競馬記者が見た『ザ・ロイヤルファミリー』(8)サンデーレーシングによく似た勝負服で圧勝したソーパーフェクトで思い出した「幻の馬」トキノミノル

『ザ・ロイヤルファミリー』第8話の1シーン©TBSスパークル/TBS
俳優、妻夫木聡が主演を務めるTBS系日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』(日曜後9・0)が放送中だ。競馬の世界を舞台に夢を追い続けた熱き人間と競走馬の20年にわたる壮大なストーリー。山本周五郎賞とJRA賞馬事文化賞をダブル受賞した、作家・早見和真氏による同名小説が原作のドラマをキャリア30年超の競馬記者が毎週の放送に合わせてレビューする。
※以下、『ザ・ロイヤルファミリー』のネタバレが含まれます。
◇
雨降って地固まる。第8話を簡潔に言い表せばこうだろう。迷ったら馬のことだけ、自分の信じたことを優先しろ-。亡き父、山王耕造(佐藤浩市)の〝遺言〟をかたくなに守ったことでロイヤルファミリー陣営の中で孤立した中条耕一(目黒蓮)が、チームを信じるまでが描かれた。
原作で耕一は3頭のロイヤルホープ産駒を「相続馬限定馬主」として耕造から引き継いだが、ドラマではロイヤルファミリーのみを継承する。原作に登場する残る2頭の所有馬(ロイヤルリブラン、ロイヤルレイン)のうち、前者でつづられたエピソードをファミリーのエピソードとして取り入れた。これによってチームに生じた溝とそこからの再建が巧みに描かれ、よりドラマチックとなった。
例えば、原作ではロイヤルファミリーの主戦騎手は最初から野崎翔平だった。ロイヤルリブランでの騎手交代劇をファミリーに置き換えたことで、翔平(市原匠悟)とファミリーの手綱を取ってきた佐木隆二郎(高杉真宙)の葛藤がより鮮明となった。警察沙汰は原作にもあるが、早めにこのエピソードを使ったことで、翔平を含めたロイヤルファミリーのチームは、2年後の有馬記念制覇に向けて早めに結束することになった。

『ザ・ロイヤルファミリー』第8話の1シーン©TBSスパークル/TBS
競馬ファンや筆者のような競馬記者が「待ってました」と喜んだのは、新たに登場した若き馬主、椎名展之(中川大志)の勝負服。サンデーレーシングによく似たデザインだったからだ。展之の父、椎名善弘(沢村一樹)のそれは社台レースホースに酷似しているだけに、サンデーレーシングに似た勝負服も出てくるはずと想像していたからだ。
というのも、サンデーレーシングも社台レースホースも今の日本競馬を支える一大クラブ法人馬主だから。クラブ法人とは、自身の牧場で生産した馬やほかの牧場や競り市で買い付けた馬を、出資する会員を募って走らせる団体のこと。サンデーレーシングの母体はノーザンファームで、社台レースホースのそれは社台ファームだ。
サンデーレーシングや社台レースホース所属の名馬は数知れない。前者は、3冠馬オルフェーヴル(第8話でも同馬が圧勝した2013年の有馬記念のゴールシーンが映った)や先日永眠した3冠牝馬ジェンティルドンナやなど枚挙にいとまがない。今年GⅠを制したクロワデュノール(日本ダービー)、ミュージアムマイル(皐月賞)、レガレイラ(エリザベス女王杯)もサンデーレーシングの所属馬だ。後者は、国内でただ一頭ディープインパクトに土をつけたハーツクライや、日本ダービーを制したダイナガリバー、ネオユニヴァースなど、これまた枚挙にいとまがない。今年GⅠを制したジャンタルマンタル(安田記念、マイルチャンピオンシップ)、マスカレードボール(天皇賞・秋、このレース映像もドラマで挿入された)も社台レースホースの所有馬だ。

『ザ・ロイヤルファミリー』第8話の1シーン©TBSスパークル/TBS
椎名展之の勝負服をまとった佐木隆二郎によって圧勝した馬の名前は「とても完璧」という意味のソーパーフェクト。第8話のタイトルバックに登場する馬のゼッケンに入っていた名前もそれだった。
この馬名で思い出すのは、10戦10勝で1951年のクラシック2冠(皐月賞、日本ダービー)を制したものの、ダービー制覇から17日後に破傷風で急死したトキノミノルだ。なぜならこの馬、パーフエクトという馬名でデビューしているから。JRAの機関紙「優駿」の2011年6月号に掲載された「偉大なる顕彰馬の奇跡」にこうある。
<3歳(旧年齢)夏の函館でデビューしたパーフエクトが2着に8馬身差をつけて優勝すると、それを知らされた永田は、ダービー制覇の夢が実るときがきた、という意味を込めてトキノミノルと改称する。「トキノ」は永田が敬愛していた菊池寛が使っていた冠名で、2年前に他界した菊池の遺志を引き継ぐという思いも込められていた。>

『ザ・ロイヤルファミリー』第8話の1シーン©TBSスパークル/TBS
文中にある永田とはトキノミノルの馬主で、大映の社長だった永田雅一。永田はトキノミノルを題材とした映画「幻の馬」を製作し、55年に公開。東京競馬場のパドック脇には、三井高義が手掛けたトキノミノルのブロンズ像がある。また、69年から共同通信杯に「トキノミノル記念」の副題がつけられている。
ソーパーフェクトは、原作ではロイヤルファミリーと同じロイヤルホープ産駒。ドラマでライムカット産駒に変更された同馬が、ロイヤルファミリーの強敵になって立ちはだかるのだろう。ソーパーフェクトはトキノミノルのように快進撃を続けるのか? 翔平が落馬したり「引退」の言葉が出てきたりと風雲急を告げる次回の予告編と相まって今後の展開がすごく気になる。
話は変わるが、中条耕一の回想シーンで母とテレビで見た小倉競馬場のレースは、メイショウカイドウが勝った2005年の小倉大賞典のようだ。そうであれば、今年急逝した松本好雄オーナーへのリスペクトを感じる。
ロイヤルファミリーが3勝目を挙げたレースはジェイパームスが勝った24年4月21日の石和特別(東京芝1800メートル)で、ソーパーフェクトが圧勝したレースはアスコルティアーモが勝った23年1月28日の3歳未勝利(東京芝1800メートル)だと思われる。(鈴木学)