「ガンダム」最優先、夢の「趣味部屋」に住む31歳

ガンダムは怒涛の供給が続く“不滅のコンテンツ”, ガンダムなら大人になっても遊んでいられる, 個性のない人生に“色”をつけてくれた「ガンダム愛」, 誰にも邪魔されない“趣味部屋”をつくる夢, 趣味と暮らしを両立させた部屋

小学生の頃からガンダムとともに育ったタカハシさん。この趣味部屋を作ることは、彼の夢そのもの(撮影:今井康一)

ひとり暮らしの部屋には、その人の生き方が反映される。どんな理由でその住まいを選び、どんな思いで空間を整えたのか。そこには、人それぞれの暮らしの哲学が隠れている。本連載『だから、ひとり暮らし』では、そんな問いを手がかりに、住人たちの人生に触れていく。

今回訪ねたのは、ガンダム愛を原動力に生きるタカハシさん(31歳)。コレクションをテーマにしたYouTubeチャンネル「タカハシラボラトリー」、通称「タカラボ」でガンダムのプラモデル等について発信。今では登録者数16.5万人を誇る。

【写真】塗装スペースになっているキッチン

埼玉県の住宅地にある、ごく普通のアパート。しかし玄関の扉を開けた瞬間に、圧倒的なガンダムの世界が広がる。広さ65㎡の3DKは、趣味のために選び抜いた物件だ。部屋中には整然とディスプレイされたガンプラや関連グッズが並び、生活感は極限まで排除されている。

「こういう趣味部屋をつくるのが、子どもの頃からの夢だったんです」と語るタカハシさん。時間も空間も、自分の好きのためにとことんチューニングされたガンダムマニアの夢の城だ。

2025年春に放送が始まった新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ガンダム ジークアクス)』は6月が最終回だが、Amazonでの配信や劇場版のヒットも相まって、ガンダム人気はふたたび熱を帯びている。往年のファンに加え、新たな世代もその世界に引き寄せられている。

ガンダムは怒涛の供給が続く“不滅のコンテンツ”

「ガンダムの供給は絶えることがない。だからガンダムマニアは、ずっと幸せでいられるんです」(タカハシさん 以下の発言すべて)。

ガンダムは怒涛の供給が続く“不滅のコンテンツ”, ガンダムなら大人になっても遊んでいられる, 個性のない人生に“色”をつけてくれた「ガンダム愛」, 誰にも邪魔されない“趣味部屋”をつくる夢, 趣味と暮らしを両立させた部屋

タカハシさん(31歳)/ ガンダムファン歴数十年のコレクター。YouTubeを通じて、これまで集めた自宅のガンダムコレクションを紹介し、ガンダムやガンプラの魅力を発信している。 YouTube:タカハシラボラトリー『 タカラボ 』(撮影:今井康一)

【写真】タカハシさんの部屋の様子を写真で(14枚)

アニメが終わってしまう寂しさ、続編が出ないもどかしさ──そうした“推しの供給”の断絶が多くのファンを悩ませるなかで、ガンダムは特殊なコンテンツだ。

ガンダムは怒涛の供給が続く“不滅のコンテンツ”, ガンダムなら大人になっても遊んでいられる, 個性のない人生に“色”をつけてくれた「ガンダム愛」, 誰にも邪魔されない“趣味部屋”をつくる夢, 趣味と暮らしを両立させた部屋

普段配信をする部屋。隙間なく棚を入れられるように、採寸は厳密にした。ガンダムの配色を基調にしたカラーリング(撮影:今井康一)

「短いスパンで新作が発表されたり、毎月のように新しいプラモデルが発売されたり。むしろ追いつけないくらい」とタカハシさんは笑う。

40年以上にわたり、作品もグッズも途切れることなく供給されるガンダムという存在は、「安心できるベース」として彼の暮らしの根幹にある。

ガンダムなら大人になっても遊んでいられる

ガンダムとの出会いは6歳の頃。スーパーの帰りにガチャガチャで、小さなモビルスーツのフィギュアを手に入れた。名前も世界観もまったく知らなかったが、なぜか心をつかまれたという。

