「面白くなるのなら、手を加えてもらって構わない」芳根京子主演ドラマ『波うららかに、めおと日和』原作者が語る実写化への想い【原作者・西香はちインタビュー 後編】

 堅物海軍士官との心温まる新婚生活を描いた『波うららかに、めおと日和』(講談社)。「ダ・ヴィンチWeb」では、実写ドラマ(フジテレビ系毎週木曜よる10時)の放送開始を記念して原作者・西香はち先生へのインタビューを実施。後編では、ドラマ化に対する想い、そして連載50回を超え先生自身が「ひとつの区切り」とおっしゃるこのタイミングで『波うららかに、めおと日和』という作品を振り返っていただいた。

西香はち

2019年『花と紺青 防大男子に恋しました。』(講談社の少女・女性マンガアプリ「Palcy(パルシィ)」先行配信、「別冊フレンド」掲載)で商業デビュー。検索した際に台風情報ばかりが出てくるため、デビューを機にペンネームを「24号」から「西香はち」に改める。制服・軍服が好き。

ドラマ単体で面白くしてほしい

――実写ドラマになることが決まったと聞いたときは。

西香はち(以下、西香):決まったときはびっくり……びっくりしかないんですけど(笑)。ドラマって聞いて、最初はBS かなと思ってて。それでも十分ありがたいんですけど、そうしたら「フジテレビです」って言われて。あぁ……BSフジなのかなと思ったら地上波で、しかも木曜の夜10時って。そんな早い時間でやってくれるんだ!と思って。

――(笑)。ドラマ化って原作者の方には、どのように伝えられるんですか? 「今、ここまで進んでます」と細かく報告を受けるのか、それとも「ドラマ決まりました。フジテレビ夜10時です」のようにイッキに伝えられるのか。

西香:私の場合はだんだんでしたね。「ドラマの話が来てるけど、まだ検討段階で白紙になることもある」と言われて。じゃあ実現しないだろうと思ってました。

――実写ドラマ化にあたって、先生の方からドラマ制作サイドに何か要望を出されたりは。

西香:軍服が似合う人を(笑)。 

――元々、軍服を描きたくて、海軍の話が描きたくてスタートされた作品ですものね。

西香:そうですね。軍服は描くのも大変なんですが、ドラマではきちんとしてほしくて。なので「時代考証の人は入れてほしい」ともお願いして、ちゃんと入れてもらってます。

――撮影現場の取材には行かれたんですか。

西香:はい。撮影風景を見学している中で、一瞬なんですが、芳根(京子)さんが演じるなつ美と本田(響矢)さんが演じる瀧昌が、原作にはないあるやりとりをするんですが、それが最高で! マンガでも描きたいって思っちゃいました。

――「軍服が似合う役者さんを」というのが、ドラマ化にあたっての要望とのことでしたが、実際に軍服をまとった役者さんをご覧になった感想はいかがですか? 

西香:見学の前にキャストの方々の写真をXで見て、軍服が似合う方を連れてきてくれて良かった!と思っていたんですが、実際に撮影現場で瀧昌役の本田さんにご挨拶できて、大変眼福でした。でも眩しすぎて直視できなくて挙動不審になり、申し訳なかったなぁと。

――瀧昌や深見などの軍人役以外のキャストの方の印象なども、よろしければお教えください。

西香:見学させていただいたときは、ちょうど関谷家(編集部註:主人公・なつ美の実家)の面々が揃うシーンだったんですが、関谷家の方たちは皆さん、私の中のキャラクターのイメージとかなり近かったです。特に森カンナさんが演じるはる江は、「はる江姉さんがおるー!!」ってなりました(笑)。

――撮影の前に脚本は読まれたりされていたんですか?

西香:見てます。とても素敵に書いてくれてるなと思ってます。実写化の際に、もうひとつリクエストしたことがあって、それは「ドラマ単体で面白いのにしてください」っていうもので。そのためだったら、ある程度エピソードをカットしたり、順番を変えたりしてもらって構わないとはお伝えしましたね。

――自分の作品に手を加えられることに抵抗がある作家さんもいらっしゃるかと思います。

西香:そこはやっぱりあちらもプロなので。実際に脚本を読んで、手が加わっているところもあったんですけど、 マンガよりもスムーズに感じるときもあって、さすがだなと。

――ドラマの撮影現場を見学される機会ってなかなかないと思うのですが、いかがでしたか?

西香:どんな感じで撮影をしてるのか、そこはやっぱ楽しみだったんですが、実際に訪れてみると、撮影現場自体の空気は和やかでしたが、緊張感はありました(笑)。リハのあと監督さんから「これでどうでしょうか!?」とわざわざ聞かれたときは、すごく気を遣ってもらっているなぁとは思っちゃいました。文句のつけようはなかったです。

――撮影現場を見学してみて、何か強く印象に残ったことはありましたか?

