「税金491億円」投入も大失敗? 大宮駅前の再開発、大規模施設でも“雑居ビル化”の辛らつ現実

大宮駅周辺の人流と商業集積

 東北新幹線と上越新幹線の分岐点にある大宮駅は、日本屈指の乗降人数を誇るターミナル駅だ。駅周辺は埼玉県でも有数の繁華街・歓楽街で、そごう、ルミネ、高島屋といった大型商業施設が立ち並ぶ。

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 夜になると多くの飲食店も営業し、賑わいを見せる。氷川神社や鉄道博物館への主要アクセス駅でもあり、Jリーグシーズンには浦和レッズや大宮アルディージャのサポーターが訪れる。通勤・通学で利用する人も多く、昼夜や季節を問わず駅周辺は人の流れが絶えない。

 そんな大宮駅の東側に建設されたのが

「大宮門街」

だ。総工費は658億円にのぼり、そのうち「491億円」は税金で賄われた。

・行政施設

・オフィス

・商業エリア

からなる複合施設で、開業当初は地域再開発の期待の星として注目を集めた。しかし現在、この施設では空きテナントも目立つ。専門のYouTuberが紹介することもあり、市議会では市長の責任を問う声も上がるなど、評判は決して芳しくない。

 多くの人が集まる大都市の繁華街に立地する再開発施設が、なぜこうした状況に陥ったのか。その背景をこの記事で簡単に解説する。

658億円再開発の経緯

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大宮門街(画像:宮田直太郎)

 まずは大宮門街が誕生するきっかけとなった再開発の経緯を整理する。大宮は鉄道開業以前から、武蔵一宮氷川神社の門前町や中山道の宿場町として栄えてきた。鉄道開業後は、東北・上越・北陸方面への列車が分岐する鉄道の街として急速に都市化した。

 しかし駅前は多くの地権者が入り組む場所となり、区画整理や交通整備は遅れた。その結果、建て替えが難しい雑居ビルが並ぶ街となり、建物の老朽化や防災面の課題を抱える地域になった。これは大宮市、さらに合併後のさいたま市にとって大きな課題となった。複数の再開発計画が策定されるなか、特に注目を集めたのが、大宮の象徴だった大宮中央デパート(1966年開業)の跡地を整備する大宮門街の計画である。

 2009(平成21)年3月、大門町2丁目中地区市街地再開発準備組合が設立された。2012年に市街地再開発事業の計画が策定され、2014年には大宮駅大門町2丁目中地区市街地再開発組合が発足する。2017年7月の大宮中央デパート営業休止後、建物解体を含む本格的な事業が始まった。建設は2018年にスタートし、2022年に竣工・開業した。

 大宮門街は1~6階が商業施設、4~9階に市民会館「RaiBoC Hall(レイボックホール)」、10~18階がオフィスとなる。また免震構造を持ち、72時間対応の非常用発電機も整備され、防災機能も強化された。商業、行政、防災など複数の機能を備え、長年抱えた大宮駅東口周辺の課題解決が期待された。

 しかし開業から3年足らずで、さまざまな問題が浮上している。高層オフィスは「日高屋」運営のハイデイ日高本社や全国生活協同組合連合会本部などが入居し、入居率は100%で問題はない。RaiBoC Hallもイベント時には賑わう。しかし1~6階の商業フロアは評判が悪く、街づくり系のYouTuberなどで批判が拡散されている。筆者(宮田直太郎、フリーライター)も10月の連休中に訪れたが、目の当たりにしたのは、問題を抱えすぎる構造であった。

圧迫感の強い商業空間

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大宮門街(画像:宮田直太郎)

 筆者は事前に調査したが、入り口からしてわかりにくかった。ウェブサイトや館内のフロアマップはあるものの、1階のマップを見ると外に通じる入り口が複数ある。さらに、どの入り口が大宮駅に近いのかは全く表記されていない。スマホからアクセスしても、どこから入るべきかまったくわからない状況だ。

