クセが強い世界の"マック"、巡って楽しむ多様性

美しいたたずまいのマック, 「海外旅行でマック」の敗北感, マックは灯台のような存在, ご当地メニューが世界一周の楽しみに, インドでマハラジャマックを食べる, マックのない国もあった

インドのマックで筆者が注文したマハラジャマックとマンゴーラッシー(写真:筆者撮影)

経済ジャーナリストで、法政大学MBA兼任教員の浦上早苗さんが挑戦した50歳からの“おひとり様”世界一周。その旅を通じて見えてきたもの、感じたことを、ありのままに綴る連載が「シン・世界一周〜人生後半、日本を学び直す旅」です。
今回は世界中で、何度か立ち寄ったマクドナルド(マック)の訪問記。お馴染みのファストフード店のはずが、行ってみたら、それぞれクセがあって興味深かったそうで…。

美しいたたずまいのマック

そのマックは外観からしてマック要素がほとんどなかった。お馴染みのロゴ以外にーー。

【写真】ベトナムのマックではクリームソースがかかったチキンとベトナムコーヒーを注文した

店内も同様だ。天井からつり下がったシックな細長い照明、木製の仕切り壁。設置されたテレビではサッカーの試合が中継されている。

2階に上がると、歴史的な建造物を思わせる空間が広がっている。天井が高く、開放的な2階席は客がほとんどおらず、何の変哲もない屋外のテラス席の方がにぎわっている。

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モロッコ・フェズのマック。外観は緑の装飾がかわいらしい(左)2階は天井の凝ったつくりが印象的だった(右)(写真:筆者撮影)

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フェズのマック店内。マックのロゴがなければ、おしゃれなカフェにしか見えない(写真:筆者撮影)

モロッコの人々は屋外でお茶を飲むのを好むようだ。

ここはイスラム王朝が9世紀に首都を置いたモロッコのフェズ。迷路のように入り組んだメディナ(旧市街)は世界遺産に登録されている。

【写真を見て"世界のマック巡り"】ご当地メニューや日本から消えたメニューも海外では健在! 「海外旅行でマクドナルド」は思いがけず楽しかった(32枚)

黄色いM字のロゴがなければほとんどの日本人がその正体に気づかないだろう、美しいたたずまいのマックは、メディナから20分ほど歩いた観光エリアの外側にあった。ご当地メニューのマックフィズ・モヒートを注文し、わざわざ来た甲斐があったと心が躍った。

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フェズのマックのカウンター(写真:筆者撮影)

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フェズのマックの屋外テラス席。女性グループや家族連れが多い(写真:筆者撮影)

「海外旅行でマック」の敗北感

旅先でその土地ならではのものを体験したい筆者にとって、海外旅行で見慣れたチェーン店に入るのは「負け」という感覚があった。中南米の空港でマックを見かけたときは、商品の価格だけチェックして素通りした。

世界一周中に初めてマックに入ったのはスペインのトレドだ。中世の雰囲気が残る都市で、「スペインに一日しかいないならトレドへ行け」という言葉の通りに訪ねたが、観光地価格と円安のダブルパンチで、一人でさくっと夕食を食べられる飲食店探しに苦労した。

歩き疲れて結局、大きな広場の一角にあったマックに入った。ハンバーガーとカプチーノのセットで3.11ユーロ(当時のレートで533円)。日本と同じメニューが日本より高く、敗北の味がした。

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スペイン・トレドの観光エリアの中心部にあるマック(写真:筆者撮影)

世界一周旅行でマックはこれきりにしたいと誓ったのに、スペインの次の訪問地であるモロッコでもマックに入ってしまった。

最初に降り立ったマラケッシュの地では、空港バスを下車するなりヘジャブを身に着けた女性にぼったくられかけ、言い合いになった。ホステルに向かう道中、「道案内」と称してチップをせしめようとする男たちに囲まれた。

松田聖子の楽曲「マラケッシュ」から連想するエキゾチックなイメージとは程遠い混沌と喧噪で、初日からぐったりとした。

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マラケッシュのフナ広場。何とも言えないカオスな空間だった(写真:筆者撮影)

泊まったホステルはWi-Fiが弱く、PC作業をするスペースもなかった。とりあえず現地のSIMカードを調達してカフェで仕事をしようと、オフィスやショッピングモールが集積する新市街まで30分近く歩いて、少し休みたいと思ったときにマックのロゴが目に入った。

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マラケッシュのマック(写真:筆者撮影)

中に入って驚いた。女性がたくさんいたからだ。

トレドでマックに入ったときは敗北感でいっぱいだったが、マラケッシュではそんなことを思う余裕もなかったし、むしろほっとした。

モロッコのカフェは男性の社交場という位置づけのようで、店員も客も男性ばかりだった。数少ない女性客は基本的に男性と一緒に来ている。飲食店で接客をしているのも男性で、小さな食堂で店主の家族らしい女性に会計をお願いしたら、首を振って奥に引っ込まれてしまった。

