ラーメン一杯550円「健康中華」チェーンの正体

埼玉県を中心に約100店舗を展開する「ぎょうざの満洲」。「埼玉に行ったら必ず満洲に行く」と、熱心なファンが多い(筆者撮影)
埼玉の駅前を歩くと、かなりの割合で目に入る“ある赤い看板”の飲食チェーンがある。それは牛丼でもラーメンでもない――正解は、中華料理チェーン「ぎょうざの満洲」の看板だ。
【画像を見る】550円でこのクオリティーは凄すぎる……!ピュアレアポークのチャーシューに三陸産わかめのトッピングも最高なラーメンはこんな感じ
1964年創業で、現在は埼玉県を中心に103店舗を展開する「ぎょうざの満洲」。「餃子の王将」のような全国的な知名度はないものの、埼玉ではしばしばメディアに登場する人気店だ。「餃子と言えば満洲が一番好き」「埼玉に行ったら必ず満洲に行く」と、熱心なファンが多い。
ラーメンが550円で食べられるの?
「ぎょうざの満洲」は駅から近い場所に位置する店舗が多い。2年前に埼玉へ家探しをしに来たときに深く考えず「駅前にあるラーメン屋さんだから」と足を運び、驚いた。看板メニューの1つ、「満洲しょうゆラーメン」が、550円なのだ。こんなに安かったっけ……? しかも、国産食材にこだわっているとメニューにも書かれている。
物価がじわりじわり上がっている昨今、この値段で大丈夫なのか、気になって仕方がない。店舗やメニューの紹介に加えて、価格の秘密も紐解いていく。

駅から徒歩5分の好立地。ショッピング施設「U_PLACE」の1階にある。上階にはホテルも(筆者撮影)
今回訪れたのは観光客にも人気のエリア、川越。駅改札から徒歩数分で着く「ぎょうざの満洲 小江戸館」にやってきた。乗り換えや仕事の合間にさっと寄れることも、出張者におすすめのポイントだろう。
平日の11時。席についてメニューを選んでいると、次々と1人客が入店してくる。小江戸館は2020年にオープンした比較的新しい店舗。店内にはテーブル席やカウンター席が配置され、明るく爽やかな色使いだ。

解放感があり、床の模様や壁のカラーも相まってスタイリッシュな雰囲気も(筆者撮影)
メニューも充実しており、ラーメンだけで10種類以上があり、目移りする。「中華料理店なのに玄米を選べる」「定食も種類が豊富だ」「かぼちゃプリンおいしそう」と迷いながら、今回は「満洲しょうゆラーメンと焼餃子」(900円)、さらに、デザートに北海道産の栗南瓜を使った「かぼちゃプリン」(180円)を注文した。
ラーメンは麺の量を選べて、0.5玉を選んだため、焼餃子とのセットで870円。これで金額は合計1050円と驚きの価格だ。

「レバニラ炒め」「よだれ鶏」といった定食のメニューも豊富で、目移りした。3段目中央にはトッピングがない「素ラーメン」という潔いメニューも(筆者撮影)
素材までこだわった中華料理を驚きの価格で
注文を済ませ、ラーメンを待つ間、厨房からは、中華鍋を振る「カチャカチャ」「ジャッジャッ」と心地良い音が聞こえ、中華料理店らしい香ばしい匂いが鼻をくすぐる。
「お待たせしました!」店員さんから注文の品が運ばれてきた。かぼちゃプリンも一緒にトレーに乗せられており、最高のランチ定食が誕生しているのでは? 胸をときめかせながら、早速ラーメンからいただく。

「満洲しょうゆラーメン」「餃子」「かぼちゃプリン」合計1050円!(筆者撮影)
見た目は定番の中華そば。しかし、一口スープを飲んでみると、醤油ベースのあっさりした味わいだが、鶏のうま味がしっかり感じられる。
スープだけでも飲みたくなる優しい味だ。こってりしたラーメンとは対極にある、毎日でも食べられそうな味わい。

醤油ベースのあっさりスープに、もっちりとした麺(筆者撮影)

あっさりしたスープとツルンとした麺は相性バッチリ(筆者撮影)
麺はもっちりとした食感で、ツルンと喉越しが良い。国産小麦を使用した自家製麺だ。チャーシューは肉の食感がしっかりしており、食べ応え十分。
使用しているのは「ピュアレアポーク」という、自然豊かなフィンランドで育てられた豚肉。抗生物質や成長ホルモンを一切使用していないという。臭みがなく、上品な味わいだ。

豚肉の食感がしっかりしたチャーシュー(筆者撮影)
そして、わかめの歯応えがいい。三陸産の丸採り生わかめを使用しており、店舗ごとに茎付きの状態から割いてカットしているという。部位によって茎部分のコリコリとした食感も楽しく、存在感を放っている。この内容で500円台。今の外食市場では信じられない価格設定である。
毎日でも食べたいこだわりの自家製焼餃子
とはいえ、個性豊かな飲食店がひしめく駅前。ぎょうざの満洲を特別な存在たらしめているのは、餃子のクオリティーの高さにあると思う。
ぎょうざの満洲では、創業から60年以上にわたり餃子を提供し続けている。自社農園「満洲ファーム」でキャベツを栽培し、坂戸市の自社工場で餃子を製造。特に、冷蔵の生餃子は毎朝作りたてを工場から各店舗へ直送されている。餃子への情熱は並々ならぬものがある。

