すべて麻生太郎の思惑通り…高市早苗、総理大臣就任のウラで「一番大損した」議員の名前とは

麻生氏の読みは「野党は玉木で一本化できない」

第104代内閣総理大臣(以降、首相と表記)に、初の女性、高市早苗氏(64)が就任した。 

首相(首班)指名選挙で高市氏が勝利したのは、高市氏の後見人である麻生太郎副総裁(85)が、立憲民主党、日本維新の会、そして国民民主党の思惑の違いを読み切り、野党3党の分断に成功した結果である。

麻生氏の読みは「野党は玉木で一本化できない」, 損をした政党、得をした政党, 立憲と維新を信用できなかった玉木が目指す「次」, 高市内閣の顔触れが語る麻生氏の思惑, 1ヵ月で実力が問われる高市内閣

写真:gettyimages

高市氏が自民党総裁選挙で当選し、首相に就任するまでの17日間、各党間で繰り広げられた駆け引きを、取材をもとに総括すれば、以下のようになる。

(1)麻生氏は最初から「公明党は連立政権から離脱してもよい」と腹をくくっていた

公明党と連立を組んでいる限り、高市氏が描く「憲法に自衛隊を明記」「防衛3文書の見直し」「外国人への規制強化」といった政策は実現できない。公明党が嫌がる裏金議員の萩生田光一氏(62)を幹事長代行に据えたのも、「出て行っていいよ」のサイン。

麻生氏は、野党3党を分断すれば、「公明党が離れても、首相指名選挙で高市氏は勝てる」と確信しており、政敵である菅義偉元首相(76)も「お手並み拝見」と、高市氏に仲介を依頼されても公明党の引き留めには動かなかった。

(2)麻生氏は、国民民主党が「立憲民主党の誘いに乗ることはない」と考えていた

国民民主党を率いる玉木雄一郎代表(56)は、10月7日に開かれた連合の定期大会で、「ご心配いただかなくても結構」と述べ、自民党との連立を否定したが、麻生氏は、榛葉賀津也幹事長(58)から、立憲民主党とは組まない確証を得ていた。

(3)玉木氏自身は首相就任への意欲満々だが、「野党連立は厳しい」と見切っていた

立憲民主党の安住淳幹事長(63)から、「玉木」と呼び捨てにされ、「安保や原発、1つ2つの政策で『一致できない』と言っているうちは、まだ覚悟がない」などと揶揄されながらも、野党連立に乗らなかったのは、麻生氏への配慮のほかに、左派が多い立憲と連立することへの懸念と、「維新は自民党につく」との疑念が消えなかったから。

(4)維新が連立に傾いたのは、政策の実現に加え、解散総選挙を先送りできるから

小泉進次郎内閣との連立を想定していた吉村洋文代表(50)にとって、高市内閣は想定外。「公明党を除き、自民党と組んだ政党は消滅している」との懸念もありながら、連立に傾いたのは、今なら高く売れる、「副首都構想」等に加え「議員定数削減」を飲ませることができれば、「当面、衆議院の解散総選挙はなくなる」と判断した。

損をした政党、得をした政党

一連の政治闘争で損をしたのは公明党だ。連立を解消された自民党も、たとえば、衆議院選挙の小選挙区では、1選挙区あたり、1万票から2万票程度、公明党からの支援票を失うリスクがあるが、公明党が離れたことで戻ってくる保守層を見込める。

一方の公明党は、今や、衆議院24名、参議院21名の野党となり、全国に権限がおよぶ国土交通相のポストを失うほか、メディア露出も大幅に減ることになる。

麻生氏の読みは「野党は玉木で一本化できない」, 損をした政党、得をした政党, 立憲と維新を信用できなかった玉木が目指す「次」, 高市内閣の顔触れが語る麻生氏の思惑, 1ヵ月で実力が問われる高市内閣

公明党の斉藤哲夫代表(写真:gettyimages)

加えて、次期衆議院選挙で、自民党が公明党候補のいる小選挙区に本気で対立候補を立てれば、これまで広島1区や3区で当選を重ねてきた斉藤鉄夫代表(73)ですら落選の危機に直面しかねない。また、維新の要求に応じ、衆議院で議員定数が削減されれば、比例選出議員が多い公明党は壊滅的な打撃を受けることになる。

公明党とは対照的に得をしたのは維新だ。自民党と連立を組んだ維新は、自民党に飲み込まれるリスクはあるものの、維新の源流は自民党で、馬場信幸元代表(60)は、「第2自民党でも良い」と語っていたほどだ。藤田文武共同代表(44)は、その馬場氏に近い。

