エコカー神話崩壊? 10年超HVも課税、「EV優遇」の矛盾が浮き彫りに――今後どうなる?
自動車税制、環境性能と公平性の調整
総務省は、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)の自動車税(種別割)について、車両重量に応じた課税案を示している。2025年11月に取りまとめる報告書に各種意見を反映し、税制改正大綱に組み込むことを目指す。
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現行制度では、自動車税(種別割)の課税額は排気量に応じて
「年2.5万~11万円」
と設定されているが、EVやFCVは排気量がないため最低税額の2.5万円にとどまる。総務省は、大型EVやファミリー向け高額EVの負担が軽く、道路整備や維持費の公平性に課題があると指摘する。また、重量に比例した負担が不足していることは、道路への影響を考慮すると問題が大きい。
現行制度は、排気量に基づく自動車税・軽自動車税と、車両重量に基づく自動車重量税の二本立てで構成される。一方、経済産業省や自動車業界は、パワートレインにかかわらず保有時課税を重量ベースに一本化し、環境性能に応じて増減させる新たな枠組みを提案している。これにより、課税体系の簡素化とユーザー負担の適正化を図るとともに、EVやハイブリッド車(HV)の市場需要を支える狙いがある。
さらに総務省は、新車登録から一定年数が経過した車両に適用される「グリーン化特例」について、これまで重課対象外とされてきたHVも増税対象に含める方向で調整している。初期HVと現行エンジン車の燃費差が縮小していることから、発売から10年以上経過した車両が優遇を受け続けることには矛盾があるとの指摘もある。
取得・保有・走行の各段階で9種類の税目が混在し、国税と地方税が入り組む現状では、制度全体の理解が容易ではない。年末の税制改正大綱に向けて、各省庁や自動車業界間での議論は今後一層本格化する見通しだ。
筆者の意見

自動車税納税通知書2通(画像:写真AC)
重量を基準にした自動車税の課税は、道路維持費の公平な負担という観点から妥当である。現状では、重量の大きなEVでも税額が最低額に固定され、道路負荷に見合った負担が十分に確保されていない。この点は是正されるべきである。また、ファミリー向けの高額EVでも軽自動車並みの税負担となる現状は、公平性の面で問題が大きい。総務省の案は、道路整備の維持という観点から合理性があるといえる。
一方、EVシフトが徐々に進むなかで、現行の税制優遇が一部の高額EV購入を助長している側面も否めない。しかし、排気量に応じた課税は時代に合わなくなりつつあり、車両重量や環境性能といった客観的な指標に基づく課税に切り替えることで、透明性が高まり、ユーザーの納得感も得やすくなる。
低年式HVへの重課については慎重な対応が必要だ。技術が成熟したHVに過度な課税を加えることは、燃費改善や普及促進の政策目標と矛盾し、エコカー普及の阻害につながる可能性がある。長期間にわたって優遇を受けてきたHVに対しては、段階的かつ調整を加えながら対応することが望ましい。
また、自動車税制は取得・保有・走行の各段階で複数の税目が絡み合っており、ユーザーが全体像を把握するのは容易ではない。この複雑さは制度の歴史に起因する。自動車税は1950(昭和25)年にぜいたく税として導入され、当時は一部の富裕層向けであった。しかし現在では、自動車は生活インフラとして広く利用されている。制度全体の抜本的な見直しが行われなかったことが、現状の複雑さを生んでいる。今後は、
・EVやFCVの増加
・HV市場の成熟
・車両価格の多様化
を踏まえ、税体系の一体化と再設計が求められる。特に、保有時課税である自動車税や重量税の簡素化・透明化は、ユーザー理解の向上につながり、市場での受容性も高める効果が期待される。税制をエコカー優遇から
「利用実態に応じた負担」
へ移行させるためには、制度そのものの整理と調整が不可欠である。
筆者への反対意見

乗用車における自動車税の年税額(画像:新潟県)
ただし、筆者(三國朋樹、モータージャーナリスト)の意見には次のような反論も考えられる。
まず、重量課税が道路維持費の公平な負担を目的とする点は理解できるものの、実際には高額EVや大型HV、スポーツタイプ多目的車(SUV)など、車両重量が大きくても購入層の経済力が高い車種に対しては、制度上の負担が依然として軽く済む場合がある。このため、「公平性の確保」という理屈自体が制度運用上では必ずしも成立していない可能性がある。
さらに、低年式HVへの重課は、環境性能の差が縮小しているとはいえ、長期にわたる優遇措置の是正として妥当性を主張する一方で、ユーザーの反発や購入行動への影響も無視できない。段階的調整や基準の明確化がなければ、増税の理論的正当性だけでは納得感が得られず、政策効果が十分に発揮されないおそれがある。
また、EVやHVの購入・保有には地域差や所得差が存在する。重量課税や重課の一律適用は、全国的なEVシフトのバランスを崩し、自治体間で税収格差や市場の偏りを生じさせる可能性がある。中古車市場やリセールバリュー(再販価値)への影響も無視できず、制度が目指す公平性と、実際の市場行動との間に乖離が生まれるリスクがある。
さらに、現行の自動車税制は取得・保有・走行の各段階で複数の税目が混在しており、透明性や理解の容易さは限定的だ。重量課税や重課を導入しても、従来の種別割や重量税との重複によって二重課税の印象を与える場合がある。理論上の納得感と現実の運用が乖離することで、制度全体の信頼性が損なわれかねない。
これらの点から、重量課税や低年式HVへの重課は、単純な増税だけで解決できる問題ではない。政策目的と市場の現実、消費者行動を総合的に考慮し、段階的な調整や負担緩和策、明確な基準の提示といった実務上の配慮を伴わなければ、制度改革は公平性を高めつつ、市場の成長を阻害しないバランスを確保できない。
道路負荷と市場拡大の両立

自動車(画像:Pexels)
総務省が示すEVやFCVの重量課税案は、道路に与える負荷に応じた負担という観点から合理的だ。現状では、重量の大きなEVでも最低税額に固定されており、道路維持費の公平な分担が十分に確保されていない。この点の是正は必要である。
一方で、高額EVや低年式HVへの課税は、市場の普及促進とのバランスを慎重に見極める必要がある。過度な負担増は消費者の購入意欲を削ぎ、EVシフト全体の進展に影響する可能性がある。特に家庭向け大型EVやSUVを検討する層にとっては、心理的な障壁となり得る。
車両重量を基準とした課税を基本とすることは、道路維持費への公平な負担を確保する上で重要だ。しかし、その運用にあたっては、段階的な課税や優遇措置の調整を行い、過度な市場抑制を避ける配慮が不可欠である。技術が成熟したHVへの重課も、燃費改善や普及促進の政策目標との整合性を保ちながら進める必要がある。
現行の自動車税制は取得・保有・走行の各段階で複数の税目が混在し、国税と地方税が入り組む複雑な構造を持つ。このため、重量や環境性能、車両価格といった要素を組み合わせ、わかりやすく透明な体系に統合することが求められる。単純に「優遇か課税か」の二択で判断するのではなく、道路負担や環境配慮、社会全体の便益と負担の分配を考慮した設計が不可欠である。
さらに、EVやFCVの普及が進む中で、課税基準や優遇措置を状況に応じて見直せる柔軟性も必要だ。制度の調整可能性は、政策目標の達成と市場の受容性を両立させる上で重要な要素となる。総務省の重量課税案は、道路負担の公平性と市場の普及促進という双方の課題を調整する試みであり、単純な増税ではなく、段階的かつ柔軟な運用を通じて実効性のある制度設計を進めることが今後の焦点となるだろう。