西香:印象に残っているのは、まずはセットです。なつ美たちの暮らす離れなどがセットで組まれていたのですが、日焼けした畳や傷のついた梁、汚れたガラスなど、まさに今!!ここで暮らしています!!といった空気が流れていて、なつ美たちの生活を覗き見たような感覚になりました。

――昭和の暮らし、建物などは、先生も苦労して描かれているということでしたので、それが目の前に現れるというのは、感動もひとしおですね。

西香:見学に行く前から、セットを見るのがずっと楽しみだったんです。控えめに言っても、感動してめちゃくちゃはしゃぎました。マンガの参考にする気満々です(笑)。原作にはない冷蔵庫やラジオや竈もセットにあって、ドラマの中でどう使われていくのか楽しみです。

――ドラマを視聴される方に「ここはぜひ、観てもらいたい!」という注目ポイントはありますか?

西香:ストーリーや役者さんの演技は当然として、あとはやはり衣装とセットですね……!! セットの素晴らしさは先ほどお話ししたとおりですが、衣装も軍服はもちろん、着物も一点物が多数あるとの話を聞いたので、とても楽しみです。

自分で描いているのに、ついていけないキャラクター

――連載は50回を超えて、単行本最新8巻も5月14日に発売されます。ここまで描かれてきたエピソードの中で、読者からの反響の大きかった回などがあれば。

西香:反響が大きいのは、やっぱり深見さんと芙美子さんの2人が出てくる回ですね。何を描いても反応がいい感じがするんで。嬉しいんだけど、あの2人を描くの難しいんで、大変と思うこともあります(笑)。

――どういったところが、難しいと感じられますか?

西香:深見さんと芙美子さんは、やってることがすごく高度で、自分で描いてるのに、若干ついていけないときもあるんです(笑)。でも難しい分、描き終わった後はやっぱり満足しますけどね。あの2人の話は。

――どの話も反響が大きかったということですが、これは特にというエピソードがあれば。

西香:やっぱあれかな、深見さんたちの結納の話かな。

『波うららかに、めおと日和』担当編集者・福島千尋(以下、福島):主役じゃないキャラに、こんなに反響がもらえて、すごく嬉しいですね。

西香:私は「コミックDAYS」のコメント欄を見るくらいしかできないのですが、やっぱり反響大きかったですか?

福島:ありましたね。西香さんが都合のいいキャラクターではなくて、作品世界の「人間」をしっかり描いていることで生まれている広がりだと思います。人間関係をしっかり、丁寧に描いていないと、あれだけの反響は得られないので、西香さんのすごいところだなとは思っています。

今がちょうど作品のひとつの区切り

――西香先生自身が印象に残っているエピソードはありますか?

西香:やっぱり今度出る8巻に収録されることになる瀧昌が帰ってくる話かな。なつ美が本音言って、妹のふゆちゃんと泣いて。そして最後に瀧昌が帰ってくる。個人的には結構思い入れがある回ですね。

――連載初期から、なつ美は「軍人さんの妻」を目指して頑張っていて、その姿ももちろん素敵なのですが、こうやって本音を言えるようになったことに胸を打たれました。

西香:ありがとうございます。8巻は、なんだろう……自分の中でもひとつの区切りみたいになっている感じはしますね。

――作中ではだんだんと戦争が近づいてきて、不穏な空気も漂い出しています。区切りとおっしゃるのは、ここから少し作品のテンションなどを変えていく構想があるということでしょうか。

西香:いや、テンションは変えないつもりです。あまり暗くしちゃうと読者を置いていっちゃうんで。ただ、暗くはないんだけれど、だんだんと影が出てくる時代に入ったんだよっていうことをバッと出す巻になっていて、そういう意味では区切りなのかなと思います。

――8巻では瀧昌となつ美の周囲のキャラクターにフォーカスしたエピソードが多かったように思います。先生は、お気に入りのキャラクターはいらっしゃいますか。

西香:瀧昌となつ美以外だと、なつ美の妹のふゆ子ですね。感情が一番動くので、わかりやすい、描きやすいというのもあります。ふゆ子が出てくると、場の空気が結構すぐ変わってくれるので、ワッと賑やかになりますよね。

――先ほど「区切り」とおっしゃっていましたが、ドラマで『波うららかに、めおと日和』を知ったという方が読み始めるには、いいタイミングなのかもしれませんね。

西香:そうですね、ドラマをきっかけに作品に興味を持ってもらえたなら、マンガもぜひ読んでもらいたいですね。

取材・文=籠生堅太(yomina-hare)