シリーズ大好きライターが沼った「エイリアン:アース」名場面!過去作のトリビア満載で紹介
「エイリアン:アース」がおもしろい!そう感じるのは筆者だけではないだろう。実際、映画・ドラマの批評集計サイト「Rotten Tomatoes」では第6話の配信が終わった時点で、批評家スコア95%フレッシュの支持を受けている。これはドラマシリーズではなかなか叩き出せない数字だ。では、ここまで支持を受けている理由はなにか?SFドラマとして、とてもよくできているから。キャラクターが魅力的だから。ホラー的な要素にドキドキできるから。いろいろ理由は考えられるが、「エイリアン」シリーズのファンを満足させる下地があったから、ということはけっこう大きいのではないか。

「エイリアン:アース」はディズニープラス「スター」で独占配信中!
シリーズのファンである筆者にとって、第6話までの「エイリアン:アース」は過去シリーズへのリスペクトが十分に感じられるものだった。鬼才リドリー・スコットが生み出した1作目の『エイリアン』(79)には、とりわけ深い愛情を注いでいる。もちろん、シリーズにふれたことがなくても本作は十分に楽しめるが、ファンであれば「エイリアン」のイースターエッグ的な要素を楽しむこともできる。本稿では、それを整理してご紹介。奥深い「エイリアン:アース」の世界に、行ってみよう!
※以降、「エイリアン:アース」第6話までのネタバレ(ストーリーの核心に触れる記述)に該当する要素を含みます。未見の方はご注意ください。
『エイリアン』好きなら誰もが大興奮!ノストロモ号とそっくりなマジノ号の内部
まず、シリーズのファンであれば誰でも気づくのが、「エイリアン:アース」で地球に墜落するスペースシップ、USCSSマジノ号の内部の仕様が、『エイリアン』のノストロモ号と瓜二つであること。どちらもウェイランド=ユタニ社が作り出したものなので、当然といえば当然だが、それにしてもよく似ている。そして似ているからこそ、ファンとしては観ていて熱くなれる。

第1作『エイリアン』のコールドスリープ室

「エイリアン:アース」のコールドスリープ室
第1話の冒頭からして、そうだった。クルーが目を覚ますコールドスリープ室も、その後彼らが訪れる食堂も、ノストロモ号の内部にリンクする。コールドスリープ室で眠っているクルーが下着姿であることもしかり。ファンが抱くノストロモ号の記憶が、どんどん掘り起こされていくのだから、これは燃えないわけがない!

ユタニ社のモニターは4:3のブラウン管でできているのに注目
マジノ号の内部についてもう少しふれておこう。墜落前の模様は第1話で予告編的に描かれ、第5話ではまるまる一話を使って、マジノ号の墜落理由を解き明かす。ここで目を引くのは、「マザー」と呼ばれるAIが存在するコンピュータールーム。内装はノストロモ号のそれとほぼほぼ一緒だ。白い壁に無数の電球が埋め込まれ、それらが信号のように点滅している。コンピューターのモニターには黒地に緑のテキストが流れ込む。それを操作するのは副官である女性航海士と、サイボーグ。ついでにいえば、このふたりの仲がよろしくないことまで『エイリアン』と一緒だ。