 最も駅に近い入り口は、駅前アーケードの繁華街「すずらん通り」を抜けた先にある。フロアマップでいうと、モスバーガーとエコリングの間にある入り口だ。筆者はここをメインエントランスだろうと考えた。しかし入り口は狭く、一見すると電車の高架下の通路のように見える。二階以上に窓がないため圧迫感も強く、ショッピングモールがあるとは思えない。秋葉原駅の電気街口からヨドバシカメラ秋葉原店に向かう通路に近い印象だ。

 メインエントランスは県道214号線沿いに設けられている。駅前側から見える位置に設置されなかった理由は不明だ。吹き抜けは小規模で圧迫感があり、イベント用のスペースも中途半端な印象を受ける。取材日の9日前、10月4日に行われたイベントの名残があったが、すでに終了していた。

 すずらん通り側から入る通路は非常に狭い。メインのWEST棟、EAST棟とは反対側のテナントは、オフィス直通のエレベーターの存在もあり、買い取り屋や不動産店など小規模でも問題のない店舗しか入居していない。空きテナントもふたつあり、商業施設の1階とは思えない状況だ。

利用客との乖離したテナント配置

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大宮門街(画像:宮田直太郎)

 商業施設はWEST棟とEAST棟のふたつの建物にわかれ、各階は連絡通路でつながっている。しかし通路からそれぞれの建物に入る1階の入り口は自動ドアではなく、ドアノブを回して開けるタイプだ。オフィスの裏口や非常口のように見え、総工費658億円のビルとは思えない。なぜ来訪者に手間をかけさせる設計になっているのか疑問が残る。

 テナント構成は、WEST棟・EAST棟とも人気飲食店が中心だ。「おかげ庵」や麻辣湯の人気店「七宝麻辣湯」、100円ショップの「セリア」などが入居しており、利用客も多い。なお「セリア」や「七宝麻辣湯」が入居したエリアにはかつて「ザ・ガーデン自由が丘」があったが、入居からわずか2年余りで撤退している。

 1階の郵便局やみずほ銀行は、建物の外に出なければ入れない構造になっており、周囲のテナントとの一体感はほとんどない。メインエントランスからエスカレーターで2階に上がると、携帯ショップや着物レンタル店などが並ぶ。他の商業施設ならもっと高い階にあるショップだ。カフェを利用する人はそれなりにいるが、大宮駅東口周辺の繁華街には到底及ばない。

 3階から4階は、商業施設とは思えない構成になっている。医療系のテナントが中心で、立地が悪くても訪れる必要のある店しか入っていない。筆者が訪問したのは3連休の中日の日曜日だったが、ほとんどのクリニックは閉まっており、通行人もごくわずかだった。地方の商店街のシャッター街のような光景で、

「これが大宮の市街地なのか」

と疑問を抱かざるを得なかった。

 さらにWEST棟4階はRaiBoC Hallで、商業施設ではない。EAST棟5~6階には高単価な飲食店、例えば叙々苑などが入居している。WEST棟4階のRaiBoC Hallを利用する人が気軽に立ち寄れる店はなく、3~4階の医療系テナントと高単価飲食店との配置も不自然だ。

公共資金投入の妥当性

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大宮門街(画像:宮田直太郎)

 施設全体を見た印象として、ただテナントを埋めただけという印象が強い。どの階に何があるのかは調べなければわからない構造だ。実際、医療系テナントが多い3~4階には、他の階にもあるような不動産屋や買い取り屋が混在し、歯科医院は1階に入っているなど、フロアごとに特化した構成になっていない。どの層をターゲットに集客しているのかがわかりにくい。

 このテナント構成に対する批判は強く、市政側からも疑問が上がっている。さいたま市議会議員の吉田一郎氏は2022年7月18日の街頭演説で、

「税金を491億円投入しながらも、そこらの雑居ビルに入っているような雑居ビルと変わらない」

と指摘している。またRaiBoC Hallについては

「大道具搬入用エレベーターが小さすぎて、搬入できない道具もある。旧市民会館で行っていたようなテレビ番組の大掛かりな公開収録などもできないのではないか」

と問題点を挙げた。この演説の様子は吉田氏のYouTubeチャンネルで確認できる。

 さらに1階の複雑な構造と狭い入り口は、防災面でも懸念を抱かせる。万が一、広いメインエントランス近くで出火した場合、狭い出入り口に人が集中し、群集事故や逃げ遅れによる一酸化炭素中毒など、最悪の事態が起こりかねない。