皮がパリパリでもっちり、肉本来の味を楽しめる餃子。小皿にはイメージキャラクターの「ランちゃん」が(筆者撮影)
続いて餃子をいただこう。皮の焼き色に食欲がそそられる。一口頬張ると、皮はパリパリともっちりの両方の食感を楽しめる。タネはあっさりしているのに肉のうま味がしっかり感じられ、「肉汁たっぷり」の餃子とは違った個性を持つ。脂っこさがなく、肉本来の味を楽しむ餃子だ。

醤油と酢にラー油を加えた。好みの割合でタレを作れる(筆者撮影)
食べ応えはあるのに、胃もたれしない。野菜はキャベツ、玉ねぎ、ニラ、生姜、ニンニクが使われているが、ニンニクの香りは控えめ。一番多いのがキャベツで、自社ファームで栽培したキャベツの甘みが餃子の味を支えている。(自社ファーム産キャベツの収穫は春と秋)
この看板メニューが大きく変化したことは、あまり知られていないかもしれない。2018年のこと。豚肉の赤身を3割増やし、その分脂身を大幅に減らした。「毎日食べてもおいしい、健康的な餃子を」というコンセプトで改良されたという。

あっさりとした味わい。何個でも食べられそう(筆者撮影)
ぎょうざの満洲で執行役員を務める、上田明広さんに詳しく聞いた。同社で約20年勤務し、新店舗の立ち上げにも携わってきたベテランだ。
「豚肉の脂身を少なくして、豚肉の味を楽しもうという方向に変わりました。赤身が多くて脂身を少なくした餃子は、素材本来の味を感じられるとお客様からも好評です」と上田さんは振り返る。
売り上げが伸びて原材料比が下がっても、その分を利益に回すのではなく、より良い食材に見直すことが、方針だという。わかめを乾燥から生わかめに変更したのも、チャーシューをピュアレアポークにしたのも、その一環だ。
長く親しまれたものを改良したら、反発の声もありそうなものだ。やはり、当初は一部のお客様から「今までの味と違う」という声もあったものの、結果的に餃子の販売量は増えたとのこと。
ラーメンと餃子を食べ終わると、お待ちかねのかぼちゃプリンへスプーンを入れる。

砂糖と水だけで作っているカラメルが美しい「かぼちゃプリン」。10月いっぱいの季節限定メニュー(筆者撮影)
スプーンですくって口へ運ぶと、プリンというよりケーキに近い濃厚さだ。かぼちゃの甘さを抑え、素材の味を生かした仕上がり。中華料理店のデザートとは思えないクオリティーで、川越工場で手作りしているという。テイクアウトも可能だ。食べ終わって周りを見渡すと、店内は1時間足らずで満席となっていた。

濃厚で、かぼちゃそのものの味わい。素材の味を大事にしている(筆者撮影)
中華料理なのに玄米を選べる理由
ぎょうざの満洲は、実は「健康」に徹底してこだわっている。中華料理の象徴とも言えるラードを炒め物油に使用していたが、2014年頃に植物油に切り替えた。さらに、ラーメンのスープも以前は豚骨や豚足を使用していたが、2020年から鶏ベース(国産丸鶏や鶏ガラ)に野菜や魚介を合わせたスープに変更。商品開発のため「毎日ラーメンを食べていた」先代社長の病気をきっかけに、医師からの指摘で切り替えたのだという。
そして、筆者が特に驚いたのは「玄米」が選べる点。中華料理チェーンで玄米を提供する店は、知る限りほとんどない。筆者も昨年、オンラインダイエットプログラムで玄米を推奨されたが、外食で食べられる場所は少なかった。チェーン店で選べるとは!
導入は約10年前。社長から「健康にこだわって玄米を取り入れたい」と提案があった。現場からは反対意見もあったが、一部店舗でテスト導入したところ好評で、徐々に広がっていったという。

季節メニューには、玄米100%の「秘伝豆玄米チャーハン」(710円)もある(筆者撮影)
使用しているのは「金芽ロウカット玄米」。普通の炊飯器で炊けて消化にも良く、栄養は玄米と同じまま、食べやすさだけを追求した米だ。店舗を見回すと、女性客も多い。
ぎょうざの満洲といえば、店舗に入るとすぐにショーケースがあるのも特徴。冷蔵と冷凍それぞれのお土産を販売しており、こちらも人気が高い。コロナ禍では「おうちごはん」を応援するため「毎日特売日」を実施し、ショーケースでの餃子の販売が大幅に増えたという。

冷蔵と冷凍それぞれのショーケースがあり、お土産のみの購入も可能。生ぎょうざ、冷凍餃子ともに12個入りで370円!特売日は300円(筆者撮影)

オープンキッチンで活気ある調理の雰囲気を近くで感じられる(筆者撮影)
駅直結でアクセス抜群、今後も店舗拡大予定
今回紹介した「ぎょうざの満洲 小江戸館」は川越駅直結で、出張者にとって非常に行きやすい。ほかにも大宮、浦和など主要駅周辺に店舗があり、いずれもアクセスが良い。
今後も各店舗の改装も進めながら、店舗を増やしていく方針だ。また、各店舗の改装も進めており、2025年10月には飯能駅前店がリニューアルオープンしたばかり。国産素材や健康志向へのこだわりといった挑戦を続けていながら、驚きの価格設定を守っている。他社がなかなかしないことに挑むからこそ、成長もし続けているのだろう。
出張のランチタイムに立ち寄って、ラーメンと餃子を味わってほしい。夜はお酒を楽しむ出張客も多いとのことだ。