次に狙いを定めたものは…物を盗んでいくカラスとトビに「オチがとても秀逸」の声【ホラー漫画】

『ぬすみどり』より
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、『ぬすみどり』を紹介する。いきものにまつわるホラー漫画『よもつけだもの』を連載中の淀洞蝸牛さんが、5月13日に「大事なものを鳥にぬすまれてしまう話」と添えてX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、2000件を超える「いいね」やコメントが多数寄せられた。本記事では、淀洞蝸牛さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
その場所では、さまざまなものが盗まれる

『ぬすみどり』より
海にやって来たある女性は、風景を楽しみながらハンバーガーを食べようとしていたところで鳥に奪われてしまう。さらに、ある女性もまた海が見える場所でぬいぐるみを手に満喫していると、やはり鳥に奪われてしまった。しかしその正体はただの鳥ではなく、天狗だったのだ。
盗んだぬいぐるみを見て目を輝かせているカラス天狗のもとに、トビ天狗がやってくる。実は大天狗の嫁を探すように命じられている2匹の天狗。互いに目標を手にできていないことを確認すると、ふたたびその翼をはばたかせる。そのころ、海にはジュースを手にしている女性の姿があり…。
この妖怪たちの漫画を読んだ人たちからは、「オチがとても秀逸」「色んな考察ができる作品だ」「物を盗られる経験があるほどぞっとする」「思わず声が出た」など、多くのコメントが寄せられている。
豊富な知識と実体験から描き出される物語

『ぬすみどり』より
――『ぬすみどり』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
カラスやトビにまつわる、自分や身の回りの人の体験談からです。トビやカラスに弁当をとられそうになったり、カラスがCDの破片など光るものをを拾い集めたり…という話はよくききますし、自分も経験したことがあります。昨今はXにも鳥に手持ちのものを盗られた報告がよく上がっています。この鳥たちは比較的大型で好奇心が強くなんでも食べるため、昔から人間の暮らしのそばにいたようで、「鳶に油揚げをさらわれる」という諺もきっとこういう体験をした人達からうまれたんだろうな、とか、妖怪の天狗がトビやカラスの姿で描かれるのも、身近にいて人のものを盗む鳥だと認識されてたからかな、とか、そういう想像を巡らせたとき、いわゆる「天狗の神隠し」を「トビやカラスが人のものを盗む」という行為に重ねて描けるのでは、と思いつきました。
――本作では、盗まれる側が変わる展開が非常に印象的でした。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
自分がものを盗まれそうになったとき、トビは毎回、必ず死角から襲ってきました。人間は食事をとるとき視線が固定されて視野が狭くなります。野生動物の場合、食事をとる=敵に襲われる隙がうまれると理解していて、食事しながらも警戒心を解きませんが、現代人はそういうことをしません。おそらく鳥たちは空の上から人間の様子を観察していて、その「隙」を狙って背後から襲い掛かってくるのだと思います。スマホが普及して誰でも写真を撮るようになった現代は、「隙」がさらに多くなったと感じます。捕食者は唸り声をあげたり派手な音を立てず、静かに、素早く、見えないところから「隙」に襲い掛かってくる。その怖さを、画面を撮影者の視線に固定することで描けないかな、と思い、ああいった演出にしました。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
トビの天狗とカラスの天狗がそれぞれ別のものを盗んでいるところです。私が見た範囲だと、トビは基本的に食べものだけを狙いますが、カラスの場合、食べられもしないもの(よくカラスは光り物を好むといいますが)で遊ぶこともあって、好奇心の方向性が違うなと感じた点を、2種の天狗で描き分けました。あとは、最後の場面で視点が転換するところです。トビが海辺で魚を拾って持っていく姿をよく見るのですが、魚の視点だとどう見えてるんだろうと常々気になっていたので、それを絵に起こしました。自分がああいうふうに連れ去られたら、だいぶ怖いと思います。
――普段作品のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか?
主に野生動物の観察からです。フィールドワークをしていて見聞きする動物たちの姿や、人間との軋轢などが、物語の着想点になっています。そこに、日本の昔話や伝承で語られてきた要素(天狗の神隠し、人間に化ける狐狸妖怪など)を重ねて、現代風に解釈してすこし風刺を入れて話をつくる、ということをしています。
――今後の展望や目標をお教えください。
動物にまつわる怖かったり不思議な話はまだまだ描きたいことがあるので、時間はかかってもひとつずつ形にしていきたいと思います。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
読んでいただいてありがとうございます。今回のお話は、読者さんからも「自分は〇〇をとられた」という感想が多く寄せられました。外で何かを食べるときや手持ちのものを撮影するときは、いちど空を見上げて鳥がいないか確認し、壁や木を背にするなど、鳥にものを盗まれないようぜひ工夫してください。また、このお話と同じ発想点で別の形にまとめたものを、『天狗の嫁取り』というタイトルで「COMIC MeDu」さんに掲載していただいています。こちらも是非読んでいただけると嬉しいです!