「名前も知らないのに、なんか惹かれたんですよ。デザインも雰囲気も、子ども心に“かっこいい”って思ったんだと思います。その数日後に、父親がふと買ってきたプレイステーションのゲームのなかに、あのフィギュアとまったく同じ機体が登場して『あ、これだ!』ってビビッと来た感じでしたね」

その日から“ガンダムのある日常”が始まった。新しいシリーズが始まれば自然と夢中になり、時代の流行とは関係なく、関心はいつもそこにあった。

ガンダムは怒涛の供給が続く“不滅のコンテンツ”, ガンダムなら大人になっても遊んでいられる, 個性のない人生に“色”をつけてくれた「ガンダム愛」, 誰にも邪魔されない“趣味部屋”をつくる夢, 趣味と暮らしを両立させた部屋

(撮影:今井康一)

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(撮影:今井康一)

ガンダムは怒涛の供給が続く“不滅のコンテンツ”, ガンダムなら大人になっても遊んでいられる, 個性のない人生に“色”をつけてくれた「ガンダム愛」, 誰にも邪魔されない“趣味部屋”をつくる夢, 趣味と暮らしを両立させた部屋

(撮影:今井康一)

「僕が子どもの頃、『遊☆戯☆王』とか、いろんなブームがありました。でも流行が終わると、みんな急にやらなくなるんですよね。『あれ、もう遊ばないんだ』って、ちょっと寂しかったんです。

そんななかでガンダムだけは違って、自分ひとりでも楽しめるし、大人でもずっとやってる人がいる。調べれば調べるほど知らなかった情報が出てきて、探究心がくすぐられます。だから『これならずっと遊べるじゃん』って思って」

個性のない人生に“色”をつけてくれた「ガンダム愛」

高校時代、タカハシさんは“ガンダム好き”という自分の個性を、あえて前面に出すことにした。

「中学の頃は、ガンダムが好きって堂々と言うのがちょっと恥ずかしかったんです。その頃はまだ“オタク”って言葉にネガティブなニュアンスが強くて、アニメが好きってだけで引かれたり、からかわれたりすることもあって。

自分も、特別勉強ができるわけでも運動が得意なわけでもない何の特徴もない、普通の男子中学生でしたから、余計に自分からわざわざ“浮く要素”を出すのが怖かったんですよね」

でも、高校に進学したとき、気持ちがふっきれたそうだ。

「開き直りました。“ガンダムのやばいやつ”って思われたほうが早いなって。で、実際に言ってみたら、けっこうすぐにクラスで顔と名前を覚えてもらえたんですよ。“ガンダム好きのタカハシ”って、それだけで認識される。そこでようやく、自分が“誰か”になれた気がしたんです」

それは、彼にとって最初の「自分を名乗る」感覚だったのだろう。誰かと違っていてもいい。むしろ違うからこそ、覚えてもらえる。そんな経験は、彼の中でひとつの芯になっていく。

それからのタカハシさんは自信をもってガンダム愛を貫いていった。大学卒業後の就職先は某玩具メーカーで、ガンダムの商品紹介の動画にも出演していたそうだ。

「本当に楽しかったですね。大好きなガンダムについて、自分の言葉で伝える体験が病みつきになりました。学生時代、文化祭で映像制作をやったことはあったんですけど、プロの現場で毎週ライブ配信をやるって、全然違うんですよ。緊張もするし、準備も大変だけど、それ以上に楽しかったです」

その一方で、現実的な葛藤もあった。「この先、ガンダムに浸っているだけで大丈夫なのだろうか」と思うようになった。好きなことを仕事にできているという手応えがあるぶん、その先にある「生活の持続性」を考えるようになったのだ。

「仕事としては、本当にずっと続けたかったんです。でも、やっぱり生活っていう意味で言うと、現実的な不安があって。もしこれで数年後、何かあったとき、自分はどうやって食べていくんだろう……って。だから一回、普通の仕事をちゃんとやってみようと思いました」

ガンダムは怒涛の供給が続く“不滅のコンテンツ”, ガンダムなら大人になっても遊んでいられる, 個性のない人生に“色”をつけてくれた「ガンダム愛」, 誰にも邪魔されない“趣味部屋”をつくる夢, 趣味と暮らしを両立させた部屋