 素人の杞憂であってほしいが、防災機能の向上が再開発の背景にあるだけに、導線確保が不十分な建物になったのは問題だ。過去の大規模火災は、構造が複雑で逃げ遅れやすい建物で発生する傾向があり、なおさら気になるポイントである。

テナント交渉の困難

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大宮門街(画像:宮田直太郎)

 では、なぜ大宮門街はこれほど問題の多い施設になってしまったのか。それは

「あまりにも複雑な管理・運営体制」

にあると考えられる。再開発ビルの管理組合を構成する会社は18社にも上る。商業施設のふたつの棟も運営会社が異なり、

・東側のEAST棟:大栄不動産

・西側のWEST棟:中央デパート

が運営している。

 これだけ管理会社が多いと、テナント側は交渉が難しい。管理者や運営者の意見が食い違い、各フロアのコンセプト策定やイベント実施にも時間がかかる。ウェブサイトの改修なども同様で、各管理者・運営者の承認を得る必要があり、調整に手間と時間がかかる。

 管理者が異なることで、関係する不動産会社も異なる。実際、1階のふたつの空きテナントの連絡先を確認すると、それぞれ別の不動産会社が担当していた。同じ建物なのに複数の不動産会社に連絡しなければならないのは、入居希望者にとって非常に不便である。このような状況では、テナント集めが苦しくなるのも当然だろう。

 この開発方式は以前紹介した十条のジェイドモールでも見られた。複数主体による組合開発が抱える問題を如実に示す事例である。

 さらに1階の空きテナントの賃料は7坪で25万4100円/月~(カインドエステート社調べ)である。1坪あたりに換算すると約3万6285円で、大宮駅東口の飲食店相場2万3546円(飲食店ドットコム、2024年)に比べると割高だ(154%)。

 新しい建物とはいえ、制約条件が多く使い勝手の制限もあることを考えると、多くの事業者が割高と判断するのも無理はない。

話題性と競争圧力

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大宮門街(画像:宮田直太郎)

 大宮門街の周辺では今後も再開発計画が進む。大宮門街の隣、東口大門町3丁目中地区では、地上21階建の建物の建設が始まった。オフィスや銀行、商業エリアを備えたビルで、大宮門街とほぼ同じ機能を持つ施設となる予定だ。

 さらに大宮駅西口でも複数の再開発ビルが計画されている。なかでも注目されるのが、桜木駐車場用地活用事業「(仮称)桜木PPJ」である。2027年の開業を目指すこの施設には、2025年に引退した寝台特急「カシオペア」の最上級寝台車「カシオペアスイート」用車両・スロネフE26が保存されることが決まっている。

 大宮門街は、このような話題性の高い施設群に対抗できるかが注目される。しかし、これらの再開発も事業者が複数で関わるケースは珍しくない。複数の地権者や事業者が存在し、運営がうまくいかないパターンは過去にも見られる。前述のジェイドモール十条や羽田空港再開発地区の羽田イノベーションシティ(HICity)がその例だ。これらの失敗経験を活かし、今後の再開発が順調に進むことを期待したい。

失敗に直面する象徴施設

 大宮門街は、大宮を代表する建物として期待されただけに、現在の状況は

「失敗」

といわざるを得ない。特に防災を大きな目的としていたにも関わらず、1階の複雑な導線は評価に値しない。

 ただ、大宮門街は大宮銀座通り周辺の歓楽街沿いに位置しており、本来の店舗需要は大きい。集客を増やすには、まず比較的手をつけやすい部分から改善すべきだ。ウェブサイトのフロアマップに「大宮駅方面」などの方角を明示する。WEST・EAST棟の1階入り口は通常の商業施設と同じ自動ドアに変更する――こうした対応を一刻も早く実施することが求められる。