発達障害がある子の行動が「叱られても直らない」ワケ。親の言葉はこんな風に聞こえていた!

発達障害がある子の行動が「叱られても直らない」ワケ。親の言葉はこんな風に聞こえていた!
発達障害がある子は、「独特なこだわりがある」「言動や思考が個性的」「人の気持ちがわからない」などの特徴から、周囲とうまく折り合いをつけられず、家庭や学校で生きづらさを抱えていることが多いと言われています。
漫画家かなしろにゃんこ。さんの息子・リュウ太くんにも発達障害がありました。小学生の頃は授業中に脱走してしまったり、悪いことをしても「ごめんなさい」が言えなかったりと、完全な問題児だったとか。
そんなかなしろさんの描き下ろしコミック『発達障害 僕にはイラつく理由(ワケ)がある!』は、当時の親子の奮闘ぶりに加え、大人になったリュウ太くんにインタビューし、発達障害がある子の内面を徹底取材した異色作です。
「あの頃はどんな気持ちだったのか」「叱られても行動をやめられなかったのはなぜ?」母・かなしろさんの質問に、リュウ太くんの答えは……?
話し出すと止まらないのはなぜ?!
自分の好きな話をしだすと止まらないリュウ太くん。長い時は1時間以上も喋りっぱなしというから、話を聞いてあげる側も大変です。また、話し相手のことまでは考えられないので、かなしろさんが「ごめん、トイレだから」と中座しても追いかけて話し続けたり、よかれと思って話を合わせても「お母さんは黙ってて!」と不機嫌になったり……。
我が子のことが分からないまま育てていた、というかなしろさんですが、そんなリュウ太くんも現在は成人し、落ち着いて話ができるように。そこでかなしろさんは、あの頃はどんな気持ちだったのか、本人に聞いてみることにしたのです。
話し出すと止まらなかった、そのワケとは?
我が子が今どんな気持ちでいるのか、わからないことが一層不安を掻き立てることもありますよね。『僕にはイラつく理由(ワケ)がある!』の監修・解説を務めた、発達障害の専門家である前川あさ美・東京女子大学教授は「話し続けてしまう“理由”と“気持ち”を受け止めることが大切。そのうえでわかりやすく止めましょう」とアドバイスしています。
人の気持ち、わかるかな?
幼い頃は「ありがとう」や「ごめんね」が言えなかったリュウ太くん。注意してもあまり響いていなさそうな様子に、「うちの子には相手をいたわる気持ちが欠けている……」と、かなしろさんもずいぶん悩んだそうです。
そんな時ふと思い出したのが以前、取材で出会った、特別支援学級での教員経験もある高校の先生のお話。「さまざまな立場の人物が登場し、ぶつかったり支え合ったりするドラマは、子どもたちが人の気持ちを理解するのに役立っているのかもしれない」というアドバイスから、かなしろさんはリュウ太くんと一緒にドラマや映画を積極的に観てみることにしました。
かなしろさんが登場人物の心情を解説しながらの「親子ドラマ観賞」はその後何年も続き、いつしかリュウ太くんも中学2年生に。はたしてドラマ鑑賞の効果のほどは……?
発達障害があるからといって人をいたわる気持ちはないのではなく、心の成長がマイペースなだけ。ただそこに至るまでには、たくさんの悲喜こもごも(?)が必要だったようです。
前川あさ美・東京女子大学教授いわく、人の気持ちを汲み取るトレーニングには、ドラマ以外にマンガやアニメも有効とのこと。目に見えないものを認識するのが苦手な発達障害の子どもには“気持ちの見える化”がキーワードのようです。
叱っても行動を変えられないのはなぜ?
発達障害がある子どもによく見られる日常生活でのトラブルの一つが、食事での「粗相」。リュウ太くんも小学4年生ごろまでは、3日に1回は汁物をひっくり返してしまっていたそうです。
しかしかなしろさんは、当時通っていた児童精神科のペアレント・トレーニングでの指導を参考に、途中から叱るのをやめ、リュウ太くん自身に後始末をさせるだけに。
さらに、大人になったリュウ太くんに当時の率直な気持ちを取材したところ、改めて「発達障害のある子にガミガミ言っても、決して心に届かない!」とわかったのだそうです。発達障害がある子どもの、問題行動を起こした時の“心の中”とは、一体どんな状態なのでしょうか?
「なぜ言ったことが伝わっていないのか」「注意された時、心の中はどうなっているのか」を理解することで、遠回りでも互いにストレスの少ない方法に辿りつけたにゃんこ。さん親子。
前川あさ美・東京女子大学教授も「彼らは“変化がゆっくり”なのです。にゃんこさんのように急がば回れで関わり続ければ成長します!」と、にゃんこ。さんの対応に太鼓判を押しています。
かなしろ にゃんこ。
千葉県生まれ、漫画家。1996年に「なかよし」でデビュー。おもな作品に『漫画家ママの うちの子はADHD』『うちの子はADHD 反抗期で超たいへん!』(ともに田中康雄監修)『発達障害 うちの子、人づきあい だいじょーぶ⁉』(以上、講談社)、『発達障害でもピアノが弾けますか?』(中嶋恵美子原作、ヤマハミュージックメディア)などがある。発達が気になる子どもの親向けポータルサイト「LITALICO発達ナビ」でコラムを好評連載中。
前川あさ美(まえかわ・あさみ)
東京女子大学教授(現代教養学部心理・コミュニケーション学科心理学専攻)、公認心理師、臨床心理士。東京大学教育学部を卒業後、同大学大学院に進学。途中、米国アイオワ大学大学院に留学し、帰国後、東京大学大学院教育学研究科教育心理学専攻博士後期課程単位取得退学。大学の心理臨床センターや都内のカウンセリングセンターで臨床にも携わる。『「心の声」を聴いてみよう! 発達障害の子どもと親の心が軽くなる本』(講談社)など著書多数。
この記事は2022年3月30日に配信した人気記事を再編して掲載しています。
漫画/かなしろにゃんこ。
監修・解説/前川あさ美
構成/からだとこころ編集チーム