「ジャングリア」を「オワコン」というのは早計?今帰仁村が秘める「観光リゾートとしてのポテンシャル」【沖縄】
那覇空港からは距離があるが…
テーマパーク「ジャングリア沖縄」が7月25日に開業したことにより、所在地の国頭郡「今帰仁村(なきじんそん)」が注目を集めている。
ジャングリアは、名護市と今帰仁村にまたがるゴルフ場「オリオン嵐山ゴルフ倶楽部」の跡地を活用したテーマパークで、2019年「琉球新報」では「テーマパーク600億円規模 嵐山ゴルフ場 2024年末にも開業」と報じられていた。結果的に開業は今夏にずれ込んだが、USJの再建で名を馳せた森岡毅氏率いるマーケティング会社「刀」は総事業費700億円を調達。大型プロジェクトを実現した。
オープン初日には約500人が列を作って開園を待ち、アトラクションの待ち時間が3時間を超えることもあるなど盛況。YouTuberやインフルエンサーが多数訪れ、そのレポートが配信サイトやSNSを埋め尽くしているのが印象的だ。
一方で、当初公開されていた施設のイメージ画像と実際が違うとの声や、自然や恐竜をモチーフにしたアトラクションが「しょぼい」との厳しい意見もあがり、SNSでは賛否が分かれている。「ホリエモン」こと堀江貴文氏がジャングリアを訪れ、「普通にめちゃくちゃ楽しいんですけど、なんであんな批判されてんだろ」とXにポストするなど、実際に現地した人とそうでない人でも温度差がありそうだ。

「ジャングリア沖縄」の公式HPより
那覇空港からジャングリアまではおよそ80km、車で1時間半。東京駅から電車で15分の東京ディズニーランド、新大阪駅から電車で25分程度のUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)に比べれば、アクセスがいいとはいえない。広大な自然を活かしたテーマパーク設計には、当然「勝算」があるのだろうが、今帰仁村自体がいま訪問したいエリアとして、国内外からの人気が高まっていることに注目したい。
今帰仁村は沖縄半島の本部(もとぶ)半島のほぼ来た半分に位置し、先述のとおりジャングリアは南部、名護市との境にまたがるように展開している。本部半島随一の観光スポットといえば「沖縄美ら海水族館」であり、那覇市内にホテルをとり、家族で日帰りロングドライブをした(そして、渋滞に巻き込まれた)という記憶がある人も多いのではないか。
美ら海水族館は、昭和50(1975)年に沖縄本土復帰事業として開催された沖縄国際海洋博覧会の跡地を受け継ぐ海洋博公園に、2002年に新装開館した。
沖縄に訪れた「海洋博不況」
本土復帰した沖縄経済の「起爆剤」になると期待された海洋博だが、フタを開けてみると思うような来場者数を見込めず、興行的には失敗。「海洋博不況」と呼ばれるような事態に陥り、地元住民の落胆は大きかったという。
数十年の時が流れ、海洋博公園の跡地に建てられた水族館を再整備する形で美ら海水族館に生まれ変わった。世界最大級の水槽にジンベエザメが泳ぐ水族館は話題を呼び、負のレガシーと化していた施設は本島北部の集客に大きく貢献した。
そしてジャングリアも、単なる話題先行のテーマパークではなく沖縄、ひいては日本全体の観光振興における重要な役割を担っている。
〈プロジェクトを進める中で、多くの地元企業の方々から熱い賛同とご支援をいただいています。このご支援を基盤に、ジャングリア沖縄は着実に進展し、沖縄北部の観光業に新たな価値をもたらす準備を進めています。
また、沖縄北部の雇用創出と観光業のモデルエリアの構築を目指し、地元の皆さまと共に歩みを進めてきました。地元大学との連携を通じて、高度な観光人材を育成する仕組みづくりにも積極的に取り組んでいます。〉
(ジャングリアHPより抜粋)
沖縄本島における観光スポットの多くが中南部に集中しており、開発もそのエリアを中心に行われ続けてきた。昭和後期、そして平成とそれが続いた結果、日本にいながらの非日常感が最大の魅力だった沖縄も、街並みや観光パッケージがコモディティ化してしまった感が否めない。

