国道のオアシス ありがとう60年 埼玉県内唯一・上尾のオートレストラン閉店 軽食自販機、ゲーム ファン惜しむ

深夜の国道沿いに浮かび上がるネオン看板=いずれも上尾市のオートパーラー上尾で
昔ながらの軽食の自動販売機やゲーム機が並ぶ埼玉県上尾市のオートレストラン「オートパーラー上尾」が7月で閉店した。創業から60年余り。こうした業態では県内で唯一残っていた店で、多くのファンが別れを惜しんだ。(杉浦正至)
「今までありがとうございました」。31日午前1時。店長の鈴木毅典さん(55)が店じまいを告げると、常連客からも「ありがとう」と拍手が起こった。

名残を惜しむ客でにぎわう自動販売機コーナー
創業は昭和40年ごろ。当初は広大な駐車場を備えたドライブイン食堂で、「トラック野郎」たちの憩いの場だった。平成初頭に改装オープン。軽食の自販機と約60台のアーケードゲームが並び、国道17号沿いのオアシス的存在だった。
オートレストランは24時間営業、年中無休が基本。1970年代ごろから全国の国道沿いなどに点在したが、コンビニや深夜営業の飲食店が広まり、次第に姿を消した。近年はレトロな風情が再評価され、東京からも近い上尾はマニアが集う「聖地」化していた。

トーストの自動販売機
400円のうどん、そば。300円のコンビーフ、チーズハムのトースト。どれもボタンを押すと少し待たされ、熱々の品が出てくる。レトロ自販機の愛好家という越谷市の主婦、橋美智代さん(52)は「コンビニには売ってない味。昭和っぽくて、時間が止まっている」と魅力を話す。
対戦格闘ゲームが人気だった1990年代は爆発的なにぎわいぶりだったが、スマートフォンの普及でやがて下火に。コロナ禍以降は客足が落ち込み、近年は24時間営業をやめていた。30年ほど働く店長の鈴木さんは「いずれ閉めなければいけないとは思っていたが、とうとうその日が来てしまった。ゲームが好きで何回も来てくれたお客さんには感謝しかない」と話す。
月末の閉店を張り紙で知らせると、口コミでかつての常連や旧車愛好家らが連日詰めかけた。「走り屋」だったという地元の会社役員男性(50)は「走る前の集合場所はここ。年越しそばも毎年ここと決めていた。こんなにさみしいことはない」と思い出を語る。

昼でも少し暗めの店内には懐かしのゲーム機が並ぶ
川口市出身の自動車整備士、山田拓実さん(23)は高校時代からの常連。横浜市に住む今も毎月訪れていたといい「仕事で疲れた深夜、ゲームのガシャガシャという音を聴きながら、1人でボーッとうどんを食べ、瓶ジュースを飲んで。また明日頑張ろうと」。
自販機を管理する建物オーナーの男性(87)は最後の日も食材の補充に追われ、閉店間際にやっとひと息。「大変だったけど、お客さんがいるからやってこられた」と振り返った。
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