一橋→3浪→「東大理3」の彼が描く医学以外の進路

※写真はイメージです(zon / PIXTA)
3浪で東京大学理科3類に入学
今日お話を伺った浪Vgさんは、東京大学の理科3類に3浪で合格した方です。
【写真を見る】東京大学理科3類に合格した浪Vgが子どものころに遊んでいたノート…数字が並んでいる
毎年日本トップの学力を誇る100人が入るこの学類に入った浪Vgさんですが、実は現役、1浪と理科1類を受けて不合格になった経験があり、一度は1浪で一橋大学に進学しました。文系の学部に進学した彼が、それでも東大の理科3類を目指した理由とは何だったのでしょうか。
浪Vgさんは、千葉県の千葉市に、研究職の父親と、専業主婦の母親の間に生まれました。幼少期の浪Vgさんは、数字と外遊びが好きな子どもだったそうです。
「ポケモンや戦隊モノが好きな、外で遊ぶ活発な子どもでした。数字に関しては2~3歳頃に興味を持ち始めたと聞いています。1〜100までのカードを作ったり、4コマ漫画を書くノートに4桁の数字を書き続けたりしていたらしいです」

幼少期にしていた数字遊び(写真:浪Vgさん提供)
そんな浪Vgさんは5歳のときに父親が海外で仕事をすることになったのがきっかけで、年長から8歳までヨーロッパに滞在しました。通っていた現地の公立小学校は多国籍で、さまざまなバックグラウンドを抱えた生徒がいたそうです。
「向こうの言葉はすべて英語だったので、のちの受験でも得意になりました。ほとんどネイティブの子はいなくて、英語が第2外国語である学生が多かったですが、個別化教育が進んでいてABCDレベルから先生が丁寧に教えてくれたのが助かりました」
8歳で日本に帰ることになってからは、祖父母の実家で暮らすことになります。日本に帰ってからも小学校のテストで基本的に満点だった浪Vgさんは、自発的に中学受験をしたいと考えます。
「地元から1時間くらいかけたところの本屋に連れて行ってもらったときに、中学受験コーナーがあるのを発見し、そこで中学受験というものを知りました。両親は受験勉強に賛成ではなく、外で遊んだり人と触れ合ったりする方が大事なんじゃないかという人でしたが、僕は受けてみたいと思い、親を説得して中学受験をしました」
当時から計算ドリルをゲーム感覚で解いていたために算数が得意だった浪Vgさん。第1志望の出願先には不合格となり、地元の第2志望の中学に進学しました。
模試で偏差値70超「理3を目指せる」と言われるも…
中学生になった浪Vgさんは、中1の夏頃からは学年でもトップ3の成績を残すようになります。
「当時は新しいことを勉強するのが純粋に楽しくて勉強していました」と語る浪Vgさん。小学校6年生のときに読んだ『ドラゴン桜』の影響もあって、この頃から東京大学の理科3類を目指し始めるようになります。
「中2のときに全国統一中学生テストの受験生部門を受けたとき、偏差値70台後半が出ました。その模試の結果を東進ハイスクールに取りに行ったとき、予備校の講師に『この成績なら理3を目指せる』と言ってもらえたのがきっかけで、中2から高3まで東進にお世話になることになりました」
東進の数学特待制度を利用し、数学の授業をいくら取ってもお金がかからない環境で勉強を続けた浪Vgさん。模試も無料で受けられたために「モチベーションの管理ができた」と振り返ります。

数学で思い出深い問題集(写真:浪Vgさん提供)
高校に上がったタイミングでゲームにハマり、ぼんやりとプロゲーマーに憧れるようになった浪Vgさん。高1の頃が成績のピークで、東大2次試験の受験日と同日に受験する東進の模試である東大入試同日体験受験では受験の2年前の時点で数学で60/120点近く取れていました。
しかし高2からはモチベーションの低下とコロナ禍が重なり、少ない勉強時間も受験以外の自分の興味のある勉強ばかりに費やすようになり、成績は急落しました。
