アメリカとの関税交渉に完敗した日本…トランプ政権の”脅し外交”に逆らえない”弱腰”な日本政府と輸入米がもたらした「飢餓のリスク」

2024年に端を発した「令和の米騒動」。2025年までのわずか1年でコメの価格は6割以上暴騰した。政策対応は刻々と打ち出されているものの、先行きはなお不透明――日本人の主食であるコメを「買えるかどうか」を気にしながら節約を強いられる日々が続いている。

農業は国防そのものだ。世界の供給網が揺らげば、四方を海に囲まれた島国・日本は一気に脆弱になる。国難を乗り切るためにもっとも大切なのが「食料安全保障」なのだ!

コメが買えない、高い、この異常事態をどう乗り切るのか?そして、この未曾有の危機の裏側には何があるのか…。この国の食料問題の「暗部」と闘い続ける東大教授・鈴木宣弘の告発と提言の書『もうコメは食えなくなるのか』より一部抜粋・再編集してお届けする。

『もうコメは食えなくなるのか』連載第11回

『「ミニマム・アクセス米」の開放は日本を破滅に導く…「外国米輸入」が「令和のコメ騒動」の解決にならない理由』より続く。

コメ不足と並行するトランプ関税

 小泉進次郎劇場の中、2025年の日本は政府備蓄米をこれでもかとガンガン市場に放出していった。倉庫がカラになったまま放っておけば、次なる緊急事態のときに対応できなくなってしまう。カラになった倉庫には、再び備蓄米を補充しなければならない。

本来であれば、枯渇した備蓄米のストックは国産米で補充すべきところだ。だが市場は混乱している。「国内にはコメがない。輸入米で補充するしかない」というストーリーがうまいことできあがった。その瞬間、トランプ大統領の関税バトルが始まったのだ。

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「関税を一律25パーセントに引き上げる」と脅しをかけてきたトランプ大統領とのディールをソフト・ランディングさせるためには、アメリカにとっておいしいお土産を提出しなければならない。

「アメリカからの輸入米買い入れを増やします」「アメリカから買い入れたミニマム・アクセス米を、日本の備蓄米として補充します」――このストーリーに文句をつける人はおらず、アメリカの思惑どおりに話が進んだ。

国産米より安くなったカリフォルニア米

長期的に見たとき、輸入米買い入れの拡大によってどのような影響が出るのだろう。海外産のコメが市場にどんどん入ってくれば、そのぶん国内のコメ市場をダブつかせることになる。自国のコメ生産者の販路が脅かされるリスクを、なぜ日本政府はみすみす冒してしまうのだろう。理解に苦しむ。

先ほどから申し上げているとおり、関税が免除されるミニマム・アクセス米の枠は年間77万トンだ。ミニマム・アクセス米の枠を超えたぶんの輸入米には、1キログラム当たり341円の関税がかかる。これほど高い関税をかけられてしまえば、通常は商売が成立しない。事実上、輸出入を禁止するに等しい関税の数字だ。

これまでは「1キログラム341円もの税金を払ってまで、日本にアメリカ産のコメがジャブジャブ入ってくるわけは絶対ない」と思われていた。ところが今、カリフォルニア産のコメが日本で売られるようになり、なおかつ5キログラム3500円を切る値段で売られている。国内のブランド米よりも安いため、カリフォルニア産米を好んで買う消費者も多い。

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国内のコメの需給均衡が安定し、ブランド米が5キログラム3500円程度で売られるようになれば、カリフォルニア産米の輸入は止まる。同じ値段で国産米を買えるのであれば、消費者はわざわざカリフォルニア産米を買わなくなり、ペイできなくなるからだ。

コメ価格高騰を根本的に解決しない限り、これから輸入米の流通はさらに増えるだろう。アメリカは日本の市場を狙っている。

弱腰な日本外交

第1次トランプ政権の時代に、トランプ大統領は「日本からの輸入自動車に最大25パーセントの追加関税をかける」と迫った。そんな関税をかけられた日には、トヨタ自動車をはじめとする日本の自動車産業は干上がってしまう。

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日本は「なんとか勘弁してほしい」と頭を下げ、アメリカが輸出する牛肉や豚肉の関税を引き下げて市場開放に応じた。

あのときEU(ヨーロッパ連合)やカナダは「WTO(世界貿易機関)の協定違反行為に対しては断固闘う」という姿勢を示したものの、日本は「何でもしますから、ウチだけは許してください」と頭を下げた。

関税戦争に逆上した中国は、あのときアメリカからトウモロコシを買い入れる約束を反故にしたものだ。そのせいで宙に浮いた大量の余剰トウモロコシを、日本が尻拭いのように買わされる羽目になった。まさしく屈辱的な「盗人に追い銭」外交だ。

自動車産業を守るために、農産物の輸入枠拡大のカードをアメリカに次々と譲っていったら何が起きるだろう。最後に残った譲れないカードはコメと乳製品だった。これを切ってしまったら、日本のコメ作りと酪農の崩壊が加速する。そうなれば、日本が直面する飢餓のリスクがますます高まる。国民の生命を守る食について、安易に輸入に頼る落とし穴にハマりこんではならない。

『輸入米は発がん性の高い“カビ毒”付き!?…日本だけが“ウルグアイ・ラウンド”に違反してアメリカに媚びへつらう異常な外交交渉の実態』へ続く。

【もうコメは食えなくなるのか】

コメが買えない、高い、この異常事態をどう乗り切るのか?

この国の食糧問題の「暗部」と闘い続ける東大教授の告発と提言!

アメリカの陰謀「胃袋からの属国化」――地域産業、地域農業を潰し、日米のお友達企業の利益ばかりを追求する「悪魔の農政改革」の深層!

「『日本人がコメが食えない時代が訪れる』と悲観ばかりしていられない。自分が今いる場所で、できることをすぐに始める。そこから『食』の未来への希望がきっと見出せるはずだ」

(本文より)

農業こそは国防。「食料は国防だ」と言うと、「戦争に備えてロジスティックス(兵站)を確保しなければならない」という勇ましい議論だと勘違いされがちだが、そうではない。世界各国が食料危機に陥れば、日本人が食べる食べ物が足りなくなったときに融通してもらえなくなる。そうなれば、四囲を海に包囲された島国・日本はおしまいとなる。

国難を乗り切るためにもっとも大切なのが「食料安全保障」なのだ!

(目次)

はじめに 日本を襲った四つの衝撃

序 章 「令和のコメ騒動」序曲

第一章 減反政策という桎梏

第二章 ミニマム・アクセス米とトランプ大統領

第三章 政治家が示すべき稲作ビジョン

第四章 農業は国防

第五章 日本農業 希望の灯

おわりに