女性一人客というだけで緊張を強いられるマラケッシュにあって、女性がマジョリティの店内に肩の力が抜けていくのを感じた。

注文する端末の言語を英語に切り替えメニューを見ていると、女性店員が操作を手伝ってくれた。改めて店内を見渡すと、女性グループだけでなく、女性1人客もちらほらいる。女性店員がヘジャブを着けていないのも新鮮だった。

マラケッシュのマックは女性が伸び伸びと過ごせる数少ない場所なのかもしれない。PC作業がしやすいテーブル席もありがたく、モロッコ旅行中は作業スペースを求めてマックを訪ねるようになった。

そうしてアフリカ唯一の高速鉄道駅に設置されたマックやフェズの芸術的なマックに出合うこともできた。

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モロッコのご当地メニュー。左端のマックフェズ・モヒートを注文した(左)、モロッコのマックのメニュー。ボリューミーなハンバーガーが多い(右)(写真:筆者撮影)

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アフリカ初の高速鉄道、タンジェ駅のマックで購入したサラダとコーヒー(写真:筆者撮影)

マックは灯台のような存在

日本でいつでも行けるマックにわざわざ入りたくないと思いつつ、海外でマックに救われることはままあり、漂流者にとっての灯台のような存在にも映る。

イスタンブールでは大規模な交通規制が敷かれた日に空港に移動することになり、雨の中を数時間歩いているときにマックを見つけた。店に入ると休憩中の警察官たちがハンバーガーを頬張っていた。

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イスタンブールでは交通機関がストップする日に空港に移動することになった(写真:筆者撮影)

店内に設置されているオーダー端末。日本にいたときはあれを使うメリットがさっぱり分からなかったが、海外に出て、世界共通のシステムの安心感を実感した。

英語に言語を変更してメニューをじっくり吟味できるし、クレジットカードで決済して番号札を取ると、店員が商品をテーブルに持ってきてくれる。

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トルコの店舗で端末に表示されたハンバーガーのメニュー。ビッグマックの2倍牛肉が入った「ダブルビッグマック」もある(写真:筆者撮影)

ご当地メニューが世界一周の楽しみに

システムやロゴが世界共通である一方で、メニューは国ごとに現地化されており、マックでご当地メニューを楽しめることも世界一周旅行の発見だった。

イスタンブールのマックには、トルコのご当地肉料理「キョフテ」のバーガーがあった。ただ、キョフテはすでに食べていたので、日本では2024年1月に販売終了したワッフルコーンアイスを注文した。母国から消えたメニューと再会できるのも、海外マックの楽しみの一つだ。

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イスタンブールのマックで日本では販売を終了したワッフルコーンを見つけテンションが上がる(左)、トルコのマックにはキョフテバーガーもあった(右)(写真:筆者撮影)

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イスタンブールのマックで注文したワッフルコーンのソフトクリーム。海外のマックではクリームが崩れていることがよくあった(写真:筆者撮影)

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トルコのマックのドリンクメニュー(写真:筆者撮影)

タイやフィリピン、ベトナムなど東南アジアで訪れたマックはご飯メニューが充実していた。同じくコメが主食の日本でそうならなかったのも面白い。

タイはスイーツメニューがたくさんあって、ソフトクリームはなぜかコーンの色を3色から選べた。ベトナムはチーズケーキやマフィンが販売されていた。

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タイのマックはご飯メニューが豊富(左)、サイドメニューも独特(右)(写真:筆者撮影)

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タイのマックのスイーツメニュー。なぜだかソフトクリームのコーンの色が複数ある(左)、注文したカラフルコーンソフトクリーム。50円台で、お財布に優しい(右)(写真:筆者撮影)

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マニラのマックでは朝ごはんにどんぶりものを注文した(写真:筆者撮影)

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フィリピンの低価格セットメニュー。日本円だと約260円(左)、フィリピンの低価格セットメニュー。まさかのお代わりご飯つき(右)(写真:筆者撮影)

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ベトナムのマックにはケーキやマフィンもあった(写真:筆者撮影)

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デザートとドリンクメニュー

ベトナムのマックもコメを使ったメニューがある(左)、ドリンクの中にはベトナムコーヒーも(右)(写真:筆者撮影)

インドでマハラジャマックを食べる

あちこち訪問した中でもインドのマックはとにかくクセが強かった。

マックと言えば牛肉のハンバーガーだが、ヒンドゥー教徒が国民の多数を占めるインドのマックに牛肉メニューはない。そしてビッグマックの代替物としてベジタリアン向けの「マハラジャマック」なるものが売られている。