高1までの勉強の貯金があったことと、学校には行っていたおかげで、高校3年生の夏の東大入試実戦模試では理科1類でB判定、理科2類でA判定を取りますが、秋の東大実戦では初めて理科1類のE判定をとってしまいます。
「東大に行こうとはしていたのですが、勉強する気力はありませんでした。今思えば、危機感が足りてなかったと思います。受験をなめている部分があったと思うので、この年の受験の結果を受けて、謙虚にならないといけないなと思わされました」
この年は共通テストが677/900点で約75%だったものの、1年を通して模試でB〜D判定をとっていた東大理科1類に出願。
足切りを通ってギリギリ2次試験を受けた浪Vgさんは「2次試験は数学が結構できたものの、数学と物理を除く他教科が壊滅した」と語ります。結局、この年は合格最低点からは18点差で不合格となりました。

物理で思い出深い問題集(写真:浪Vgさん提供)
自宅浪人の末、一橋大学に進学
理科1類に惜しくも届かず落ちた浪Vgさん。浪人した理由を聞いたところ、「そもそも勉強をあまりやってなかったので、このまま終わったら流石に悔いが残るなと思った」と答えてくれました。
こうして1浪に突入した浪Vgさんは、近くの予備校に東大理3に対応したカリキュラムがなかったこともあり、「自分でやった方が早いかな」と考えて宅浪をする決断をします。しかし、彼はのちにこの選択を「失敗だった」と振り返ります。
「現役のときに落ちたショックを引きずったりしてメンタルを崩し、成績が上がりませんでした。(成績が上がらなかったのは)やはり、ちゃんと勉強できていなかったんだと思います」
この年、共通テストこそ前年より上がるも、現役時と同じく理科1類に出願して最低合格点から15点差でまたしても不合格になってしまいました。
1浪しても東京大学に届かなかった浪Vgさんでしたが、この年は後期試験で出した一橋大学の経済学部に合格して、なんとか進路を決めることができました。
しかし、彼の中での受験はまだ終わりではなかったそうです。
東大理1に2回落ちた浪Vgさんは、一橋大学に進んでからも、東大を目指して受験勉強をする決意をします。
「現役のときも1浪のときも自分の中では勉強をやりきれなかったので。しっかり勉強をやってみてどこまで伸びるかを知りたかったので、まずは理1に合格できるレベルにしようと思いました。心の中では理3でしたけど、最初は理1志望で仮面浪人を始めました」
大学に所属しながら受験勉強をしていた浪Vgさん。最初の3カ月は一橋大学の授業を受けながら5時間ほど受験勉強をする生活を続け、後半の半年は休学して、「好きなときに起きて、好きなときにやっていた」と語るように、図書館や勉強スペースなどに通いながら平均で6~7時間の勉強を続けます。
仮面浪人で成績が急上昇
この年はメンタルの状態が安定していて、勉強のやる気もすごく上がったこともあって成績が急上昇し、6月の東大本番レベル模試、8月の東大実戦、10月の東大本番レベル模試では理科3類でA判定を取るまでになります。
悪い時では理科3類でC判定が出ていましたが、最後の1月の東大模試でも二次試験440点満点で300点超えと理3に合格できる水準の点数を確保し、初めて理科3類に出願した浪Vgさん。しかし、本番では失敗をしてしまったようで、共通テストでは87%程度に終わり、最低合格点より30点足りずに落ちてしまいました。
「共通テストは結構苦手意識がありました。二次試験も含め、国語とか、苦手科目で点数が取れなかったですね」
浪Vgさんは、「A判定も出てたし受けるしかないと親を説得して」、休学のまま3浪生活に突入します。この年は1日5~6時間の勉強をするかたわら、オンラインで受験指導などのアルバイトもはじめて受験費用を稼いでいました。
「1浪目で東大に落ちた2023年3月10日のタイミングでXを始めました。勉強の様子や模試の結果を投稿したりしているうちにアカウントのフォロワーが増えました。人に教えることで自分も学べることが色々あると思ったので、理科1類の最低点は超えた受験生として、普通の予備校より格安で教える仕組みを作り、授業をしていました。また、家庭教師で一緒に時間を測って過去問の演習をするバイトもしてお金をいただいていました」