配信するだけでなく、プラモデルを手に入れたり作ったりする時間も必要なので、 本業以外の時間はガンダム一色(撮影:今井康一)

そうして歯科資材の営業職を経て、現在は建築系の仕事をしている。体力的にも時間的にもハードな日々だが、世間を知り、収入もアップ。社会人としての自信がついてきた。

「ガンダムは本業ではなく、余暇に楽しむものになりました。でも仕事以外の時間はガンダムに全振りしています。平日は仕事から帰ってきてから、夜にYouTubeの撮影とか編集。

そもそも動画をつくる前に、まずガンプラを組み立てなきゃいけないですし。土日はスケジュールを空けて、制作や撮影、アップの準備。ほんと、1分1分が貴重です」

彼が運営するYouTubeチャンネル「タカハシラボラトリー」は、ガンプラを中心とした趣味チャンネルとして名が知られるようになり、収益も上がるようになってきたそうだ。

「ガンプラを買うのにも、この趣味部屋を整えるのにもお金がかかるので、本業とは別に収入があるのは自分への安心に繋がっています。プラスマイナスゼロかもしれませんけど(笑)。動画を通じてガンダムの素晴らしさを共有できるのが嬉しいです」

誰にも邪魔されない“趣味部屋”をつくる夢

「ガンダムが人生の優先順位でいちばん上にある」と彼は言う。その言葉には迷いがない。

「うん、やっぱりそう思います。だからといって、ずっとひとりで生きていこうとは思ってないですよ。僕の趣味への熱量を理解してくれる人であれば、パートナーがいてもいい。もちろん相手にも大切なものがあると思いますし、お互いを尊重できれば問題ないですよね」

社会人として、仕事と趣味の優先順位を切り替えながらバランスをとるように、対人関係と趣味の両立はできると、タカハシさんは考えている。それは「相手が理解してくれるならOK」という一方通行の考えではない。

「最初に自分のことをきちんと話して、分かってもらうことが、大事だと思っていて。たまに、大事なコレクションをパートナーに捨てられたという、マニアの悲劇を聞きますけど。ちょっと不思議なんです。『夫婦になるのに、ちゃんと自分のことを話して、分かってもらっていなかったのかな』って思うので」

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圧巻の「積みプラ」(プラモデルの箱を積み上げたもの)。プラモデルは組み立てる 前のパッケージも重要(撮影:今井康一)

タカハシさんは、歴史あるガンダムのハードなマニアでありながら、相互理解を前提としたパートナーシップを、ごく自然にイメージできる「令和の若者」でもあるのだ。では、将来パートナーや家族ができたら、このガンダム部屋に一緒に住む可能性はあるのだろうか。

「それは……無理ですね。やっぱりこの空間は、ガンダムのためだけの場所なんです。他のものが混ざってしまうと、どっちも中途半端になる気がして。

だったら、家族で暮らすための家は別に用意して、ここは好きなことに全振りする場所であり続けたい。そのために月々6万5千円という無理なく維持できる家賃の部屋を借りているんです」

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笑顔でガンダム愛を語るタカハシさん(撮影:今井康一)

ガンダムという絶え間なく拡張する世界と、自分自身の生活。そのふたつを、どう共存させていくのか? タカハシさんが選んだ答えは、「混ぜる」のではなく「並べる」だった。

趣味と暮らし、それぞれの“居場所”をきちんと分けながら、どちらも手放さずに生きていく。夢への強い思いと現実的なバランス感覚を併せ持つタカハシさんを見ていると、そんなライフスタイルも実現可能なのではないかと思えた。

趣味と暮らしを両立させた部屋

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ディスプレイケースにもこだわりがある、そんなノウハウも動画で公開している(撮影:今井康一)

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プラモデルを作るスペースは本のように閉じられる(撮影:今井康一)

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家電やベッドなど、生活感のあるものは一室に集約している(撮影:今井康一)

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料理はしないので、換気の良いキッチンは塗装スペースに(撮影:今井康一)

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インドア一辺倒ではなく、友だちと自転車で遠出を楽しんだりする一面も(撮影:今井康一)

【写真】タカハシさんの部屋の様子を写真で(14枚)