事故多発「名阪国道」超危険なのに"中途半端"な訳

交通量が多いのに高速道路ではない「名阪国道」。「中途半端な自動車道」になってしまった歴史的経緯とは?(写真:Hiroko/PIXTA)
運転技術に自信のある人でも、あまりのコンディションに「あ、もうダメだこれ」と何度も死を覚悟する……そんな道が、三重エリアに存在する。「名阪国道」だ。
【画像】「あ、これアカンやつかも…」 歯を覚悟する「Ωカーブ」はこんな感じ
前編では、通称Ωカーブや、天候が急変しやすい背景などを解説したが、ここで気になってくるのは「こんなに交通量が多いなら、名阪国道はなぜ高速道路として建設されなかったのか」ということだ。
最初からそれなりの仕様・広さで建設していれば、事故や渋滞の発生も少なかったのではないか、と思えるが……。
道の駅 針テラス内には、名阪国道の歴史を開設した展示物コーナーがある(筆者撮影)
名阪国道が高速道路として建設されなかった事情は複雑で、もはや「めぐり合わせ」としか言いようがない。
まず、名古屋圏と関西を結ぶ「名神高速道路」が、四日市・奈良まわりではなく岐阜県・関ケ原まわりで開通(1965年)してしまったことに始まる。
四日市市は1959年に第1コンビナートが稼働を開始し、一帯の工業地帯化と、大阪方面へのトラックやトレーラーの激増は目に見えていた。これを見越して、日本道路公団(現在の「NEXCO」の前身。以降:「公団」)は名神高速の建設と並行して、大阪~四日市間の有料道路「大四道路」の調査を1961年に開始。
しかし奈良県が「有料化では利用しづらい。奈良県内は無料化を」と異論をはさんだことで、「有料・無料」をめぐって議論が紛糾する。
ただ四日市~大阪間の高規格道路の重要性は変わらない。当時の建設大臣・河野一郎の「1000日で完成させよ」との指示に基づき、路肩の広さや追い越し車線など、高速道路に必要な基準を犠牲にしてでも、名阪国道の早期開通(1965年)を優先させたのだ。

名阪国道の「Ωカーブ」区間。カーブが10分も続くのだ。なお、この日は助手席で撮影(筆者撮影)

かつて「名阪上野ドライブイン」があった地点の周辺(筆者撮影)
その関係で名阪国道は、無料化となったことや規格の不足などもあり、「自動車専用道」(当時は「準高速道路」扱い)となった。
所有や管理も、一般的な高速道路が「道路公団→NEXCO」で、名阪国道は「建設省→国土交通省が管轄、奈良県・三重県が管理」と、少し異なる。
違いが出るのは「補修・改良の財源」だ。名神高速などの高速道路は、時代に合わせて改良される「道路構造法」に基づいて道路財源で改良されるものの、名阪国道は国交省だけでなく奈良県・三重県の財源も絡むため、予算不足でなかなか改良されない。こうして、一般的な高速道路と名阪国道の差は広まっているのだ。
例にとると、高速道路なら定期的な補修で雨水を取り込むタイプのアスファルトに交換されるが、名阪国道は交換されないままアスファルトが目詰まりを起こして排水が機能せず、2002年8月18日の台風による豪雨では「死亡事故1件を含む事故24件」という、とてつもない頻度で事故が多発している。
「高速道路か、ただの自動車道か」という違いは道路管理や改良の質にもつながり、名阪国道の事故や渋滞の発生にもつながっているのだ。

奈良県は名阪国道の無料化見直しを財務省に要望している(奈良県資料より)
どんな改善策が考えられるのか?
奈良県はいま、あまりにも事故が多発する名阪国道にしびれを切らし、「名阪国道別線整備案」(別の場所に建設しなおし)や、有料化によって交通量を減らす策を検討しているという。
もともと奈良県の反対で「規格を落として無料化」の名阪国道ができたのだから、今言われましても……と言いたくはなるが、無料であるがゆえに生活道路のように使われていることから沿線自治体の反対も根強く、実現はかなり難しそうな様子だ。
伊賀市が数多くの工場誘致に成功するなど、無料で自動車道が使えるメリットは確かにあった。しかし、今後の道路管理の継続性を考えれば、良し悪しが混在、といったところだろうか。
こうなると、名阪国道はいまの枠組みで管理されている限り、根本的な改良は難しそうだ。国に潤沢な予算があれば、Ωカーブの前後を10~20km単位のトンネルでぶち抜いてしまう、という手もあるが、そんな景気のいい公共事業ができるご時世でもない。

名阪国道 奈良県内区間(国土交通省 中部地方整備局資料より)
名阪国道を走るコツは「こまめに休む」!
名阪国道に進入してしまったら「こまめに休憩する」「スピードを出しすぎない」これに尽きる。時間がある方は休憩だけでなく、体力勝負のトラックドライバーに愛され続ける「名阪国道グルメ」を楽しみながらの、ゆっくり道中もいいだろう。

「味のお福」ホルモン定食。カメラが白飛びするほどツヤツヤ・デカ盛りの白飯(並)に注目(筆者撮影)

名阪国道直結のドライブイン内で営業していた「おすみ」のホルモン定食。ドライブインの閉業後に上野ICの2kmほど南側に移転している(筆者撮影)
中でも立ち寄ってほしいのは、上野PA(伊賀市)で営業している「味のお福」だ。
高速道路のサービスエリアにあるような開放的で明るい店舗ではないものの、店内は昔ながらの大衆食堂そのまま。ここで出される「どて煮」と山盛りの白ご飯は最高の相性で、このスタミナ補給でどこまでも走れそうな勢いをつけてくれる。

名阪国道から直接入れる「道の駅針テラス」。旧・都祁村の名産品やグルメが揃う(筆者撮影)
ほか、古き良きドライブインのたたずまいを残す「名阪関ドライブイン」(三重県亀山市)や、地元の農産物から温泉まで揃う「道の駅 針テラス」(奈良県奈良市)などもあり、「食べて休んで」の繰り返しで、体力・注意力をしっかりキープして運転できるだろう。
ただ、食堂系は比較的デカ盛りのお店が多く、胃袋の空き容量とタイヤの空気チェックは欠かさないほうがよさそうだ。
つまり、抜本的な改革や定期的な改善がなされていない以上、安全運転を心がけるしかないということだ。お盆の行楽シーズンでは、普段あまり車に乗らない人も運転することが増えるが、くれぐれも名阪国道には気をつけていただきたい。旅行は、行って戻るまでが旅行なのだから。