3浪に突入して、やはり「追い詰められた不安というものもあった」と語る浪Vgさん。メンタルが不安定な時期もありましたが、なんとか乗り超えていました。
3浪目で東大模試の総合偏差値は80を超える
成績の伸びはかんばしく、この年は受けた東大模試の大半で、理科3類のA判定を獲得し、総合の1桁順位も複数回獲得したそうです。最も悪い模試でも、A判定まで5点差のB判定でした。
「客観的に見たら受かる可能性が高いのかな」と思える状態には持っていったものの「この年に落ちたら先が見えなかった」と語るように不安ではあったと振り返る浪Vgさん。
この年に受けた東大模試の偏差値は80を超えることもあったそうです。共通テストでは90.4%を記録したものの、河合塾の共通テストリサーチでは理科3類はE判定。それでも二次試験の形式には自信があったので、自分の力を信じて理3を受験しました。筆記試験で手応えを覚え、「合格した」という感覚を覚えます。
しかし、理3受験生を対象に行われている面接がもう一度行われることになった時は焦ったそうです。
「後からわかったのですが、少なくとも自分の知る限りでは、すでに他の大学に籍を置いて理3を受験しに来て受かった人はみな再面接でした。理3だから(力試しで)受けに来たという人を弾こうとしていたのだと思います」
ただその再面接も「老化の研究をしたい」という意思をアピールして、そつなく終えた浪Vgさんは、合格最低点から+34点、合格者の中でも上位の点数を取って無事、3浪で東京大学理科3類に合格することができました。
「自分の番号があることを確認したときは感動しました」と語る浪Vgさんは、現在東京大学理科3類の1年生。浪人して良かったことを聞くと、「試行錯誤するきっかけができたこと」、頑張れた理由については「理3に行きたいという強い気持ちがあったから」と答えてくれました。
「浪人中、理3のことを調べれば調べるほど、理3に行きたいと強く思いました。意地みたいなものですね。今は単純に勉強に対する面白さから、いろんなことを大学で勉強できています。文理を問わず、いろんな科目を勉強する経験ができていて良いなと感じます」
医学部に進みつつ、スタートアップの創業もしたい
大学に入ってからの浪Vgさんは、2浪目から勉強を教えていたことにやりがいを感じたこともあり、集団指導をやりつつも、既存の塾や予備校ができていないことをしたいと思い、合同会社Vibrant Squareを設立しました。
「自分が受験勉強をしていたときにも感じたことですが、地方の子は勉強をするコミュニティが足りていないと思っています。僕は自分が受験生時代にXでつながった子たちに勉強を教えているうちに、教えていた子同士もXでつながって自分たちで勉強をし合ったり、情報を共有し合ったりする『自主ゼミ』が流行り出すのを見てきて、コミュニティを作ることの強さを学びました。だから、そうした場所を作りつつ、集団指導や、既存の塾や予備校がしていない色んなことをしていきたいです。
これが最初の起業ですが、在学中に他の分野の起業もしたいと思います。医療系、AI、X-Tech、Deep Techなどテクノロジー全般に興味があり、スタートアップの創業をしてみたいです。難しいことだと思いますが、今までになかったなんらかのイノベーションを起こしたいです。将来的にはそのまま医学部に進む予定ですが、新しい医療をつくる一員になるのも目標です。どれだけ時間があるかはわかりませんが、臨床医か研究医をやりながら様々なやりがいのある仕事をしていきたいと思います。もし僕に家庭教師を依頼したい方はXまでご連絡ください」
医師に限らず、類稀なる才能を生かして世の中で活躍する人材を多数輩出している東京大学の理科3類。彼も近い将来、医学と起業で世の中を変える存在になるのだろうと思いました。