予約だらけの万博に「予約不要」で攻めるバス会社

万博会場西ゲート前のバスターミナルに着いたエキスポ神戸号(筆者撮影)
4月13日から始まった大阪・関西万博は早くも後半戦に入った。万博に行くと、パビリオンや交通機関も含め、「予約」という単語を飽きるほど聞く。意地悪く表現するなら、大阪・関西万博は予約に振り回される万博といえるかもしれない。
【この記事の写真を見る】早朝の神姫バスの神戸三宮バスターミナル。バスは7時前に満席で発車し、7時30分すぎに万博会場西ゲート前のバスターミナルに到着した。さすがに早すぎる?
そんな中、あえて「非予約制」で立ち向かうバス会社がある。それは、兵庫県姫路市を拠点とする神姫バス。万博会場の夢洲へ直行するバスを運行する。非予約制の万博直行バスの実像に迫ってみた。
万博バスの概要
関西圏から万博会場の夢洲に向かう直行バスは、主要駅シャトルバスと中長距離バスに分類できる。主要駅シャトルバスは、JRゆめ咲線の桜島駅、大阪駅、新大阪駅、大阪上本町駅、なんば駅などの主要駅から出発する。桜島駅発着便を除き、予約が必要だ。
予約は関西の主要鉄道会社が制作したアプリ「KANSAI MaaS」から行う。シャトルバスの主な運行会社は、阪急バス、西日本ジェイアールバス、近鉄バスなどの鉄道系バス会社だ。バスのタイプは、路線バスタイプもあれば高速バスタイプもあり、実にさまざま。一部の路線では、自動運転バスも運行する。
一方、中長距離バスは、京都駅(京阪バス)、奈良駅・大和八木駅(奈良交通)など、主に大阪府外からの主要駅から出発する。神姫バスも中長距離バスに含まれる。主要駅シャトルバス、中長距離直行バスともに、万博会場の西ゲート前にあるバスターミナルに発着する。
神姫バスは、大阪・関西万博開催中の4月13日から10月13日まで、万博会場の夢洲行き直行バス「EXPO(エキスポ)号」を運行する。エキスポ号には、エキスポ神戸号(神戸空港・神戸三宮―万博会場)、エキスポ姫路号(姫路・加古川―USJ・万博会場)、エキスポ三田号(ゆりのき台4丁目―USJ・万博会場)が存在する。このうち、毎日運行はエキスポ神戸号とエキスポ姫路号だ。いずれも万博直行バスには珍しく、予約不要の定員制(自由席)の高速バスとなる。つまり、乗車は先着順となり、バス停やバスターミナルで並んで待つ。
6月・7月の2カ月連続で増便が決まる
ダイヤ上の所要時間は、神戸三宮から万博会場までが48分、姫路から万博会場までが2時間15分。料金は神戸三宮~万博会場間が1000円、姫路駅~万博会場間が2000円だ。7月1日時点での万博会場行き定期便の運行本数は、エキスポ神戸号が1日22本、エキスポ姫路号は1日2本だ。
実はエキスポ神戸号、エキスポ姫路号ともに利用状況がよく、エキスポ神戸号にいたっては6月・7月の2カ月連続で増便が決まった。
好調な利用状況は、神姫バスの資料からもわかる。4月13日~21日のエキスポ神戸号は、第2便(8時45分発)は出発直前であっても乗車できた日が存在し、座席に余裕があった。一方、6月1日~9日になると、少なくとも10時15分の便まで満席の状態だった。バスに乗り切れず、次の便まで待つという状態が続いた。
エキスポ神戸号に人気が集まる理由は明白だ。鉄道の場合、JR三ノ宮から大阪メトロ夢洲駅までの所要時間は約50分(大阪駅・弁天町駅乗り換え)、運賃は1040円。同じく鉄道の阪神神戸三宮―夢洲間(九条駅乗り換え)は790円と安い。所要時間はJRと同じく約50分。ただし、神戸三宮駅から阪神なんば線に直通する快速急行は、1時間あたり3本(昼間時間帯)しかない。エキスポ神戸号の所要時間は50分弱で運賃は1000円、乗り換え不要のため鉄道よりも利便性が高い。
また、エキスポ神戸号の神戸三宮―万博会場間1000円という運賃設定は、シャトルバスや他の中長距離バスよりも格段に安い。新大阪駅―万博会場間の主要駅シャトルバスは1500円を要する。京阪バスが運行する京都駅八条口―万博会場間の中長距離バスは2000円だ。参考までに、鉄道のJR京都―夢洲間(大阪駅・弁天町駅経由)は、バスよりも780円安い1220円である。
エキスポ神戸号に乗ってみた
6月の平日に、神姫バスが運行するエキスポ神戸号に乗車した。EXPO神戸号が発着する神戸三宮バスターミナルは、JR三ノ宮駅の東側に位置し、JR線の高架下にある平屋のターミナルだ。
午前6時すぎにターミナルに着く。ターミナルに入ると、万博会場行きの専用レーンがあり、2列で待つ。6時過ぎの時点で、すでに10人ほどが並んでいた。時刻表を見ると、万博会場行きの初発便は7時30分である。1時間以上の待ち時間に備え、持参した簡易のいすに座る人の姿も珍しくない。なお、他の定期便はバスの案内があるまで、ターミナル内にあるベンチで待つ。つまり、乗り場の行列はエキスポ神戸号のみの特別対応なのだ。
並んでいると、「7時10分発の臨時便の設定があるのでは」という声が前から聞こえた。7時10分発の便は時刻表に明記されていないが、臨時便の設定が常態化しているようだ。
このように、兵庫県内ではエキスポ神戸号の運行に関して、SNSや友人からの口コミによって情報を得ている人が多いように感じる。かくいう筆者も、万博が始まるまで、エキスポ神戸号の存在を知らず、兵庫県在住の友人からの口コミで知った。
6時30分になると、私の後ろに40人以上が並んでいた。合計すると、少なくとも50人以上が並ぶ計算になる。行列には特に混乱もなく、ガイドブックなどを見ながら、万博の計画を練っている人もいた。

