万博で「ホテル難民がフェリーに殺到」の納得理由

万博前から慢性状態?関西のホテル不足 なぜ? , フェリーなら「実質日帰り・弾丸万博ツアー」もOK!, ホテルが足りないのは万博前から 「宿泊費高騰」はフェリーに有利に? , 「このホテル、動くぞ!」高松に着いても降りない「ふね泊」人気の理由 , そもそも、フェリーが便利すぎる!, 半世紀前の万博でも就航していた

フェリーで万博会場に向かう人々も多いという。写真は「ジャンボフェリー・りつりん2」(筆者撮影)

万博の開催で関西のホテルが軒並み高騰する中、万博への移動手段として、夜行フェリーの利用が軒並み伸びているそうです。
フェリーなら朝イチで関西到着、夜には帰ることができるため、「0泊3日・万博行き弾丸ツアー」が可能。なかには、フェリーをホテルのように過ごせる「行って戻るだけ」サービスを開始した航路もあるとのこと……。意外な形での"好況"の実態を、乗り物に詳しいライター・宮武和多哉さんが現地から解説します。

万博前から慢性状態?関西のホテル不足 なぜ?

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万博会場(筆者撮影)

2025年4月から開催されている大阪・関西万博では、関西との交通の便が良い九州・四国からも、おおよそ165万人の来場が見込まれている。(大阪・関西万博 来場者輸送アクション・プランより)

【画像】意外と快適?万博へ行くフェリーの内部や、充実したグルメ

距離にして100km~500kmの移動で、夜行フェリーがよく使われているという。関西から九州・四国へ運航するフェリー各社にアンケートをとったところ、「前年比で徒歩利用が+400人」(フェリーさんふらわあ・志布志航路)「徒歩客1600人・前年比でプラス15%増」(オレンジフェリー)など、軒並み大幅な利用増を記録しているようだ。

関西への移動手段としては、ほかに新幹線・飛行機、高速バスもある。その中で、なぜフェリーが重宝され、“万博特需”に沸いているのか。

背景を読み解いていこう。

フェリーなら「実質日帰り・弾丸万博ツアー」もOK!

万博への来場手段としてフェリーが選ばれる、最たる理由は「寝ながら移動できる」ことだ。

「さんふらわあ・別府航路」を例にとると、夕方の18時台・19時台(平日・週末で違う)に別府港を出港。船内には子供が大はしゃぎできるキッズルームやレストランなどもあり、部屋はドミトリーに近い相部屋タイプからファミリーで使える部屋まで、ほぼ地上のホテルに近い居心地で熟睡できる。

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大阪~別府間に就航する「さんふらわあ むらさき」。

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夜行フェリーは食事も豪華だ。写真は「阪九フェリー」(筆者撮影)

早朝には大阪南港・コスモフェリーターミナルに到着。目の前のトレードセンター前駅(大阪メトロ・ニュートラム)から乗り換え1回・10分少々で「夢洲駅」に到着、万博・西ゲートは目の前だ。

なお帰りは19時台に大阪出港、早朝に別府に到着するため、「ホテル0泊(フェリーで2泊)」での万博行きが可能。会社を休むのは、万博会場を巡る1日だけで済む。

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名門大洋フェリー「フェリーきょうと」(筆者撮影)

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九州・四国から関西への夜行フェリー一覧(阪神フェリー協議会 ホームページより)

九州・四国から関西方面には6社・9航路の夜行フェリーが就航しており、いずれも万博会場のある関西への移動には便利だ。

かつ、鉄道・バスやクルマ(高速道路)で港に移動することで、かなり広範囲にわたる地域の人々がフェリーを利用できる。

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オレンジフェリーのファンネル(煙突)(筆者撮影)

先に述べたとおり各社・各航路とも利用状況は好調のようで、なかには「オレンジフェリー」(愛媛・東予港~大阪南港)のように「万博アクセスプラン」を設定、大阪側の港から西ゲートまでの直行バスを運行している場合もある。

なおオレンジフェリーでは、万博会場発のバスを2往復・4本設定しており、21時に西ゲートを発車するバスなら「バスに乗りながらドローンショーを眺めることができる」など、利用する側が新しい楽しみ方をどんどん見つけているのだという。

またオレンジフェリーでは、万博開幕後の1カ月で「大阪発・東予港着のインバウンド観光客が前年比267%」とのこと。フェリーは万博への移動手段としてだけでなく、1日目は万博、2日目は地方と、来場者を地方に行きわたらせる交通手段としても役に立っているようだ。

ホテルが足りないのは万博前から 「宿泊費高騰」はフェリーに有利に?

