「神戸の玄関口」が廃墟同然? 駅直結モールは空き区画「7割」という現実、神戸市は再生ビジョンを描けるか

全区画の7割近くが空き状態

 山陽新幹線を新神戸駅で降り、神戸市営地下鉄のホームへ向かう途中、新神戸エリアにある総合商業施設「コトノハコ神戸」に入って驚いた。大半の区画がシャッターを閉じ、廃墟のようにも見える。この暑さのなか、涼を取りながら、地下鉄ホームへ進めるのに、歩いている人はほとんどいない。

【画像】廃墟同然!? これが現在の「コトノハコ神戸」です! 画像で見る!

 7月末の週末、東京都世田谷区から観光に来た老夫婦が迷子になっていた。案内表示が少なくて地下鉄までの順路がよくわからないそうだ。地下へ向かうエスカレーターへ案内すると、

「神戸市の玄関口なのに、空き店舗ばかり。よくこんな状態で放置しているな」

とあきれた口ぶりで首を振った。

 フロアガイドを見ると、地下1、2階は閉鎖中。3階は21区画中10区画、2階は18区画中5区画、1階は29区画中6区画、地下3階は5区画中2区画しか埋まっていない。全区画の7割近くが空き状態。それなりに人を見かけたのは、スーパーが入る地下3階だけだ。

新神戸再開発の今と過去

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コトノハコ神戸が入る新神戸オリエンタルシティ(画像:高田泰)

 コトノハコ神戸が入るのは1988(昭和63)年、中央市民病院跡地に開業した複合施設「新神戸オリエンタルシティ」。

 地下3階、地上37階建ての高層ビルで、低層階に売り場面積約1万8000平方メートルのコトノハコ神戸とアニメやゲームを原作とした作品を上演する約800席の2.5次元劇場、中高層階に客室約590の「ANAクラウンプラザホテル神戸」が入る。

 もとはダイエーグループの施設だったが、ダイエーの経営再建で手放された。商業施設も、

新神戸オリエンタルパークアベニュー

新神戸OPA

新神戸オリエンタルアベニュー

と変遷し、2019年からコトノハコ神戸になった。運営は現在、JLLリテールマネジメント(東京都千代田区)が進めている。

新神戸駅周辺に欠ける集客力

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地下鉄ホームで出発を待つ西神中央行き列車(画像:高田泰)

 コトノハコ神戸に人が集まらないのは、新神戸駅の特殊性が関係している。新神戸駅には山陽新幹線のほか、神戸市営地下鉄西神・山手線が乗り入れ、駅前から都心部の三宮方面へ向かう神戸市営バス、四国や淡路島方面の高速バスなどが運行している。しかし、JR西日本の在来線は乗り入れていない。

 神戸市内発着の乗車券に限り、在来線の三ノ宮、元町、神戸(ともに中央区)、新長田(長田区)のJR4駅と新神戸駅を乗り継ぐ特別下車ができるが、兵庫県統計書によると、新神戸駅の新幹線乗車人員は2023年度で1日平均約9600人にとどまる。

 JR西日本の駅別乗車人員ランキングで上位50位に入らず、山陽新幹線の発着駅では

・新大阪(大阪市淀川区)

・博多(福岡市博多区)

・広島(広島市南区)

・岡山(岡山市北区)

・小倉(北九州市小倉北区)

の5駅を下回る。乗り継ぎの不便さから、神戸市民でも在来線と新幹線を同一駅で乗り換えられる新大阪駅を使う人が少なくないからだ。

 周辺には、北野異人館や日本の滝百選に入る布引の滝があるが、姫路城(兵庫県姫路市)や道頓堀(大阪市中央区)、清水寺(京都市東山区)ほどの吸引力はない。新幹線利用以外で新神戸駅へやってくる人は限られる。地下鉄を使えば、新神戸駅から三宮駅までわずか2分。この

「微妙な距離」

もマイナスに働いている。新幹線乗車前後に食事を取り、買い物するのは、店舗が多い三宮地区。新神戸駅周辺を単なる「乗り換えの通過点」と考える旅行者が多い。

 コトノハコ神戸は新幹線改札と地下鉄改札を結ぶ構造になっているが、新幹線改札に対応するのが地上3階で、地下鉄改札は地下3階にある。上下移動が大きく、改札間の動線になりきれていない。2.5次元劇場はマニアを集めているものの、公演が毎日あるわけでなく、観客数も周辺テナントの営業が成り立つほどでない。

駅前広場や生田川公園も再整備

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神戸市の玄関口となる新神戸駅(画像:高田泰)

 コトノハコ神戸は民間施設。本来なら運営企業に任せるべきなのだろうが、市の玄関口とあって、神戸市も現状を放置できなくなってきた。久元喜造市長は7月中旬、神戸市中央区の神戸ポートオアシスで開かれた新神戸市基本構想の討論会で「水面下でいろんな取り組みを始めた」と明かした。担当部局の神戸市都市づくり課は

「どういうふうに改善すればいいのか、官民いっしょに考えたい。現在は運営企業とコミュニケーションを取りながら、検討を始めている段階」

と説明する。

 神戸市は駅周辺リニューアル事業のリノベーション神戸で、新神戸駅前広場や近くの生田川公園を再整備する構想を持つ。駅前広場は新幹線改札口と同じ2階にバス、タクシー乗り場を集約する方針だ。生田川公園は桜や中華街風の休憩施設を生かせるにぎわいの場にする。

 神戸市はこれら再整備で駅前の魅力向上を図りながら、コトノハコ神戸の再生を目指していくとみられる。だが、三宮地区から見ると、六甲山ふもとの新神戸駅は北のはずれ。よほど魅力的な施設を入れないと、三宮地区からわざわざ足を運んでくれそうもない。三宮地区で進む大規模再開発も新神戸駅周辺の立ち位置に影響を与える可能性がある。

 商業施設のリニューアルでは集客力を持つ大型施設や店舗をずらりと並べ、その相乗効果で客を増やす手法が一般的だ。しかし、コトノハコ神戸の規模は中途半端で、大型施設や多様な人気店を並べるには売り場面積が足りない。

 逆に大規模な再開発に乗り出せば、身の丈に合わない施設になって余計に傷口を広げかねないが、新幹線の乗降合計で1日2万人近いと推計される地下鉄、バスとの乗換客を取り込むことができれば、明るい兆しが見えてくる。

 八方塞がりに見える厳しい状況のなか、現状を打開する方策を見つけ出すことができるのか、神戸市の力量が問われそうだ。