新幹線がバッテリーで自走…そのスピードは? JR東海・浜松工場の公開ツアーで見た「東海道新幹線の裏側」
JR東海の浜松工場(浜松市)の公開ツアーを取材した。東海道新幹線の各車両の「全般検査」を一手に引き受ける専門施設。東京などから新幹線の専用列車で直接工場に入り、ふだんなかなか見られない車両の台車や「保守用車」などを見学するツアーで、参加者が目にしたものは?(嶋田昭浩)
◆わずか2両編成 短~い新幹線が目の前に

JR東海・浜松工場で入換動車「L-12」(左端のオレンジ色の車体)に推進・牽引される2両編成の東海道新幹線「N700A」車両=浜松市で(嶋田昭浩撮影)
今回の目玉の一つは「日本一短い?新幹線」。「N700A」車両の先頭車同士を連結した2両編成の列車を、「入換動車(いれかえどうしゃ)」と呼ばれる牽引(けんいん)車両「L-12」が推進・牽引して時速5キロで走ると、集まった多くのファンがカメラやスマートフォンを向ける。さいたま市の小学3年生、市川誠陽(せいよう)さん(9歳)は「あんなに短い新幹線は見たことがなく、驚いた」と話す。
◆カニ歩き? 新幹線車両が「横移動」する光景

JR東海・浜松工場で大勢の鉄道ファンに囲まれながら東海道新幹線車両を真横へ移動させる「トラバーサ」=浜松市で(嶋田昭浩撮影)
ツアー参加者からは「トラバーサ」という大型の装置も人気があった。
浜松工場が担う全般検査は、車両の主要部品をできる限り取り外し、徹底して調べて修繕を行う法定の定期検査。東海道新幹線では40カ月ごと(ただし走行距離が160万キロを超えないうち)に実施される。
工場へ検査入場した車両は、1両ずつに分割されて車体を解体する作業場へ運ばれる。その際、車両を1両ずつ乗せて真横へ移動させるのがトラバーサ。重さ40トンある車両を時速3キロでスムーズに動かすさまは圧巻で、実は最大62トンまで運べるとの説明があった。
◆真夜中に活躍する「保守用車」たちも
営業車両が走らない真夜中に活躍する保守用車を、間近に観察できるのも貴重な機会だった。トラバーサの横では、電柱の取り換え工事などに使うクレーンを装備した「クレーンワゴン(CW)」や、高い所の設備の点検で作業員を運び上げる「高所作業車(HW)」が紹介された。
新幹線の始発列車が走る前に、ライトで照らしながら線路の安全を確認する「軌道確認車R-600型」の「MO-5601」も興味深い。担当者によると、本来の車両ではないもののディーゼルエンジンを使って線路上を時速80キロ以上で走る性能を持つ。社として最高速度を80キロに制限しており、平均40キロ程度で確認作業をするという。

JR東海・浜松工場で展示中の軌道確認車「R-600型」の「MO-5601」=浜松市で(嶋田昭浩撮影)
車体の少し外側へ「検知棒」を張り出して走り、列車の走行を妨げる支障物がないか調べている。
◆停電時の「バッテリー自走」初公開 さすがに空調は止まった
実は、一般向けの公開が今回初めてというメニューは、工場へ入る手前で用意されていた。それは、ツアー専用列車に使われた「N700S」車両の「バッテリー自走システム」。停電によりトンネル内や橋梁(きょうりょう)上などで停車したときに、列車に搭載されたバッテリーの電力で安全な場所まで走行する仕組みだ。
ツアーの列車が新幹線の本線から浜松工場へ向かう回送線に乗り入れ、途中でいったん停止した後、自走に切り替わると、車内は薄暗い予備灯がつく。最高時速5キロで、「新幹線唯一の踏切」などを通り過ぎていくが、車内アナウンスの説明を聞いていなければ自走かどうか判然としないほど、走りはスムーズだ。「静かで滑らかですね」と神奈川県海老名市の女性が感想を漏らした。
ただ、自走中は空調が止まる。取材した10月25日は浜松の最高気温が20.6度だったため、特に問題を感じなかったが、猛暑日などは熱中症対策も気がかりだろう。
2024年11月の東海道新幹線総合事故対応訓練で、トラブルなどにより停電が起きた場合に備え、送電が止まって動けなくなった列車の脇に、異常のない列車を横づけし、幅広の渡り板を使って乗客を乗り移らせる訓練を行った様子が思い出された。

JR東海・浜松工場の公開ツアーでは東海道新幹線車両の台車を間近で見学できた=浜松市で(嶋田昭浩撮影)
夏に車内の冷房が止まったまま復旧に時間がかかると、乗客が体調を崩しかねず、まずは冷房の効いた列車へ移動してもらう狙いだった。災害などで地域全体が停電するケースには対応が難しかろうが、さまざまな局面で利用客本意の工夫が求められている。
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