「移動しながら宿泊」といった使い方は夜行の高速バスでも可能だが、狭い座席で横になれず、朝の到着時には疲れ果てている。

新幹線・飛行機ならフェリーよりはるかに速く大阪入りできるものの、ここで問題となってくるのが「宿泊先の確保」「ホテル代の高騰」だ。

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グラングリーン大阪。周辺ではホテル開業が相次いでいる(筆者撮影)

関西一円での「ホテル不足・料金高騰」は、万博前に始まったことではない。特に大阪府はインバウンド(訪日観光客)が1年で1.5倍増加したこともあり、府内の宿泊施設の稼働率は2024年12月の時点で83.2%。東京都を大幅に上回ってトップに立っており、ここに万博開催が追い打ちをかけている。

宿泊の需要が逼迫したことで、ホテル各社の料金は高騰する一方だ。大阪府内の平均客室単価は1万9569円と、コロナ禍のさなかの倍以上に上昇(STR調べ)。カプセルホテルでも平日の宿泊費用が40%も上昇しているという。

大阪でのホテル高騰は京都府・兵庫県にも波及し、もはや関西全体で安く泊まれない状況が続く。ここまで高騰したホテル代に新幹線・飛行機などの料金を加えると、前泊で万博に行くと1人3万円、4万円は平気でかかってしまう。

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夜行フェリーは内装も豪華で、まさに「動くホテル」だ(筆者撮影)

いっぽうで、九州~関西航路のフェリーは1人7000円・8000円から、ファミリー向け個室も2万円少々あれば利用できる。

フェリーは新幹線・飛行機よりお得な運賃で移動できて、ホテル代わりに利用もできるとなると、圧倒的にコスパ・タイパが良い。だからこそ、万博への移動手段として選ばれているのだ。

「このホテル、動くぞ!」高松に着いても降りない「ふね泊」人気の理由

高松東港~神戸・三宮港を結ぶ「ジャンボフェリー」は、万博開催を見据えて、ホテル代わりにフェリーを利用できる「ふね泊」サービスを開始した。

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ジャンボフェリー あおい(筆者撮影)

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実際に「ふね泊」で宿泊できる「バルコニー個室」(筆者撮影)

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ジャンボフェリーの船内グルメ。なかなかの充実ぶりだ(筆者撮影)

ほかの夜行フェリーが睡眠中に移動するのに対して、ジャンボフェリーの「ふね泊」は三宮港で夕方19時台に乗船後、高松東港まで行って……降りずに、そのまま三宮に引き返す。宿泊中に100㎞ばかり海上を動いているだけで、実質的には「三宮のホテルで1泊」と変わらない。

宿泊できるフェリー「あおい」は2023年就航で、展望風呂や足湯もあり、食堂ではうどんを食べることもできて、瀬戸内海を見渡せるテラスまで完備。ひと晩を過ごすには、十分すぎるほど快適だ。

料金は1人1泊で4990円(ロフトタイプ個室)から9990円(専用バルコニー付き個室)(※週末は割増料金あり)だが、大阪・神戸の宿泊料金がカプセルホテルでさえ1万円を超えるほどに高騰したいまとなっては、「ふね泊」のほうがお得に見えてしまう。

ジャンボフェリーによると、「毎日途切れることなく3〜8組前後は予約が入っている」と、かなり利用されているようだ。もともとのホテル高騰と万博開催をきっかけに「ふね泊」を設定したジャンボフェリーの“アイデア勝ち”といえるだろう。

ただ、もとより多客のお盆期間中などには、「ふね泊」は設定されないので注意が必要だ。

そもそも、フェリーが便利すぎる!

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宮崎カーフェリー(筆者撮影)

「熟睡しながら移動」「ホテル代高騰」……万博開催でフェリーが利用される理由はいろいろあるが、根本的には「そもそも便利だから」のひとことに尽きる。

特に九州~大阪間では「安くて快適、数百人を運べる」といったメリットを存分に発揮し、同ルートの高速バスはことごとく廃止に追いやられている。

また四国でも、距離的に海上をショートカットできるフェリーは、鉄道・バスより割安な運賃で対抗でき、「便利で安くて、ホテル代わりにできる」乗り物として、昔から存在感を発揮しているのだ。

半世紀前の万博でも就航していた

また前回の大阪万博(1970年)開催に合わせて「バンパックフェリー」(愛媛県・新居浜港~神戸港~大阪南港。1998年まで運航)が就航するなど、「大阪に行くなら船、万博には船」といった行動様式がしっかり残っている。

平成に入ってかなりの航路が消滅したとはいえ、いま残るのは鉄道・バス・航空との競争を勝ち抜いた航路ばかり。万博への移動手段として利用されるのは、ある意味当然でもあるだろう。

10月まで続く万博の開催期間中にフェリーがどこまで利用を伸ばし、閉幕後もフェリーを使ってくれるようになるか。関西のフェリー業界にとって、“万博特需”のあとを見据えた繁忙期は続く。

【もっと読みたい】「並ばない万博」初日から2時間待ち!行ってみてわかった「大阪・関西万博」の”根本的な問題”とは? では、大阪万博の実態について、ライターの宮武和多哉さんが現地からレポ。豊富な写真とともに解説している。