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筆者は直近で何度か沖縄に訪れた。メインストリートである国際通りが完全に観光客向けであることは昔から変わっていない印象だが、コザゲート通りを含めた沖縄市中央付近は老朽化が進んだビルや埃被ったシャッターが目立った。特性上、金土の夜がにぎやかな街ではあるが、2025年に入域観光客数で過去最高の1000万人越えを見込むうえでは、なんらかの変化が求められる部分も出てくるだろう。
観光客が押し寄せるビーチではなく、地元の子供が通うような砂浜。有名レストランシェフ監修のホテルディナーではなく、地産地消のこぢんまりとした飲食店――。こうした体験に付加価値を見出し、今帰仁村のようなゆったり過ごせるエリアが人気を集めている。
「暮らすように旅する」ブーム
Airbnbなど民泊アプリで今帰仁村周辺を検索すると、新設のゲストハウスが多く新設されていることがわかる。早くも「ジャングリア至近」を売りにするサイトもあり、シナジーを期待する事業者は多い。ちなみにジャングリアから今帰仁村の海沿いへは車で最短15分程度だ。
旅行業界では、「暮らすように旅する(泊まる)」ニーズがトレンドとなって久しい。地元のスーパーで食材を買って自炊し、備え付けの洗濯機で洗濯し、まるで住民のようにロングステイを楽しむスタイルのことだ。
長期滞在に向いたコンドミニアムリゾートは従来からあるが、よりモダンなエクステリアで、充実したキッチンやカトラリーを売りにするヴィラが増えている。
ホテルでずっと過ごし、何もしない「ホカンス」が受動的な旅行の楽しみ方であるならば、洗濯や皿洗いまで自分たちでこなす「暮らすように旅する」は真逆の能動的な旅のスタイルといえる。旅行先で料理するなんて理解できない、という人も多いだろう。ふだん仕事や家事、育児に追われている人からすれば、旅先ぐらいゆっくりしたい(させて欲しい)と思うのは当然のことだ。

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一方で、ホテルのベッドやプールサイドで一日中ゆっくりしているのが性に合わない人もいるだろうし、ザ・観光客向けのレストランや景勝地に飽きてしまった人も多いはずだ。
旅行に求める「日常」と「非日常」の塩梅は人それぞれだが、沖縄の中心街から外れたエリアで「暮らすように旅する」需要は、一定数あるのではないかと思われる。炊事洗濯といった「日常」をこなしていても、まず目の前に広がる景色そのものが「非日常」に埋め尽くされている(ように感じる)からだ。
新たなモデルケースになれるか
その点で、今帰仁村のような沖縄の街には観光業としての「伸びしろ」が残されている。今帰仁城跡やウッパマビーチ、古宇利島などの観光地の再発見も進むかもしれない。
ジャングリアが「暮らすように旅する」層の心に響くかどうかは未知数だが、本部半島で「孤軍奮闘」していた美ら海水族館には強力な援軍であり、セットでの旅パックも組みやすい。双方にアクセスがいい街といえば、今帰仁村が最右翼だ。

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ジャングリア単体で見れば、しばらくSNS上での賛否は落ち着かないだろう。だがこれまで観光資源の多くを海や史跡、あるいはグルメに偏りがちだった沖縄において、山や森といった自然がキャッチーなスポット化するのは、大きな一歩ではないだろうか。
思えば昭和の終焉、バブル崩壊を経て、平成を重ねるにつれ地方のテーマパークは衰退の一途をたどり、次々と閉鎖に追い込まれた。観光地を囲むように繋がっていた町村はそれを失ってバラバラになり、持続力を失って衰退した地方の構図がパターン化していった。
ジャングリアが興行的に成功し、周囲の経済にさらなる活気をもたらすようになれば、観光業、地方都市、ひいては日本全体のポテンシャルを再発見するきっかけになるかもしれないーー。そうした視点から、ジャングリアそして今帰仁村の今後をみていくのは重要だと言える。