『シバのおきて』大東駿介「柴犬の<のこ>からお芝居を学んで。犬ファーストの現場は人間にも優しかった」
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【写真】柴犬のかわいさがドラマの魅力のひとつ
犬ファーストの現場で
<相楽の飼い犬の柴犬・福助を演じる「のこ」以外にもたくさんの柴犬が登場する。撮影現場では、犬ファーストが徹底された>
暑い時期が来る前に屋外でのロケの大半を終わらせたので、猛暑が来た頃には、スタジオでの撮影でした。犬は毛皮を着こんでいるようなものなので、犬に負担がかからない、犬優先の撮影スケジュールを組んでもらったら、結果的に人間にも優しい環境になったんです。 犬の撮影が続いたら、その日の後半は人間だけの芝居にしたり、リハーサルでは犬のぬいぐるみを使ったり。うまくバランスをとったスケジュールを組んでいただけました。
福助を演じているのが柴犬の「のこ」です。とにかくお利口で芸達者。「お手」や「伏せ」「待て」のほかに「ゴロン」と指示すると本当にゴロゴロ回ります。のこ自身が芸をすることが好きでおもしろくてやっている感じもありました。福助はポップな性格なので、のこがいないと成立しない場面はたくさんあったんです。
自由奔放さが魅力
心配していたのが、芸達者ゆえに技のお披露目会みたいになること。でも、のこは自由奔放なところがあって、こちらが思っていた行動と違うことをすることもあるんです。それが映像で見たときに魅力的でした。
僕はお芝居をしたときに、自分が意図的に何かをしてしまっていると後悔することがたまにあるんです。のこのように自由に、予想もしていない芝居でも魅力的に映るような俳優でありたいと思いました。

(『シバのおきて』/(c)NHK)
チーフ演出とは、「犬は思い通りにならないことが魅力。思い描いているビジョンを絵に残そうとするよりは、犬が持っている魅力を引き出していけたら」と話していました。「ままならなさ」も含めて魅力として捉えたかったんです。
人間の都合よく撮ることによって、本来の魅力が薄れることを恐れていました。でも、のこは「こういうふうになればいいな」というイメージをいい意味で壊してくれたんです。
撮影前から一体感
たくさんの柴犬が出演します。撮影に入る前に、キャストや制作チームが共通認識として持っておいた方がいいことを勉強する時間をいただきました。ドッグトレーナーの方々に指導いただいて、犬の性格や嫌がること、嬉しいことを学んだんです。
準備段階で大切にしたのは、その子自身の性質を肌で感じておくこと。例えば、のこは前足を触られるのが苦手。だから、「台本には書いてあるけど、この子の性質としてそれは苦手」というのを見つけたら、「代わりにこんなアイデアはどうですか?」と提案していました。

(『シバのおきて』/(c)NHK)
最初からチームの一体感があったのも犬たちのおかげです。作品では通常、キャストや制作チームと徐々に仲良くなっていきますが、今回は違いました。動物と触れ合う時に、人間性が見えるからお互いの警戒心がなくなって、「この人は信用できる」というところから始められました。
撮影が始まってからも、みんな楽屋に帰らず、犬の待機部屋に遊びに行っていました。犬を介して1つになっている実感がありました。のこたちとは、現場で会うだけでしたが、言葉が分からない分、彼らの気持ちを理解しようとする。言語を超えた思いがつながる瞬間があると、撮影を通して感じました。
知的探求心が満たされる仕事
<2005年、19歳の時ドラマ『野ブタ。をプロデュース』で俳優デビュー。芸歴を重ね、現在39歳。40代になる来年は、大河ドラマ『豊臣兄弟!』で前田利家を演じる>
俳優の仕事への向き合い方が年齢とともに変化してきました。デビュー当時は、その作品の必要な部分を俳優として埋めるという役割を感じていました。30代を過ぎたころから、作品が完結してそれで終わり、というだけでは満たされていないと感じるようになったんです。

大東駿介さん
今は、作品に参加する時には、自分の知的探究心を満たすような何かを1つ持つようにしています。そうすることによって、出会いの数も興味の数も増えました。おこがましいですが、ほんの少しだけ人を助けられる機会も増えた気がしています。
俳優の仕事をしていると、新しい価値観に出会うことがいちばん面白い。あまりにも無知で、何も知らないところから俳優の世界に飛び込みました。自分の中にある空白の本棚みたいなものを、作品と役を通して埋めていく感覚です。
自分の中の本棚を埋めて
例えば、次の大河ドラマ『豊臣兄弟!』では前田利家を演じます。今まで自分が知らなかった若いころの前田利家を知って、そこから見える時代背景がある。1つの作品で、自分の中の本棚にいろいろな本が増えていく。『シバのおきて』でも、犬と暮らすという環境は日常によくあるけれど、作品を通すことでより深掘りできて、自分の本棚が埋まっていく。知的探求心がすごく満たされるし、それが俳優の醍醐味だと感じています。

大東駿介さん
今回もドッグトレーナーの方に指導を受けましたし、『シバONE』モデルになった雑誌の編集者の方にもお目にかかれました。普段お会いできない方々とお会いできて、自分の人生だけでは体験できなかったものを深く知ることができました。
「演じる」ということを今、意識的に飛び越えていこうと思っています。この仕事だから出会えたものを何かにつなげていけないかは常に考えています。30代は蓄えた時期なので、40代はアウトプットしていきたいですね。
来年は40歳。やりたいことは山ほどあります。自分が自分に期待できる人でありたい。「お前はもっと面白いことができるだろう。だってお前は面白いやん」と、自分が自分に思える人間でありたいですね。