「つい最近まで、家庭で飼われていた猫だと思います」近所に迷い猫が2匹。動物ボランティアが直面したこと

迷い猫に遭遇した時は

2020年に一般社団法人「ワタシニデキルコト」(ワタデキ)を設立した動物保護活動家・坂上知枝さんに、これまで出会った保護犬猫とのエピソードを語っていただく本連載。前回は「地域猫」を取り巻く環境や、野良猫の数を減らし、地域におけるトラブルを減らすために、野良猫を捕獲器などを使って捕獲(Trap)し、不妊・去勢手術(Neuter)を行い、元の場所に戻す(Return)活動──、TNRの必要性について紹介した。

「記事が出た後、いろいろな感想をもらいました」と坂上さん。「近所で地域猫を目にしたら何ができるのか」といった相談もあったそうだ。そんな折、ワタデキの公式HPの制作等をサポートしてくれているさやかさんが迷い猫に遭遇。さやかさんは初めて猫の保護活動を体験したという。

「自分が迷い猫に遭遇した時の参考にもなると思うのでぜひお話させてください。

最近のことです。

さやかちゃんから、『近所で猫がうろうろしているのを目にしました。周りの人に聞いてみると、2週間ほど前から、2匹の猫を見かけるようになったそうです』と相談を受けました」と坂上さん。

さやかさんによれば、「このあたりは犬を飼っている人が多く、散歩の時に目にしていた人もいたとか。みなさん、気になってはいるけれど、どうしたらいいかわからないといった状況だったようです」とのことだった。

迷い猫に遭遇した時は, 「警戒心が強くて」捕まらない時は, 3ヵ月間は「落し物」, 捕獲機の使い方も置き方もわからなかった

見つけて気にはなっても、自分に何ができるのかと、手を出しかねるのだろう。写真提供:ワタシニデキルコト

「2匹の猫はどちらも人懐こく、キレイな状態だったそうです。『捨てられたか迷子かと思うのですがどうすればいいでしょう?』とさやかちゃん。送ってくれた写真を見ると確かにとてもキレイ。耳カットがされていない茶トラと白グレーの成猫でした」(坂上さん)

迷い猫に遭遇した時は, 「警戒心が強くて」捕まらない時は, 3ヵ月間は「落し物」, 捕獲機の使い方も置き方もわからなかった

都会の住宅街で発見した2匹の猫は、とてもきれいで落ち着いていて、人を恐れるところはなかったそう。写真提供:ワタシニデキルコト

さやかさんから電話で相談を受けた坂上さんは、「保護して飼い主を探す。現れなければ里親探しね」と答えた。保護活動を行ったのは、さやかさんと、たまたま現場を通りかかったAさん、そして、もうひとりやはり現場で出会ったBさんの3人だ。

Aさんは、「数日の預かりならできますよ」と申し出た。

「警戒心が強くて」捕まらない時は

捕獲活動中、「茶トラの子はすぐにキャリーに入ったのですが、白グレーの子は警戒心が強くて苦戦中です」と、再度さやかさんから報告が入る。そこで、「妹の家にある捕獲器を取りに来てもらうことにしました」(坂上さん)。

迷い猫に遭遇した時は, 「警戒心が強くて」捕まらない時は, 3ヵ月間は「落し物」, 捕獲機の使い方も置き方もわからなかった

茶トラの子はすぐにキャリーに入ったのだが……写真提供:ワタシニデキルコト

「捕獲器の使いかたを説明をする際に『匂いの強いものを置いてね』と言うと、『からあげクンですよね、妹さんに教えてもらいました』とさやかちゃん。さすが妹。よ~くわかってます(笑)。

しばらくして、『いけました!からあげクンすごい!』と連絡がありました」(坂上さん)

迷い猫に遭遇した時は, 「警戒心が強くて」捕まらない時は, 3ヵ月間は「落し物」, 捕獲機の使い方も置き方もわからなかった

捕獲機を使う時は、網に爪がひっかからないよう、また見た目にも警戒されないように、底や周囲は新聞紙やタオルで覆うといい。写真提供:ワタシニデキルコト

警戒心の強い猫でも普段食べていないような、魅惑的な匂いの強いものには惹きつけられてしまうということで、保護、捕獲時のマストアイテムらしい。

3ヵ月間は「落し物」

保護は無事成功するが、「もちろん大切なのは保護した後です」と坂上さん。保護後の動きについて、さやかさんにこのような話をしたという。

・警察と愛護センター、区役所に連絡

・病院でマイクロチップが入っているかどうかを確認

3ヵ月間は落し物として所有権は持ち主にあるが、その後は里親を探す必要がある。早めに探しておくといい。

初期医療をかけたのは捕獲に参加したAさんだった。病院で調べたところ、ノミ・ダニは付いておらず、ウイルスも陰性。去勢手術済みで健康状態も良好だったという。マイクロチップは入っていなかった。

さらにAさんは飼い主が見つからなかった場合、2匹を引き取ることを申し出ているという。今回、初めて捕獲・保護活動に携わったさやかさんは、検査の結果をふまえて、「つい最近まで、家庭で飼われていた猫だと思います」と話す。

だが、警察、愛護センター、区役所に連絡しても、それらしい猫の情報には当たらなかった。

以下は、さやかさんによる後日談だ。

「猫をきっかけに路上で知り合った3人が、捕獲・保護活動の初心者ながら力を合わせ、2匹の猫を保護できたことはうれしかったですし、忘れ難い経験になりました。保護した時に、通りすがりの人が『ありがとう』と声をかけてくれ、行動したい気持ちはあるけれど、動けない人が少なくないことを実感しました。

初心者でも勇気をもって一歩を踏み出せば、最低限の処置ができるということもよくわかりました。もちろん、知枝さんの遠隔サポートがなければ難しかったですし、保護に前向きで一緒に動いてくれる人がいたことも大きかったです」

捕獲機の使い方も置き方もわからなかった

2匹が保護された場所にはその後も置き餌がされていた。

「置き餌があったところに、『保護しました』と貼り紙をしておいたところ、数日後に置き餌はなくなりました。車通りが激しい道路の近くだったので、事故に遭わなくて本当に良かったです!

今回のことで、実際に自分たちが主体となって保護することの難しさを知りました。捕獲器ひとつとっても、使い方も置き方もわからず、知枝さんからの『そばで見ていると警戒して入らないから少し離れて隠れたところにいて』というアドバイスに従ったらようやく入ってくれて……。

保護した後もどうすればいいか、どこに届けるか、家ではどう過ごさせればいいかなど、本当にわからないことだらけ。一緒に保護したAさんと病院や警察に行くなど、ひと通り経験して、無事保護に至ったことはうれしく思いますが、同時になんて大変な活動なんだろうと痛感しました」(さやかさん)

迷い猫に遭遇した時は, 「警戒心が強くて」捕まらない時は, 3ヵ月間は「落し物」, 捕獲機の使い方も置き方もわからなかった

初期医療をかけてくれたAさんが、2匹を一緒に預かってくれたという。写真提供:ワタシニデキルコト

当時は、ワタデキの活動をウェブでお知らせするボランティアを始めて、半年経った頃だったというさやかさん。活動内容も保護のやり方も一通り、わかったつもりでいても、実際に自分が主体となって手と体を動かしてみると、わからないことが次から次へと出てくるものである。

後編「地域の猫、餌やり「だけ」で起こること…1匹残せば翌年20匹になることもある「増え続ける猫」問題の解決策」では都会の真ん中で見つかった6匹の子猫と2匹の親猫の保護の行方から、猫との暮らし方で大切なことについて、詳しくお伝えする。