食べる「シメパフェ」が主流だった。しかし、客層が広がり、リーズナブルな価格を実現した結果、純粋にアイスを楽しむ「夜パフェ」の専門店として成立するまでになったのだ。
商品目当てで来店する客が多い理由は、人件費と家賃を抑え、その分、食材にコストをかけられることが一因だろう。「アイスは別腹」はテイクアウト専門店のため、5〜10坪で出店ができ、スタッフも少人数で営業ができる。商品をつくる工程も簡略化されているため、新人でも1週間もあればできるようになるなど、教育コストもそれほどかからない。
同店の運営を手がける遠藤商会の担当者は、店舗の運営のしやすさについてこのように話す。
「『アイスは別腹』はインスタグラムをはじめとしたSNSで集客ができるので、通常の飲食店のようにグルメサイトに掲載しなくても集客ができます。その分、掲載費用や送客手数料といったコストもかからないので、非常に大きなメリットだと感じています。当店の場合、ディープなエリアにあるにもかかわらず初日は行列ができ、1日で700弱用意したパフェが完売しました。3月のオープンだったのですが、寒い日や雨の日でも集客ができているので、売り上げも比較的安定しています。アルバイトの募集についても、人手不足の中、非常に好調です。パフェ専門店自体の人気もあり、SNSや無料媒体で採用ができています」
イートイン店舗で起きた客層拡大のナゼ
「VIGO」も人件費と家賃を抑えて、以前のブームでは考えられなかった立地で成功をしている。例えば、「パフェバー&VIGO 柏店」は柏駅前の繁華街にはない。柏駅は東口にマルイや大きな商店街がある一方、西口には百貨店の高島屋があり、それぞれの周辺には居酒屋などの飲食店が軒を連ねている。
しかし、「VIGO」が店を構えるのは南口で、どちらかというと住宅立地に近い。それでも営業ができているのは、「アイスは別腹」と同じく目的来店で集客できているからだ。
「VIGO」は、店名にパフェバーと入っているとおり、ただの夜パフェ専門店ではなく、バーとしての一面も持つ。実際、甘いものが苦手な人も楽しめるように、ワインやウイスキーはもちろん、カクテルの提案にも力を注ぐ。その効果もあって、同店も「アイスは別腹」と同じく客層が広く、男性の一人客が来店するケースもある。
「シメパフェ」というスタイルだと、パフェを楽しむ人しか集客できない。しかし、バーという要素も加えることで客層が広がり、パフェを食べない人も楽しむことができる店となったのだ。
なお、同店のパフェの特徴は、季節の果物をふんだんに使っている点だ。常時4種類ほど用意しており、運営会社でイタリアンバルやハワイアンダイニングといった飲食店を展開してきたノウハウも生かしながら、月によって提案を変えている。
近年、肥料価格の高騰や異常気象の影響を受けて、国内の果物価格の値上がりが続く。その中でも旬の果物を使えるのは、やはり人件費と家賃を抑え、その分を原材料費に当てているからだ。
同店ではスマートフォンでオーダーする「モバイルオーダー」を活用して人手の削減を行っているが、それをスタッフに邪魔されることなく過ごせる空間づくりにつなげるなど、テクノロジーの効果的な活用もうまい。
生き残る外食店舗の必要条件を満たす

SNSでの拡散を狙い、思わず撮影したくなるメニュー提案を行う(写真:CARTON提供)
両店に共通するのは、コストを下げて、ある程度の売り上げで経営が成り立つモデルになっている点だ。損益分岐点の低さは、息の長いビジネスに欠かせない。その意味から、両店ともフランチャイズで店舗を展開しているが、その人気は高まっていく可能性がある。
人口が減少し、国内の外食市場も縮小していく中、生き残るのは来店動機があるお店だ。他店と同じような提案しかできないお店は、値下げ競争にさらされ、淘汰されていってしまうだろう。
そうした市場環境を踏まえて、フランチャイジーも新しい時代にあったフランチャイズモデルを探しているケースが多い。その側面から、今夏が猛暑となれば消費者側のニーズもおのずと高まっていくため、「アイスは別腹」や「VIGO」の店舗が一気に増え、「夜パフェ」ブームの勢いが加速する可能性は高い。