介護中心の生活で自分たちの生活はグチャグチャ 片づけたら家族で穏やかに過ごせるようになった

 5000件に及ぶ片づけ相談の経験と心理学をもとに作り上げたオリジナルメソッドで、汚部屋に悩む女性たちの「片づけの習慣化」をサポートする西崎彩智(にしざき・さち)さん。募集のたびに満員御礼の講座「家庭力アッププロジェクト®」を主宰する彼女が、片づけられない女性たちのヨモヤマ話や奮闘記を交えながら、リバウンドしない片づけの考え方をお伝えします。

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■case.98 片づけにも“導いてくれる存在”が大切  夫・子ども2人・義母/専業主婦

 一つのことに一生懸命になると、自分の生活にまで目が向かないことがあります。例えば、介護。家族のためにと自分のこと以上に頑張ってしまい、日々の暮らしに余裕がなくなってしまう傾向があります。

 今回ご紹介する女性は、夫の祖母、母(義母)と2世帯住宅で同居していました。自宅で祖母を介護する生活が数年続いてから施設に入居が決まったとき、今の自分の生活を見つめ直して衝撃を受けたと言います。

「家の中は汚いし、子どもたちとの関係もよくないことに気づきました。介護優先で、家のことは見て見ぬふり。子どもたちは、介護で忙しい私に気をつかってくれていたのもあり、言いたいことも言えない状態でした」

 祖母のことは、夫と義母と一緒に協力しながら自宅介護をしていました。祖母と義母、そして子どもたち2人のスケジュールを考えると、彼女は自分が今何をしなければいけないかもよくわからない毎日。1日があっという間に過ぎていきます。

 ストレスからイライラすることも多く、思春期の子どもたちとぶつかることもありました。子どもたちは子どもたちで、「自分の家に友だちを呼べないから、私も呼んでもらえない」など、不満が募っていたそう。

「誰かを家の中に入れられる状態ではありませんでした。祖母の居住スペースに親戚が遊びに来るとうちの方にも来たがるんですが、『絶対に来ちゃダメ』と止めたり、誰かが来るとなると散らかっているモノを箱に押し込めてほかの部屋に移動させたりしていました」

 介護生活の中でも、片づけようと思って本を何冊か買ったことはありましたが、「理想の話をしていて、現実的ではないな」と実際に片づけてみるところまでいきません。でも、1冊だけ何度もくり返し読む片づけの本がありました。

「本屋さんでたまたま見つけたのが、西﨑さんの本でした。片づけをする時間がなくても、知識だけは頭に入れることができていたんですね」

 時間に余裕ができて、片づけようとしたときにSNSで“家庭力アッププロジェクト®”の案内を見つけました。これも何かの縁だろうと、参加を決意します。

「プロジェクトの説明を聞いていると、知識としてあったものが言葉になって改めて腑に落ちた感じがしました。今までわかった気になって自己流で片づけていましたが、リバウンドをくり返していたということは間違っていたんですよね」

 小さな頃から片づけに苦手意識があった彼女は、プロジェクトを利用して片づけることによって“自分を導いてくれる存在がいる”ということに安心感を覚えました。

 片づけを進める中で、モノが増える一因がわかってきました。彼女は義母から日常的に使わなくなったモノを預かっていたのです。

「思い出の品とか、遠くに住んでいる親戚が戻ってきたときに渡したいモノとか、『ちょっと預かってくれない?』と頼まれることが多くて。私も軽く引き受けてしまっていましたが、片づけていく中でけっこう自分の負担になっていることがわかりました」

 介護生活で自分のことを後回しにする癖ができてしまい、自分さえ我慢すればいいと思っていましたが、それはよくないと気づきます。思い切って、今まであまり相談することのなかった夫の姉に話をすると、親身になって話を聞いてくれました。

「『そうだったの? 処分しちゃっていいよ』と言ってくれたり、気が楽になりました。勝手に処分するのは悪かったので、義母に預かっているモノの話をすると『そんなモノあったっけ?』と忘れていて……。ちゃんと話をすればよかったんだと思いました」

 それから義姉とはほかのことも気軽に相談できるようになり、義母のモノの問題も解決。家の中はスッキリしてきました。

 親戚との関係だけではありません。子どもたちとの関係も、片づけを通して変わりました。

「私、子どものモノは親に捨てる権利があると思って勝手に捨てたことがあります。でも、今回はプロジェクトで教わったように、子どもと一緒に片づけたんです。そしたら、当然ですが、子どもたちと私のモノの価値観は違いました。前は必要なモノも捨ててしまったなぁって。子どもたちの“いる・いらない”の判断を待っていれば、自分たちで手放してくれるんですね」

 子どもたちは自分たちの考えを尊重してくれることを感じたのか、彼女に対する遠慮がなくなり、自分の気持ちを正直に話してくれるようになりました。「いい意味で、甘えてくれるようになった」と言います。

「夫とも介護以外の会話がなくなっていましたが、片づけているうちに暮らしのこともよく話すようになりました。『実は廊下にモノが置いてあるのが嫌だった』とか、今まで知らなかった!」

 ほかにもお互いにイライラするポイントや対策を伝え合い、暮らしやすい環境を整えることができました。

 家の片づけでいろいろ変化はありましたが、自分の変化が大きかったと彼女は話してくれました。

「作業としては片づけているんですが、自分と向き合う時間が長かったというか……。不思議な感覚でした。以前は自分に対しても否定的な気持ちが強かったけど、片づけを通して気持ちの整理もできて、今までの選択が全部『間違いじゃなかったよ』って答え合わせをしてもらえた気分。これからは自分の人生を自走できそうです」

 私がよくお話しするのは、“片づけはコミュニケーション”ということ。彼女のように、人と気持ちを通わせながら片づけると、家も自分も整う感覚を得られると思います。

「一人で悩んでいるなら、とにかく一歩を踏み出してほしい」

 彼女からの笑顔のメッセージを、最後に付け加えておきますね。自分を変えた彼女の、説得力のあるひと言です。

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