直近では、前原誠司氏(63)が共同代表を務めていた今年2月、自民党と高校授業料無償化で合意し、2025年度予算案にも賛成したという実績もある。

この先、大阪を中心にした選挙区調整(2024年10月の衆議院選挙で、維新は大阪の全19小選挙区で自公に勝利)では難航が予想されるものの、維新の政策は実現しやすくなり、選挙区ですみ分けができれば、対立してきた公明党を関西圏から排除できるだろう。

自民党と合意した文書では、たとえば、「企業・団体献金の見直し」について「高市総裁の任期中に結論を得る」、「2年間の飲食料品の消費税減税」に関しては「協議を継続する」などといった曖昧な部分が散見されるが、維新所属の参議院議員は、筆者の問いに、吉村氏や藤田氏の狙いをこう分析する。

「麻生氏と高市氏が、物価高対策を終えたあと年内解散に舵を切れば、維新は衆議院選挙で国民民主党や参政党の議席を下回りかねない。それを回避する策は、自民党と連立して、維新の象徴でもある『身を切る改革』、つまり『議員定数削減』を推し進めるほかない。そうなれば、選挙の時期を先送りでき、時間が稼げる」

立憲と維新を信用できなかった玉木が目指す「次」

自民党との連立で維新に先を越された形の国民民主党だが、玉木氏は10月18日に放送された日本テレビ系「サタデーLIVEニュース ジグザグ」で、今の心境を問われ、フリップに「まだまだこれから」と書いて見せた。

麻生氏の読みは「野党は玉木で一本化できない」, 損をした政党、得をした政党, 立憲と維新を信用できなかった玉木が目指す「次」, 高市内閣の顔触れが語る麻生氏の思惑, 1ヵ月で実力が問われる高市内閣

玉木雄一郎氏(写真:gettyimages)

今回、玉木氏には2つのケースで、悲願の首相就任というチャンスがあった。1つは立憲・維新・国民の3党を軸に、公明党や社民党なども加わって玉木氏を推すケース。もう1つは、麻生氏が「高市氏では首相指名選挙で勝てない」と見て、玉木氏を連立に招き入れ首相に担ぐケースだ。

玉木氏はそのどちらにも与しなかった。それを「決断できない政治家」と批判する人もいるが、玉木氏が目指しているのは、野党に担がれての首相ではなく、自民党と連立する形での首相就任だ。それもできるだけ安定した形で、である。

自民党と維新との急接近は、玉木氏から見ても想定以上だったかもしれないが、勝負を急がず、自維連立政権に部分的に協力し、公約した政策を実現しながら、「まだまだこれから。自民党と維新だけでは立ち行かなくなり、高く売れるときが来る」と考えるのは、上策と言えるのではないだろうか。

その玉木氏は、参議院選挙公示日の直前、筆者が勤務している滋賀県のびわこ成蹊スポーツ大学のゲスト講師に、と声をかけた際、快諾してくれたことがある。小規模な、それもスポーツ系の大学の学生を相手に講義をしたところで、国民民主党には1ミリもプラスにならないのに、である。

選挙前の多忙な中でも、「これからの日本を担う学生さんたちの役に立てば…」と応じてくれるような人物なら、「まだまだこれから」チャンスはあってほしいと思うのである。

高市内閣の顔触れが語る麻生氏の思惑

10月21日に発足した高市内閣で、維新は閣外協力の形をとった。この形は、1997年の第2次橋本龍太郎改造内閣における社民党と新党さきがけ以来である。

高市内閣に閣僚を出せば、より責任感が増すが、最初は、同じ連立でも閣僚を出さない閣外協力にとどめて、「ポスト目当て」との批判をかわし、自民党がどこまで維新との合意(12項目の要求)を履行するか様子を見るというのは良い判断だったかもしれない。

肝心の高市内閣だが、総裁選挙で争った有力者が重要閣僚に起用された。自民党内は麻生氏と鈴木俊一幹事長(72)の麻生派で固め、閣内は、茂木敏充外相(70)や木原稔官房長官(56)ら旧茂木派で抑えて、高市内閣を安定させようとする麻生氏の狙いが透けて見える。注目してほしいのが以下の6ポストだ。

麻生氏の読みは「野党は玉木で一本化できない」, 損をした政党、得をした政党, 立憲と維新を信用できなかった玉木が目指す「次」, 高市内閣の顔触れが語る麻生氏の思惑, 1ヵ月で実力が問われる高市内閣

写真:gettyimages

林芳正総務相(64) 