チェストバスター初登場の舞台にもなった『エイリアン』の食堂

「エイリアン:アース」での食堂。第1作とは違う形で“寄生”が描かれる
マジノ号の医務室もノストロモ号のそれに寄せてきている。寝台に横たわる、フェイスハガーが付着したクルーの肉体と、それをスキャンする装置、外の窓から様子をうかがえる通路は、やはり『エイリアン』の治療シーンを思い出させる。ほか、クレーンが揺れる標本室や、蒸気が噴出する通路、うす暗いブリッジなどなど挙げたらキリがない。第5話のエンドクレジットで『エイリアン』のプロダクションデザイナー、マイケル・シーモアへの謝辞が記されているが、それも当然だろう。
エイリアン視点の主観映像は『エイリアン3』のオマージュ!?
船内の内装はこれくらいにして、ほかに目を移そう。第2話ではゼノモーフが、兵士の顔面をインナーマウスで貫き殺す描写があるが、これはファンには「待ってました!」なシーン。1作目の機械工ブレット(ハリー・ディーン・スタントン)やパーカー(ヤフェット・コットー)が、この手段で殺されて以来、シリーズを重ねる度に何度も見てきた場面だ。これがなければ、「エイリアン」とは言えないというくらい、絶対にあって欲しい場面なのだ!

シリーズのお約束もしっかりありつつ、新鮮な楽しみがある「エイリアン:アース」
第3話の燃えポイントは、倉庫内でエイリアンとバトルしたあとの主人公ウェンディ(シドニー・チャンドラー)に起こる異変。彼女の額から、白い液が流れてくる。第1作では、シンセと呼ばれる人造人間アッシュ(イアン・ホルム)に同様の異変が起きた。シンセとAIのハイブリッドであるウェンディの体内組織も、似たようなものなのかもしれない。ともかく白い液が出ると、それが故障のサインであることは、アッシュのてん末からも明らか。ウェンディがこのあと、意識を失うのも必然だ。

ゼノモーフが大暴れする第3話は、本作前半の最大の見せ場
第5話は、先にも述べたとおり、マジノ号に起こった惨劇を描いているが、このエピソードの構造自体が1作目をなぞっている。船内で得体の知れない異星生物に襲撃され、次々と命を落とすクルー。一方で、エイリアンの標本を移送するというに任務に忠実なサイボーグ。この構図だけでシリーズファンとしては“ご飯十杯はいける”描写なのだが、第5話はそれにとどまらない。船内を逃げ回る女性副官ザヴェリ(リチャ・ムールジャニ)をゼノモーフが走って追ってくる場面では、エイリアン視点の主観映像も織り込まれているが、これは『エイリアン3』(92)でデヴィッド・フィンチャー監督が同様の手法を取っていたことのオマージュ!?さらいえば、ザヴェリがゼノモーフに捕まり最期を迎えるシーンでのストロボの映像も『エイリアン』での惨殺シーンとリンクする。

第1作だけでなく、過去のほか作品からもオマージュが!(写真は『エイリアン3』より)
ちなみに第5話に付けられたサブタイトルは「In Space, No One…」。これは1979年の『エイリアン』全米公開時に付けられた宣伝用コピー「In space, no one can hear you scream」からの引用。日本公開時にも直訳の「宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない」というキャッチコピーが躍ったので記憶している方も多いのでは。
新鮮な驚きばかりで毎週水曜日が楽しみで仕方ない!
第6話にもファンを狂喜させる場面があった。それは、人間に寄生して胸部を突き出たチェストバスターがゼノモーフへと進化する過程。小さなヘビ程度の大きさであるチェストバスターが、次に現われた時には成体のゼノモーフになっているのはシリーズのお約束で、エイリアンが急激に成長していることを表現していた。しかし、ウェンディが度々エイリアンとの交信を試みる、この第6話ではその中間である、「半分チェストバスター、半分ゼノモーフ」の状態を見ることができるのだからうれしい。

半分チェストバスターで半分ゼノモーフ…気になる姿は第6話で確認してほしい
言うまでもなく、「エイリアン:アース」には独自の展開があり、「ピーター・パン」の世界観を持ち込むなどの新鮮な驚きがある。それはすべて1作目で築かれた土壌の上に成立しているから、魅入ってしまうのだ。残る2話はどうなるかはわからないが、さらにオマージュを捧げる見せ場があってもうれしいし、リスペクトを保ちつつ別次元に突き抜ける展開もアリだ。いずれにしても、「エイリアン:アース』は最後の最後まで観ないことには収まりがつかない!
文/相馬学