「一人でできるから」ゴルフ始めた引きこもり傾向の生徒も… 「トラブル起きるから友達いらない」子に最後は主将任せたPGA会長の思い
「ゴルフを通じて彼らの居場所が提供できる可能性がある」
引きこもり傾向は、ゴルフで劇的に改善できる。日本プロゴルフ協会(PGA)の明神正嗣会長が、ジュニアリーグが内包している無限の可能性について言及しました。そのキッカケは、5月19日に実現した明神会長と江崎禎英岐阜県知事のトップ会談。日本プロゴルフ選手権が岐阜県で開催されるため、明神会長が知事を表敬訪問した際に一致を見たのが「コミュニケーションの苦手な子供こそ、ゴルフに向いている」という説でした。その中身とは――。

江崎禎英岐阜県知事(左)を表敬訪問した明神正嗣PGA会長 写真:PGA提供
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日本プロは昨年に続き、岐阜県での開催。岐阜県が含まれる中部地区ではPGAジュニアリーグでは2年連続で中部「ZASSO(雑草)」チームが優勝を飾っています。
【写真】バレたら“永久追放”!? これがマスターズで“持ち込み厳禁”の品目ですPGAとの縁が深まる状況下、ジュニア育成の効用に言及したのは、江崎知事の方が先でした。
「子供たちにとってもメンタルを強くするスポーツは大事です。引きこもり傾向にある約35万人の子供たちに対しても、ゴルフを通じて彼らの居場所が提供できる可能性がある」(PGA公式サイトの会談リポートより)
その説に強く同意したのが明神会長。実は地元・高知の中学校と高校で、ゴルフ部のコーチ、監督と務めてきた中で、実際に引きこもりの子供がゴルフに打ち込むことで、改善した例を目の当たりにしていたからです。
「僕も経験上、ゴルフを子供に教えた時に引きこもり傾向とまでいかなくても、(他人との)コミュニケーションが取りにくい子供って結構いるんですよ。昔は誰かと遊ぶのが当たり前でしたが、今は家にいて、一人でゲームをして遊ぶ子が多い。でもそういう子でも、ゴルフは意外とやるんです。その話をしましたら、知事も『それはいいね』とすごく乗ってくれたんです」
ゲームも、ゴルフも一人でできる。それがストレートな動機である子供は少なくないというのです。「部活で教えてる時に『なんでゴルフをやりだしたのか』と聞いてみると『ゴルフは一人でできるからやりました』っていう子がいる。『なんで友達作らないの?』って聞くと『友達ができるとトラブルが起きる。トラブルが起きるから友達いらない』っていうんです」。
しかし、そんな子供がゴルフを続けるうちに変身。「中1から来た子でしたが、高校の時はキャプテンまでやらせました。コミュニケーションをとるのが苦手な子でしたが。今は社会人になって、何とかやっている様子です」。

ジュニアリーグの様子 写真:PGA提供
そうした子どもたちに、最も有効だと明神会長が考えるのが、今後注力していく「ジュニアリーグ」。
「ジュニアリーグは協力してやるでしょ。ゴルフは個人競技と思われがちですが、ジュニアリーグはそうじゃないんですよ。お姉ちゃん、お兄ちゃんが下の子の面倒を見ながら、下手でも助けながら、楽しくチームとしてやっています。同じユニフォームを着て、チーム感もある。これは大事なことですよね。こういうのをやっているんで、僕は本当にジュニアリーグがいいなと思いました。そこでジュニアリーグにとにかく力入れてやろうよ、ということで今動いているんです」
「ゴルフをするジュニアを増やすお手伝いをやっていけたら」
そんな明神会長の意気込みは、選手たちにも伝わっています。
この大会でジュニアリーグアンバサダーに任命された昨年の日本プロゴルフ選手権王者・杉浦悠太は「僕が行っているアカデミーは小学生もいれば、中学生もいます。自分も小学校の頃は県外の友達たちと試合で集まるんで、そういうところでゴルフをやるのは楽しかったです。PGAがジュニアにすごく力を入れている時に、一緒にやらせてもらえるっていうのはすごくうれしい。僕のやってみたいことの一つだったので、ゴルフをするジュニアを増やすお手伝いをやっていけたらいいな、と思っています」と、やる気十分の様子でした。

ジュニア振興を「僕のやってみたいことの一つ」と語る日本プロ王者・杉浦悠太 写真:清流舎
石川遼も、明神会長の言葉を聞いて賛同の意を表します。「子供の人口自体が減っているので難しいですけど、本当にそういうのに一役買える部分があるなら、どんどんしてほしい。団体戦のジュニアリーグは競技志向じゃなくてもいいんですけど、ゴルフのプレー人口が増えていくようなことには(協力)していきたいです」と言い切りました。

「一役買える部分があるなら」と石川遼 写真:清流舎
PGAにとって最大の懸案だった日本プロゴルフ選手権のスポンサー問題。日本プロは2010年から17年まで冠スポンサーを務めた日清食品HDが撤退後、代替スポンサーが見つからず、PGAは少なくない赤字を補填し続けていました。明神会長にとっても昨年3月に就任後、真っ先に取り組むべき問題として掲げ、理事を中心にスポンサー探しに奔走してきました。
その問題が、ひとまず解決。同大会の開幕前日の会見で、日本プロゴルフ協会(PGA)は26年から28年までの3年間、センコーグループホールディングス(センコーGHD)の冠協賛が決まったことと、同社保有の蒲生ゴルフ倶楽部(滋賀県)にて3年連続で開催されることが発表されました。難題をクリアして、次に取り組むべきはジュニアリーグへの注力。
ジュニアリーグは米国で成長し、17年には米国で3400チーム4万2000人の子どもたちが参加。オフィシャルアンバサダーとしてローリー・マキロイ、リッキー・ファウラー、レクシー・トンプソン、ミシェル・ウィーなど有名選手も協力しています。
「日本におけるジュニアの競技環境は、個人レベルでの競い合いを目的としたものが多く、これによりさまざまな弊害も生まれております。このプログラムによりジュニアゴルファーのコミュニティーが生まれ、本来のゴルフの楽しさを体験してもらい、素晴らしいゴルフを継続してもらうことを願うものです」(PGA公式サイトより)
今年は全国13地区に拡大され、6月からリーグ戦が開幕。全国優勝を目指して、各地で熱い戦いが繰り広げられます。この活動によりジュニアゴルファーがさらに増えていくことになれば、ゴルフの価値が見直されるチャンスも広がりそうです。
取材・文/小川朗日本ゴルフジャーナリスト協会会長。東京スポーツ新聞社「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女メジャーなど通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。東京運動記者クラブ会友。新聞、雑誌、ネットメディアに幅広く寄稿。(一社)終活カウンセラー協会の終活認定講師、終活ジャーナリストとしての顔も持つ。日本自殺予防学会会員。(株)清流舎代表取締役。
小川 朗(日本ゴルフジャーナリスト協会会長)