大阪「京橋」大改造! 1031億円地下化で“開かずの踏切”撤去――昔ながらの下町はどう変わるのか?
昭和のまま時間が止まった駅周辺
大阪・京橋地区のJR学研都市線(片町線)地下化事業再開が大阪市の有識者会議から認められた。大阪市は2025年度中に正式決定する方針。京橋大改造がいよいよ始まる。
【画像】「昭和のまんま!?」 これが京橋駅周辺の「商店街」です! 画像で見る(6枚)
駅の周囲は狭い路地と古い商店街。その外側にオフィスや商店、マンションが無秩序に並ぶ。大阪市都島区と城東区にまたがる京橋駅周辺。JR西日本の大阪環状線、学研都市線、東西線、京阪電鉄の京阪本線、大阪メトロの長堀鶴見緑地線が集まる市東部の交通結節点なのに、駅の周囲は昭和から時間が止まったままだ。
キタと呼ばれる梅田やミナミの難波・心斎橋は開発が続き、街の風景が大きく変わった。京橋東商店街で開店準備をしていた60代の飲食店従業員に聞くと、
「京橋は再開発もないから、私が娘だったころのままや」
駅前で2019年に閉店したイオン京橋店跡は再開発までの暫定利用としてキッチンカーや屋台の飲食スペースになっている。
遮断45分が動かした鉄道再編構想

ピーク時で1時間に45分遮断される鯰江踏切(画像:高田泰)
そんな京橋に変化の波が訪れようとしている。大阪市が5月に開催した建設事業評価有識者会議で、2014(平成26)年から休止していた学研都市線地下化の再開にゴーサインが出たからだ。地下化するのは城東区新喜多から都島区片町までの約1.3km。区間内にある鯰江踏切など三つの踏切を撤去し、地上にある学研都市線のホームを地下へ移す。
工事は学研都市線を運行しながら、現在の線路の北側地下に新たな線路を整備する。事業費は人件費や資材費の高騰で約1031億円と、2015年の前回評価時より381億円増えた。大阪市は都市計画決定後の2030年度事業認可、2033年度着工、2053年度完成を想定している。
国土交通省は1時間当たり40分以上遮断機が下りる踏切を「開かずの踏切」と定義しているが、三つの踏切のうち最も東の鯰江踏切はピーク時で1時間当たりの遮断時間が45分に達し、この定義に該当する。馬の口、新喜多の両踏切も遮断時間が39分。ほとんど開かずの踏切といえる。撤去による分断解消効果は大きい。
地下ホームの位置が北へ移ることにより、京阪本線との乗り換え時間が短縮されるほか、現在のホーム付近に駅前広場を整備すれば、駅前に乗り入れが難しかったバスとスムーズに乗り換えできる。京橋駅の利便性が大きく高まるわけだ。
大阪市街路課は
「学研都市線地下化は新たな開発に向けたインフラ整備の意味も持つ。分断解消による街の一体化だけでなく、駅機能の強化や地域交通の円滑化に与える影響は大きい」
と期待を込めた。
キタ、ミナミ、天王寺に次ぐ交通結節点

京橋駅に到着した京阪電鉄の列車(画像:高田泰)
大阪市はキタとミナミという南北ふたつの拠点を中心に発展してきた。梅田を中心とするキタは西日本最大のビジネス街で、繁華街や歓楽街も抱えている。JR西日本と阪急電鉄、阪神電鉄、大阪メトロの路線が神戸や京都、宝塚、北摂に延びる。大阪府によると、JR大阪駅と周辺私鉄、地下鉄計7駅の1日乗降客は2023年度、約200万人に上る。
難波や心斎橋を中心とするミナミは道頓堀や千日前など大阪らしい風景と食い道楽が東アジア系外国人に好まれ、訪日観光客で埋め尽くされている。南海難波駅、大阪メトロなんば駅など一帯9駅の1日乗降客数は2023年度で100万人を超えた。キタ、ミナミとも再開発ラッシュが続いている。
これに対し、京橋はJR西日本、京阪電鉄、大阪メトロ3駅の1日乗降客数が約40万人。JR西日本と京阪電鉄が関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)、京都に路線を走らせ、キタ、ミナミ、天王寺(乗降客約65万人)に次ぐ乗降客数を持つ。
京橋駅の地下化は国の2000(平成12)年度予算で着工準備区間になり、大阪市は2004年度にも都市計画決定する方針だった。しかし、当初約400億円と見積もられていた事業費が約650億円にはね上がったうえ、大阪市の財政が悪化したため、休止されていた。
京阪電鉄も再開発を検討

京阪京橋駅からJR京橋駅へ乗り換えを急ぐ通勤客ら(画像:高田泰)
流れを変えたのは、大阪府市が南北軸に偏りがちだった目を東西軸に向け始めたことだ。大阪府市は開催中の大阪・関西万博後を見据えた成長戦略を2025年度中に策定する方針。この中で京橋を観光やビジネス、研究など多彩な機能が集中する国際的都市拠点に育てることが検討されている。
それに向け、4月末には京橋駅周辺の土地区画整理事業や都市計画道路の検討調査を始める方針が示された。幹線道路整備で近隣の大阪城公園や大阪ビジネスパーク、森之宮地区と連携を強化するとともに、京橋駅周辺約5.5ヘクタールを対象に再開発して商業施設や宿泊施設を誘致する方向だ。
大阪市が5月に策定した大阪城公園周辺地域まちづくり方針でも、京橋地区から大阪ビジネスパーク、森之宮地区を大阪城公園の玄関口として魅力ある国際拠点にする方向を打ち出した。その玄関口となる京橋駅周辺から大阪ビジネスパークや大阪城公園には、歩行者ネットワークを整備する。
京阪電鉄など京阪グループにとって、京橋駅は京阪電鉄最多の1日約15万人が乗降する最重要拠点。グループの統合報告書2023では京橋駅周辺再開発を重点施策と位置づけ、検討することを盛り込んだ。京阪電鉄は
「まだ発表できる段階ではないが、再開発の方向性を考えている」
と説明している。
大阪府市は京橋地区など大阪城東側をキタ、ミナミに次ぐ拠点とするために「ヒガシ」と呼ぶ。再開発を成功させ、市民から「ヒガシ」と呼ばれるようになるには、官民の継続した投資が欠かせない。学研都市線地下化を皮切りに京橋が生まれ変わろうとしている。