午前6時すぎの神姫バス、神戸三宮バスターミナル(筆者撮影)
その後、神姫バスの職員が現れ、レーンに並ぶ人数を数えだした。6時40分頃、職員から万博会場行きのバスへ案内され、定員60名の高速バスタイプのバスに乗車。中央の補助いすも利用し、満席であることを確認したうえで、7時前に神戸三宮バスターミナルを発車した。時刻表に明記されていた初便の7時30分よりも30分以上も早く、しかも並んでいるときに聞こえてきた7時10分よりも早い発車だった。
エキスポ神戸号はハーバーハイウェイ、阪神高速5号湾岸線を東進。北港JCT、湾岸舞洲ICを通り、7時30分すぎに万博会場西ゲート前のバスターミナルに到着した。交通量が少ないことが影響し、神戸三宮バスターミナルからの所要時間は40分もかからなかった。
さすがに7時30分すぎということもあり、西ゲート前のレーンが待ち客で埋め尽くされる光景は見られなかった。ただ、西ゲート前には屋根がないことから、熱中症には注意したいところだ。

午前7時30分すぎの西ゲート(筆者撮影)
神戸三宮行きエキスポ神戸号は、13時から22時にかけて運行される。最も運行本数が多い時間帯は19時台と21時台で、定期便の運行本数は各1時間あたり4本だ。
なお、エキスポ号は交通系ICカードは利用できるが、エキスポ三田号を除き神姫バスのICカード「NicoPa」は利用できない。また、シャトルバスとは異なり、アプリからの購入はできない。そのため、アプリ利用時にありがちな、運転士にスマホの画面を見せる手間がない。交通系ICカードの利用が大半を占め、バスの乗車・降車はいたってスムーズだった。
予約制ではない理由
なぜエキスポ号は予約制ではないのだろうか。神姫バスによると、エキスポ号の利用者は1日あたり1000人を超え、臨時便も存在することから、システムでの管理が難しいというのが理由だ。仮に予約制を採用すると、座席定員や座席配置が車両ごとに異なり、車両タイプは運行直前まで確定しないため、かえって利用者に不便をかけることが想定される。また、エキスポ神戸号は運行間隔が最短15分間隔、走行時間は50分未満のため、手軽に乗車できるシステムが望ましい。路線環境や現状に合わせて、臨機応変に対応する神姫バスの姿勢を感じる。
なお、7月1日のダイヤ改正以降の臨時便の運行に関しては、神姫バスから「乗務員および車両の状況に応じて、可能な限り対応したい」という回答を得た。今後、万博の来場者数は増えていくことだろう。エキスポ号のさらなる活躍を期待したい。