ジャイプール観光で利用したリキシャ(トゥクトゥク)の運転手に「マックで昼ご飯を食べたい」と言ってみたら、怪訝な表情で「インドでマックは人気がないよ。君は物好きだね」と返され、日本人旅行者に人気だというカレーの店に連れて行かれた。

仕方がないのでホテルに戻った後、わざわざウーバーを呼んでマックに行った。

インドのマックは想像していた以上に独自色が強かった。バターパニールグリルドバーガーなど鶏肉を使ったバーガーがメインで、筆者が訪問したときは期間限定でコリアンバーガーフェアをやっていた。

鶏肉をコチュジャンで味付けした韓国風味のハンバーガーという説明書きを見て、「なぜインドで韓国バーガー?」と不思議に思ったが、店員によるとK-POP人気にあやかったそうだ。

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インドのマックのハンバーガーメニュー。「マハラジャマック」や「バターパニールグリルドバーガー」など個性的(写真:筆者撮影)

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インドのマックでは期間限定で韓国フェアがやっていた(左)、ドリンクにマンゴーラッシーを選べた(右)(写真:筆者撮影)

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インドのマックのスイーツメニュー。マンゴーソフトが気になった(写真:筆者撮影)

気になるメニューが多すぎて目移りするが、ここは初志貫徹でマハラジャマックを注文する。

いつものようにオーダー端末を操作すると、初期設定から英語になっていて、ヒンディー語には対応していない。ヒンディー語しか話さないような客はそもそもターゲット外なのか、とにもかくにも潔い。

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インドのマックのオーダー端末は英語メニューしかなかった。ヒンディー語になぜ対応していないのだろうか(左)、ジャイプールのマックで出会ったドナルドは顔が少しおかしかった(右)(写真:筆者撮影)

ドリンクはマサラチャイと迷った末、マンゴーラッシーを選択した。クレジットカードで決済しようとすると、すぐそばのカウンターからこちらを見ていた店員に「レシートの紙が切れているからその端末は止めているの。こっちに来て」と声を掛けられた。

え、だったら早く言ってよ。

牛肉の代わりにコーン&チーズでパティを作ったマハラジャマックはかなり分厚く、潰しながら食べた。もっさりした食感で、肉よりもお腹が膨れる気がした。

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コーンとチーズでパティを作ったマハラジャマック(写真:筆者撮影)

午後6時すぎだったが客はまばらで、外国人女性が珍しいのか他の客の視線を感じる。

周囲の客はだいたいソフトクリームを食べている。ここで気づいた。スイーツメニューが豊富な国は、裏を返せばハンバーガーとフライドポテトだけでは客を呼べないのかもしれない。

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インド・ジャイプールのマック。店内の客はまばら(写真:筆者撮影)

マックのない国もあった

訪れた中で、マックが存在しない国もあった。ラオスだ。

「東南アジアの秘境」として欧米人の間で人気の旅行先であるラオスは、欧米の飲食チェーンがわりと進出している。2022年に首都ビエンチャンにスターバックス1号店がオープンした。その近くにはハードロックカフェもある。

なのにマックはない。ちなみに韓国ルーツのロッテリアは地方都市でも見かけた。

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ラオスで見かけたロッテリア(写真:筆者撮影)

牛肉ご法度のインドでマハラジャマックや韓国バーガーをメニュー化してまで営業しているのに、外国人旅行者向けのハンバーガーショップが多くあるラオスに進出していないのも不思議。

ちなみに隣国のベトナムにマック1号店ができたのは、スターバックスより1年遅い2014年で、首都のハノイにはいまだに数店舗しかない。

筆者はフライドチキンとベトナムコーヒー、コーンサラダを注文したが、日本円で500円を超えた。ベトナムのランチ相場からすると高いから、学生が気軽に行けるという感じではない。

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ハノイの中心部にあるマック(写真:筆者撮影)

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ベトナムのマックではクリームソースがかかったチキンとベトナムコーヒーを注文した(写真:筆者撮影)

日本では珍しくもなんともないマック。我が家の徒歩圏内にも2店舗ある。しかし世界一周する中で、マックの立ち位置や店舗の分布は国ごとに大きく違うと知った。

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ジョージアの首都・トビリシのマック(写真:筆者撮影)

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トビリシのマック。トビリシは日本と親和性を感じたが、マックの店内も日本っぽい(写真:筆者撮影)

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ジョージアのマックはコーヒーや紅茶の種類が豊富だった(写真:筆者撮影)

オーダー端末と価格はおおむね世界共通だが、その国の物価やカルチャーによって客層が大きく変わり、ご当地メニューは想像よりずっと尖っていた。

マックでも十分に、世界の多様性を堪能することができるのだ。

【写真を見て"世界のマック巡り"】ご当地メニューや日本から消えたメニューも海外では健在! 「海外旅行でマクドナルド」は思いがけず楽しかった(32枚)