村元哉中が語る「長い時間をかけて技術も関係性も熟成していったカップルが強くなる」 紀平梨花の転向で盛り上がるアイスダンス界

11月1、2日に行われたフィギュアスケート西日本選手権アイスダンスで、紀平梨花(23、トヨタ自動車)・西山真瑚(23、オリエンタルバイオ)組が3位に入賞し、12月の全日本選手権出場を決めた。紀平は、四大陸選手権の女子シングルで2度優勝するなどした後、右足のケガで約3年間、実戦から遠ざかっていたが、今年9月にアイスダンス転向を発表。ブランクを感じさせない滑りを披露した。高橋大輔さん(39)とペアを組んで活躍した村元哉中さん(32)に、アイスダンスの魅力を聞いた。
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――村元さんは5歳でスケートを始められ、フィギュアのシングル選手として全日本選手権で10位に入るなどの成績を上げていましたが、2014年シーズンにアイスダンスに転向されました。21歳のころです。
日本スケート連盟がアイスダンスのトライアウトを始めていたんです。当時、私は大学生。何度かお声がかかってはいましたが、あまりピンと来なくて。「うーん」みたいな感じたったんですね(笑)。でも、ちょうどその頃は体型も変わってきて、ジャンプが跳べなくなっていたこともあり、気分転換のつもりでちょっとやってみたらすごく楽しくて! 転向してからは、スケートの沼にはまって「あぁ、本当にスケートって楽しいんだな」と思うことが増えました。
■スケートの原点に戻れる
――そこから10年、ずっとアイスダンスに魅了されてきました。「アイスダンスの魅力」はどんなところにあるのでしょう。
なんだろう…。スケートの原点に戻れるというか。フィギュアスケートの基礎を磨いて、アイスダンスという競技に挑めるその過程に魅了されました。そこから、うーん。いっぱいあるなぁ、魅力(笑)。 誰かと一緒に作品を作るというのがとても楽しくて、氷上のドラマじゃないけれど。私は滑ってる時はいつも舞台の上にいる感覚です。アイスダンスの魅力は本当にいっぱいあるんです‼

■大ちゃんは雲の上の存在だった
――現役時代には3人のパートナーと組んでおられます。アイスダンスで結果を出すために、パートナーとの関係性はどのようなものが理想ですか?
たとえば大ちゃん(高橋大輔さん)だったら、膝をしなやかに使う滑りの柔らかさが魅力でした。こういったパートナーの個性や体の使い方、滑りを尊重してそれに合わせて滑ることを心がけていました。互いに相手をリスペクトして、相手を知ろうとする努力がアイスダンスにはとても大事だと思います。パートナーを理解しようとする努力は、自分自身の人間性も高めると思います。そうやって長い時間をかけて技術も関係性も熟成していったカップルが強くなると思っています。
とはいえ、私は大ちゃんと組んだ当初、どうしたらいいかわかりませんでした。五輪メダリストですし、私の中では雲の上の存在ですから。「どうやったら知れるかな?」がスタートでした。壁を一つずつ越えながら、少しずつ距離を縮めていきました。ぶつかり合いもたくさんあり、普通にケンカもありましたが(笑)、それでもやっていけたのはもちろん、心から尊敬する選手であったということと、互いの目標が一緒だったというのが大きいです。加えて、大ちゃんとは感性だったりこだわり方が似ていたのかなとも思います。いいパートナーだったなと思います。
■シングルとアイスダンスは全く違うスポーツ
――実績のある紀平梨花さんがアイスダンスに転向しました。
シングルとアイスダンスは極端にいえば、全く違うスポーツだと考えてもいいぐらい、全然違います。スケートシューズの構造も違うし、アイスダンスのルールはシングルよりたくさんあって定義も細かいんです。さらに毎年のようにルール改定もある。これらを理解する必要があります。

■シングル経験者だからこその強みも
これまで一人で滑っていた空間に、もう一人入ってきて、一緒に同じ空間、ユニゾンで同じリズムで、呼吸とかも全部整えてやっていかなければいけない、本当に難しい技術が必要なんです。リンクでは相手を思いやり考えながら滑らなければなりませんから。いったんシングルで培った技術はゼロにして、ゼロからスケートを習う気持ちでやる感覚です。
でもシングル選手経験者だからこその強みもあるんです。それは「滑りのパワー」ですね。これはシングルの時代のジャンプで足の強さとか、スピードが鍛えられているので、たぶんそういったところがアイスダンスにや有利に働くんです。それを生かしながら、パートナーと呼吸を合わせる。二人とタイミングを合わせないと全然進まないんですよ。合えばすっごいスピードが出ると思います。
■じっくり「熟成」して
――以前、アイスダンスカップルには、長い時間が必要だとおっしゃっていました。
アイスダンスはパートナーと長く一緒に滑れば滑るほど、呼吸もあっていきますし、オフアイスでも一緒に過ごしていくうちに互いを知れますし。二人の間の良いコネクションができていくんです。「熟成」みたいなものですね。紀平さんと西山真瑚さんのカップルも長い時間をかけてじっくり熟成していっていただきたいです。
私はアイスダンスを始めたとき、本来のスケートの魅力に触れることができ、どんどん“スケート沼”にはまっていきました。アイスダンスにはそんな力があるんです。
(構成/AERA編集部・大崎百紀)
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