芳根京子主演「波うららかに、めおと日和」最終回目前、3組の恋愛模様に注目 昭和10年代の“愛の形”

「波うららかに、めおと日和」
「波うららかに、めおと日和」(毎週木曜夜10:00-10:54、フジテレビ系/FOD・TVerにて配信)が、いよいよ最終回を迎える。初回放送時こそ、あらゆるドラマと肩を並べてスタートした本作だが、回を追うごとに注目度が増していき、第4話放送時点で見逃し配信累計1300万再生を突破しニュースに。TVerの登録者数も、第9話放送後には113万を超え、4月クールのドラマの中では第2位まで駆け上がった。
この人気の裏には、最近のドラマにめずらしく“昭和の新婚夫婦のウブな愛”を描き、視聴者に新鮮味を与えたことも大きいと思うが、もちろんそれだけではない。話数を重ねるにつれてなつ美(芳根京子)&瀧昌(本田響矢)以外の恋模様が見えてきたことも大きなポイントだろう。

「波うららかに、めおと日和」第1話より
第6話以降に見えてきた江端夫婦以外の恋模様
芙美子(山本舞香)&深見(小関裕太)は、思えば芙美子初登場時からその匂いがあった。海軍士官の妻たちによる「花筏の会」の手伝いに駆り出された芙美子は、なつ美と知り合い仲を深めていくが、会の最中に芙美子のお見合い話が出た際、競争率が高いとされている深見の名前をわざと挙げて話題をそらしたのだ。
その後は、なつ美と瀧昌の夫婦喧嘩を2人で仲裁したり、ランデブーをしたり。果てはお見合いや芙美子のきょうだいとの顔合わせもあり、着実に距離を縮めてきた2人。最初はどこまで本気なのかわからない言動を見せていた深見も、芙美子がわずかに本音をもらすたびクラッときているのがよくわかる。最終回でも、きっと大きな進展が観られるだろう。
さらに、第9話では郁子(和久井映見)&邦光(小木茂光)の柴原夫婦の馴れ初めが回想とともに語られた。子供が産めない体だった郁子は、邦光とのお付き合いを断つ選択をしたが、半年後に再び現れた邦光から「子供がほしいのではなく、あなたとともに年をとりたい」とプロポーズを受けたと告白するのだ。
「瀧昌様は、子供が欲しくないのかもしれない」と悩むなつ美に、「(子供がいなくても)私は今、幸せよ」と語り、「そういう道もある」と示すシーンではあったが、それまで明かされてこなかった郁子と邦光のラブストーリーを思いがけず知ることができ、キュンとした視聴者は多いはず。
なんの憎悪もなく、好きな人を思う。形の違う3組の純愛が、視聴者の心を掴んで離さない。

「波うららかに、めおと日和」第4話より
失う恐怖に駆られながらそれでも愛し続けた時代
そんなドラマのはじまりが、昭和11年だというところも忘れてはならない。満州事変、上海事変はすでに起きたあとで、翌年には日中戦争が勃発。常に不穏な空気が漂う時代だ。穏やかな日常を送りながらも死とは隣り合わせにあって、自分や愛する人が明日生きているかどうかもわからない。
劇中では年が明けて昭和12年になっているため、第9話で瀧昌に緊急招集がかかったシーンでは「ついに」と思った視聴者も多いだろう。「生きて帰ってきて」と願う声も多くあがっているはずだ。
令和よりもはるかに、人との繋がりが儚かったこの時代。愛する人を「いつ失うかもわからない」という恐怖にかられながら、それでも愛し続ける“覚悟”は、今の時代にはない観念なのかもしれない。そして、そんな時代の「純愛」を現代人はまず味わえない。だからこそ視聴者は惹かれているのかもしれない。

「波うららかに、めおと日和」第5話より
移ろいを丁寧に演じたからこそ輝く見せ場の芝居
芳根と本田の芝居も、実に趣深い。
第6話で、結婚前から出会っていたことが判明し、その運命に導かれるように初夜を迎えたなつ美と瀧昌。このあたりから、本音を言い合える仲になってきた印象があるが、加えて役者2人の芝居にも一段と熱がこもり始めた。
子供ができたら楽しいだろうけど、なつ美をつらい目にあわせたくない。そう葛藤する瀧昌の言葉に被せるように言ったなつ美の「大丈夫です」は、これまでの彼女には見られなかったほど強い語気で、芳根の芝居の奥深さを印象付けるシーンとなった。
穏やかでおしとやかななつ美がここまで強いセリフを放ち、なおかつ視聴者に違和感を感じさせないのは、「瀧昌との子供が産みたい」「誰よりも大切な方なので」と言うほど瀧昌への愛情が高まっているから。そして、その気持ちの高まりを、ロジックを感じさせず気持ちだけで魅せた芳根。彼女の経験値の高さによって、間違いなく名シーンとなった。
一方の本田も、第9話に見せ場が。緊急招集により艦に戻った瀧昌が、大きく揺れる艦内で事故に巻き込まれ倒れてしまうのだが、ぼろぼろになりながらも立ち上がるのだ。そこには、なつ美を思うがゆえの生への執念があった。
過去には、郁子から「瀧くんは、自分を軽んじているところがある」「いつか自分から戦火に飛び込むんじゃないか」と言われるほど自己犠牲の精神で生きていたが、なつ美と出会ったことで変わった瀧昌。その移ろいを、丁寧に表現してきた本田だからこそ、このシーンの真価にたどり着けたのだと思う。見ているこちらも全身に力がこもる、名シーンだった。
出会いも別れもカジュアルになった現代人にとって、ことさらピュアに映る『めおと日和』。裏切りも罪悪もないこの世界を、あと1話、存分に堪能したい。
構成・文=松本まゆげ