=維新が唱える「副首都構想」という厄介な問題を担当させたい。

麻生氏の読みは「野党は玉木で一本化できない」, 損をした政党、得をした政党, 立憲と維新を信用できなかった玉木が目指す「次」, 高市内閣の顔触れが語る麻生氏の思惑, 1ヵ月で実力が問われる高市内閣

林芳正総務相(自民党のwebサイトより引用)https://www.jimin.jp/member/100544.html

片山さつき財務相(66)

=旧大蔵官僚。高市氏の「積極財政」を嫌う財務省への布石。

麻生氏の読みは「野党は玉木で一本化できない」, 損をした政党、得をした政党, 立憲と維新を信用できなかった玉木が目指す「次」, 高市内閣の顔触れが語る麻生氏の思惑, 1ヵ月で実力が問われる高市内閣

片山さつき財務相(自民党のwebサイトより引用)https://www.jimin.jp/member/100527.html

金子恭之国土交通相(64) 

=公明党が独占してきた利権ポストが16年ぶりに自民に。

麻生氏の読みは「野党は玉木で一本化できない」, 損をした政党、得をした政党, 立憲と維新を信用できなかった玉木が目指す「次」, 高市内閣の顔触れが語る麻生氏の思惑, 1ヵ月で実力が問われる高市内閣

金子恭之(自民党のwebサイトより引用)https://www.jimin.jp/member/100401.html

小野田紀美経済安保相(42) 

=旧茂木派。高市氏の応援団長で外国人政策も担当。

麻生氏の読みは「野党は玉木で一本化できない」, 損をした政党、得をした政党, 立憲と維新を信用できなかった玉木が目指す「次」, 高市内閣の顔触れが語る麻生氏の思惑, 1ヵ月で実力が問われる高市内閣

小野田紀美経済安保相(自民党のwebサイトより引用)https://www.jimin.jp/member/132675.html

赤沢亮正経済産業相(64) 

=日米関税交渉に尽力。その知見を活かす狙いか。

麻生氏の読みは「野党は玉木で一本化できない」, 損をした政党、得をした政党, 立憲と維新を信用できなかった玉木が目指す「次」, 高市内閣の顔触れが語る麻生氏の思惑, 1ヵ月で実力が問われる高市内閣

赤沢亮正経済産業相(自民党のwebサイトより引用)https://www.jimin.jp/member/100478.html

小泉進次郎防衛相(44)

=麻生氏の「育ててやろう」という思いから重要閣僚に起用。

麻生氏の読みは「野党は玉木で一本化できない」, 損をした政党、得をした政党, 立憲と維新を信用できなかった玉木が目指す「次」, 高市内閣の顔触れが語る麻生氏の思惑, 1ヵ月で実力が問われる高市内閣

小泉進次郎防衛相(自民党のwebサイトより引用)https://www.jimin.jp/member/100445.html

他に、与野党に人脈が豊富な維新の遠藤敬氏(57)を首相補佐官に起用して吉村氏とのコミュニケーションを図り、筆頭の首相秘書官に、前経産省事務次官の飯田祐二氏(62)を置いて、安倍政権時代と同様、財務省支配を排除したところは評価していい。

1ヵ月で実力が問われる高市内閣

こうしてようやく船出した高市内閣には、アメリカで言われるような「ハネムーン期間」(100日程度は過度な批判を避け様子を見る)などない。

12月17日までの臨時国会で、2ヵ月弱の間に、物価高対策を柱とする補正予算の編成と成立、それと並行して、維新が求める「議員定数削減」でも結論を出さなくてはいけない。

年内にガソリンと軽油の価格が下がらなければ、有権者からの期待感は失せ、議員を減らす公職選挙法の改正が進まなければ、維新が、内心では「通常国会でもいい」と思っていながら、猛然と反発するに相違ない。

外交も、10月だけで、マレーシアでのASEAN会議、トランプ米大統領の来日、韓国でのAPEC首脳会談と、いきなり応用編が待っている。11月23日からは南アフリカでのG20首脳会議も控えている。

上記日程のうち、日米首脳会談は最重要だが、それだけがヤマ場ではない。一連の外交日程では韓国や中国の首脳とも会談がセットされるだろうし、ガザ統治、ウクライナ和平で高市氏の立ち位置も問われる。

初の女性宰相が率いる内閣が、各メディアが占うとおり短命で終わるか、思いがけず長期政権になるかは、この1ヵ月にかかっている。

麻生氏の読みは「野党は玉木で一本化できない」, 損をした政党、得をした政党, 立憲と維新を信用できなかった玉木が目指す「次」, 高市内閣の顔触れが語る麻生氏の思惑, 1ヵ月で実力が問われる高市内閣

清水克彦著『その言語化は一流、二流、それとも三流?頭のいい“この一言”』